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『指先の乾燥が気になることくらいで』


もう20年以上も前のことだから

話してもいいかな

学生時代のアルバイトの話


楽で給料のいいやつっていう

一点張りで探してた


「資料整理」


少しくらい脳みそを使うのは苦ではないし

汗をかくよりはいいかと思って

まずは応募してみた


平たく言えば

シュレッダー係だった


飄々とした印象(らしい)の俺は

すぐに採用された


都会の雑居ビルの小さなオフィス

毎日

毎日

どこからか

だれからか

大量の書類の束が届けられた


段ボールに詰められたものや

ビニールひもでくくってあるだけのもの

それとたまに

ジュラルミンケースに入れられたものも


契約のときに念押しをされたのは

資料の中身を見ないこと

また仮に見えてしまっても

口外はおろか

すぐに忘れること


とくに興味もなかったので

誓約書にサインした


単調な仕事だった

音楽を聴きながらやっても咎められない


唯一のデメリットは

当時ギターにハマっていたから

指先の乾燥が気になることくらいで


しかし


今思えば 

とんでもないんだよな


あの事件とか


あのあたりで起きた戦争とか


あぁ

自然災害まであった


そんなのも全部

シュレッダーに

裁断されていったんだな



いま勤めてる会社

副業オッケーなんだよね

募集してないかな


まぁ採用されないだろうけど

















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