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若い頃、こんな街に住んでみたかったな〜映画「街の上で」

こんにちは、makoto です。

下北沢を舞台にした今泉力哉監督の映画「街の上で」を観ました。

いかにも東京の、だけど銀座、新宿、渋谷、池袋などの繁華街ではなく、生活も隣接しているような周縁の街で、何かになりたくてもがきながら暮らしている若者達の話。
それは大阪でも同じような感じはあるのかもしれないけれど、この映画の舞台になっている下北沢という街、映画、演劇、音楽などのサブカルチャーが根付いている街ならではの空気感はあるのかもしれない。

首元の伸びたTシャツを来ている、ぱっと見には冴えないはずの若葉竜也さん演じる主人公の青。
彼は何をするわけでもなく、古着屋で働きながら日々をやり過ごしている。いわゆるモラトリアムだろうか。
地方都市で同じような境遇にあったら、割と悲惨な映像になるのかもしれないけれど、これが下北沢だとそれが絵になっている。

付き合っていた彼女からは別れを切り出された青は自主制作映画に出演してくれと若い女性監督が頼まれたところから話が始まり、
そんな青と彼を取り巻く4人の女性が中心の話なのだけど、まぁこの青の周りには素敵な女性が集まってくる。
結局のところ、モテてるんじゃないか?としか言いようがない。
確かにあえて冴えない感じのルックにはしているのだけど、よく見たらふとした表情とか、やっぱりイケメンの要素がにじみ出ている。
そして、出てくる女性が皆それぞれに個性があって魅力的だからうらやましい。
そんな設定でも、ありきたりな歯の浮くような恋愛ドラマにならないのがこの作品のよいところで、徹底してオフビートに、時にコミカルに描かれる。
何故なら、この映画で描きたかったのはそんな若者たちの恋愛沙汰なんかではなく、下北沢という街でしか存在しえないような若者たちの日常を一歩引いて描いているからじゃないだろうか。
そんな突き放し方が心地よくて、気がついたら僕らも、彼らのお隣さんにでもなったような感覚になっている。

途中、カフェのシーンで下北沢のガイドブックを持って観光スポット巡りに来た若い女性が出てくるのだけど、そんなメタ視点も、やはり下北沢という土地を日本でもここにしかないであろう特殊な場所として意識しているんだろうなと感じた。

***

僕は大阪の大学を卒業して、就職が決まって東京に出てきた。
卒業前の秋に住むところを探すために上京してきて、最初に行ったのが中央線中野駅前の不動産屋。
アテがあった訳ではなく、電車路線図を見て、中心からこれくらい離れていたら安いのではないか?と大阪の感覚で思っただけの当てずっぽう。
家賃と間取りの条件を伝えたところ、都内にはそんな物件はないから、と冷たくあしらわれた。
その条件であればこの沿線だと、と不動産屋の店員が路線図をずっと指で辿って「ここ」とポイントしたのが八王子。
しかも、駅前ではなくさらにバスだという。
大阪の感覚からするととんでもない距離で、須磨や明石から梅田まで通うようなそんな印象があった。
それ以来、東京は恐ろしく物価が高いところだ、都内になんか普通の庶民は住めないのだ、思い込んでしまった。
そして、最初に借りたアパートが地下鉄南北線沿線の千葉の行徳。
それから川崎へ移ってJR南武線の久地、さらに西へ移動して北鎌倉、
と東京都内を避けて周辺の土地ばかり選んで住んでいた。
最初に訪れた中野の不動産屋の洗礼が強烈過ぎてトラウマになったのが不幸だったのか。
今となってはいくつかの条件さえ諦めれば、いくらでも都心でも手頃なアパートは探せばあるというのは分かるのだけど。

そんなことで、住居が都心から離れた町だし、仕事も忙しいし、で20代から30代前半に下北沢などの中央線沿線にはほとんど行く機会はなかった。
音楽も演劇も好きなのに。どちらかというとサブカル路線なのに。
とても残念だ。
なので、この映画の中の彼ら彼女らを見ていて一番思ったのは、
あぁ僕も若い頃にこんな街で1年でもいいから暮らしたかったな、ということだ。
もちろんそんなことがあったとしても、青のように色んな女性に囲まれるなんてことはあり得ないのだけれど。
あり得ないけど、あり得たかもしれないそんな過去を憧れる、そんな映画だった。

ところで、映画を観終わってから公式サイトを見て知ったのだけれど、共同脚本に名を連ねているのが大橋裕之さんだったんですね。
なるほど、あのオフビート感はまさに大橋さんのコミック作品と同じ感覚なんだと納得しました。
青役の若葉竜也さんは、仲野大賀さん主演の「生きちゃった」ではじめて知ったのですが、抑えた自然な演技とも言えない演技が味がありますね。
また、男性陣としてはもう1人、友情出演で少しだけ出てくる成田凌さんがいつも通り素晴らしい。「愛がなんだ」も見なくちゃ。
女性陣は皆さんステキですが、特に穂志もえかさんのゆるふわ感のファンになってしまいました。
中田青渚さんの関西弁の当たり強め女子も、同じ関西人として好感度よしでした!
そして、最後に流れるラッキーオールドサンの「街の人」で一気にキュンとなります。
なんとこの映画のムードそのままの曲なんだ。
ラッキーオールドサン、大ファンになりました。

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今日は先日観た映画 今泉力哉監督の「街の上で」について感想をnoteしてみました。

それでは!



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