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U-NEXTで鑑賞、ヨーロッパ企画 『来てけつかるべき新世界』〜ブレードランナー meets 吉本新喜劇

いやぁ、オモロイ!
なんやこれは、オモロすぎるで!

関西出身としては堪らない。
ヨーロッパ企画の2016年初演の舞台『来てけつかるべき新世界』がU-NEXTで配信していたので鑑賞した。

物語は大阪の下町新世界の一角。
新世界といえば、通天閣と串かつと天王寺動物園。
じゃりン子チエの舞台と言ったら分かる人はいるだろうか?
まぁとにかくこってこての大阪や。
今でこそ観光客向けに整備されているけれど、昔はちょっと怖い町。
特に大阪北部の守口市出身の僕にとっては敷居の高い異国。
遊びに行くのもなんばまで、天王寺動物園周辺は危ないから近寄ったらあかんで、そんな感じ。
(北大阪と南大阪は文化圏が分断されていたかも笑)

そんな新世界、最先端テクノロジーからは取り残された町の一角が、
今では商用ドローンと野良ドローンが飛び交い、あらゆる分野にロボットが活躍し、警備ロボットは町を練り歩き、
将棋は人間ではなくAIが指すもので、商店のおっちゃんもVRゴーグルを装着して、しまいには(=標準語:挙げ句には)精神(心)をクラウドにアップロードして保存できる、そんなぶっ飛んだサイバースペースの世界観。

どんなにテクノロジーが発達しても、人の営みは変わらない。
恋愛、金儲け、別離、挫折、親子の葛藤、商売の失敗、引きこもり
そうした人情噺にドローン、ロボット、AI、VRなどの最新技術を交えた5幕構成で見せてくれる。

タイトルの『来てけつかるべき新世界』、
「新世界」は町としての新世界とテクノロジーで生活が一新するNew Worldの意味をかけているのだろう。
「来てけつかるべき」の「けつかる」は大阪の方言で肯定的な良い意味では用いられない。
「何してけつかるねん、おんどりゃ」みたいな言い方で、相手にされた行為に対して否定的な感情を表している。
「〜してやがる」みたいな感じだろうか。
なので「来てけつかるべき新世界」には、
「新しい生活様式の時代が何やら勝手にやて来ているけど、それはもう避けられない事実だし、受け入れていくしか仕方ない」
そんなニュアンスがある。

登場人物たちは、次々と流行し、生活に入り込んでくる最新技術に振り回され、最初は抵抗する者もいるが、
「案外、ええところもあるやん」(意外に便利なところもあるじゃないか)
と受け入れていく。
かと思うと、今の苦しい生活を忘れるために最新デバイスにどっぷりとのめり込んでしまう者もいる。
そんな悲喜こもごもを、軽妙な関西弁の会話劇で演じてくれる役者の皆さんも素晴らしい。

ヨーロッパ企画といえば、現在上映中で話題の映画『リバー、流れないでよ』、そして2019年公開の『ドロステのはてで僕ら』。
いずれも2分間がキーワードのタイムループもの(ドロステは2分未来が映されるテレビ)だけれど、僕は『ドロステ〜』を配信で見たのが最初。
なんだか小劇場演劇っぽいワンシチュエーションコメディだけど、めちゃくちゃ脚本が凝っていて面白いな、と思っていたが、
後に、実際彼らはヨーロッパ企画という劇団がベースになっていて、しかも京都がメインだというから驚いた。
関西人なのか!
すっかり下北沢あたりの少劇団かと勝手に想像していたから。
映画化されて話題になった『サマータイムマシン・ブルース』、続編の『〜ワンスモア』なんかを見ても、全然関西感がなかったのだから。
(コテコテの関西人役が1人いるが)

ところがこの『来てけつかるべき新世界』では、まさに関西ベースの劇団面目躍如というべきか、京都の上品な京ことばではなく、オールコッテコテの関西弁の舞台になった。
遠目に見える通天閣、商店が向かい合うところで繰り広げられる舞台設定、
終始繰り広げられるジョークの応酬とズッコケといい、鑑賞中も
「これは松竹新喜劇か吉本新喜劇でも見ているのではないか?」
と思うこともしばしば。
少年期に関西で過ごした者にとっては、人格形成に影響を与えるほどすりこまれたこの間合い。
あかん、オモロすぎる。
関西圏以外の人にとってはどうなのだろう?と知りたいところだけど。

「ブレードランナー meets 吉本新喜劇」のこの舞台はもう忘れられない1本になりました。
舞台で再演があるのであれば、ぜひ観に行きたい作品でした。

<了>


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