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チャットボットはアンケートフォームよりも効果的なのか

こんにちは、日々会話AIの研究をしているmaKunugiです。

先日、こんな記事をnoteに投稿しました。

ユーザー調査をチャットボット(AI)で実施したら、アンケートやユーザーインタビューといった既存手法の課題を解決できるのでは?

ユーザー調査をチャットボット(AI)で実施すると、定性調査・定量調査の良いとこ取りをした調査が行えるのではないか?

というようなことをツラツラと書いています。そして、実際にユーザー調査に使えるチャットボットを作成できるサービスを実装し、効果を確認していました。

実際のところ、どうなのか・・・?

そんな記事を書いたものの、まだまだ昨今行われているユーザー調査にチャットボットが利用されているケースは少ないです。本当にユーザー調査へのチャットボット利用が有効なら、もっと採用されていても良さそうに思います。そんな疑問から本記事では、ユーザー調査にチャットボットを使うと本当に効果的なのか、既存研究をもとに考察していこうと思います。

Webアンケート vs チャットボット

まず紹介したいのがこちらの研究論文です。

2019年CHIで発表された研究論文です。Webアンケート(アンケートフォーム)とチャットボットで行った調査の結果を比較しています。

Webアンケートの問題点

この調査におけるissueは、Webアンケートの回答の品質に関する問題です。
Webアンケートは非常に効率的なサーベイ方法ですが、回答者がきちんと回答しないことにより、正確なデータが得られない問題があります。その例が、下記のイメージのような適当にすべての項目にAgreeをつけてしまうような回答者です。この回答結果の品質の課題を解決するために、チャットボットが有効かどうかを、この論文は調査しています。

https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3290605.3300316 より

カジュアルなチャットボットによる問題解決

この研究論文では、
・従来のWebアンケート (フォーマル)
・従来のWebアンケート (カジュアル)
・チャットボット(フォーマル)
・チャットボット(カジュアル)
この4つの方法ごとに調査を行っています。

フォーマルとカジュアルは、文言のフランクさです。フォーマルはカッチリとした形式的な表現で、カジュアルは砕けたフランクな表現です。

https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3290605.3300316 より

結果は、
カジュアルな表現のチャットボットは、高品質な回答が集まり、尚且つ適当な回答が減った
でした。

https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3290605.3300316 より
https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3290605.3300316 より

興味深いのは、「カジュアルな」チャットボットが効果的であった点です。既存のWebアンケートをただチャットボットに置き換えただけでは大した効果がないことを示しています。また、既存のWebアンケートをカジュアルな表現にしても効果が見られないことも興味深いです。チャットボットが行うカジュアルな会話によってこそ、効果的なユーザー調査ができるということのようです。

この論文は定性的に得られたこととして下記の3つを挙げています。

- Not a task but an Interaction
- Playful Interaction creates Engagement
- Casual tone Heightens intimacy

https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3290605.3300316

アンケートという「タスク」ではなく、回答者がチャットボットと楽しく「対話」できるような体験を作ることで、効果的なユーザー調査が行えるということでしょう。

ヒューマニゼーションの適用

カジュアルなチャットボットがユーザー調査に有効なことが、前述した論文で示されていました。しかし、実際にどういったチャットボットを作っていけば、調査において効果的な会話ができるのでしょうか。

そのヒントになりそうな調査がありました。

ヒューマニゼーションを適用すると、調査用のチャットボットが効果的な回答を得られるようになったという調査です。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0747563221003575 より

ヒューマニゼーション適用のポイント

ヒューマニゼーションと言うと難しいですが、要はチャットボットを人間っぽくすることです。調査用のチャットボットをどう人間っぽくすると有効か、下記のポイントが挙げられています。

  • use of self-introduction

  • addressing respondents by their name

  • using adaptive response speed

  • echoing respondent's answers

単に形式的に質問を行うだけでなく、人間っぽさを出すため、
・自己紹介をさせる
・回答者の名前を呼ぶようにする
・人間らしい応答速度にする
・回答者の応答に同調する
といった体験を仕込めると良いということです。ぜひチャットボットで調査を行う際は取り入れたいポイントです。

こういった観点を取り入れチャットボットを作ることで、効果的な調査が行えるようです。

まとめ

2つのみの紹介でしたが、やはりチャットボットの調査は設計次第で効果的なものになりそうです。チャットボットによるユーザー調査は、日本ではあまり見かけません。しかし、ポテンシャルは十分ありそうなため、今後利用が増えていくことは期待ができそうです。

先日、個人開発して公開したユーザ調査用のチャットボット作成サービスは、上述したようなヒューマニゼーションの適用もできるようになっています。本記事でチャットボットによるユーザー調査に興味をお持ちいただけましたら、ぜひこちらのサービスをお試しいただけると幸いです。


また、「カジュアルな会話」や「ヒューマニゼーションの適用」がポイントなのは改めて興味深い点でした。チャットボット構築において重要なポイントであることはもちろんですが、他のインターフェースでも応用ができそうだと感じました。

例えば、デジタルヒューマンのようなAIアバターを活用すると、さらに効果的な調査が行える可能性がありそうです。デジタルヒューマンはまさにヒューマニゼーションの適用の最たる例であり、それによってどんな効果が生まれるのかとても興味深いです。

私が開発しているサービスも「デジタルヒューマン」と連携してユーザー調査が行えるような仕組みを備えています。

※ 上記のデジタルヒューマンはデジタルヒューマン株式会社さんが提供するサービスです。 ( https://www.digitalhumans.jp/ )

こういった、チャットボットやAIによるインタラクティブな対話によって行うユーザー調査の可能性を、引き続き追っていきたいと思います。

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リファレンス

キム・スミン、イ・ジュンファン、ガーゲン・グォン。2019. チャットボットと Web 調査のデータの比較: プラットフォームと会話スタイルが調査回答の質に及ぼす影響。2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI '19) の議事録。Association for Computing Machinery、ニューヨーク、ニューヨーク、米国、論文 86、1–12。https://doi.org/10.1145/3290605.3300316

Jungwook Rhim, Minji Kwak, Yeaeun Gong, Gahgene Gweon,
Application of humanization to survey chatbots: Change in chatbot perception, interaction experience, and survey data quality,
Computers in Human Behavior,
Volume 126,
2022,
107034,
ISSN 0747-5632,
https://doi.org/10.1016/j.chb.2021.107034.


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