『社宅』

「ねぇミアちゃんちょっとさ」

パパからの頼みごとはいつも

だいたいややこしいし

めんどくさいんだよね

「クリスマスイブの日のシフトなんだけど」

出た

「ユリさんがどうしても…なんだと」

ユリさん…ねぇ…

同じ社宅に住む部長の娘さん

「イブの日、彼氏と約束ができたみたいで」

同じバイト先に勤めるワタシに

シフト代わってほしいって

「構わないよな？」

ワタシは別にいまどき

クリスマスがどうとかないから

構わないんだけど

だからって上司と部下の関係である

父親を通じて言ってくるなんてね

「ユリさん、イケてる彼氏とイタ飯行くって」

イタ飯って何？

痛そうなんだけど

「それから彼氏のＺでそのままスキーに…」

なんだかよくわからないけど

ユリさんはワタシよりだいぶ上

バブル？なんとかだって

そうだよね

パパの上司

部長さんの娘さんなんだから

「あぁZってミア、きみら世代のことじゃなくて」

ZはZ世代じゃなくてクルマだとか

あらためて説明されたけど

よくわからないよパパ

そんなことよりさぁ

とにかくもう早く

この社宅出ない？

パパ早く出世してよね

じゃないとワタシが家出するから

てかさ

なんで部長って部長のくせに社宅なのよ！

ワタシそこにムカついてきた！

それから娘もさ！

フリーターやってんじゃないよ！

腹立つぅー！

あーもう

他人事だけど情けない

チキン食べて寝よ