『これは誰にも言っていない秘密なんだけど』
これは誰にも言っていない秘密なんだけど
とある宇宙人と僕は
交流を始めたんだ
オンラインゲームをやってたら
僕に絡んできたのがきっかけ
他のユーザには内緒だけど
宇宙人なんだって
僕だけにチャットを送ってくれた
もちろん僕がわかる言葉で
どうやらこの僕が住む銀河系の
ずっとずっと先
光の速さで換算したら
120万年かかる場所に
彼は住んでいて
でも彼の星の文明は
とても発達しているから
地球までは3日ほどで
来られるらしい
だったらリアルで会おうよと
そういうことになった
約束の日
真夜中12時きっかりに
近所の公園の広場で
僕は彼を待った
満月と反対の方向から
オレンジ色の光が
ぴゅうっと近づいて
ふんわりと僕の真横へ
現れたのは
姿かたちも僕らと大差ない
”地球人風の男子”だった
ふつうに街を歩いていても
まったく違和感はないと思う
3日間とはいえ
やはり宇宙船での旅は疲れたようで
さっそく家へ招く
両親が旅行に出かけている日を
指定してよかった
地球の風呂は喜んでくれたし
コンビニ飯だけど
夕食も美味しく食べてくれた
あぁそうだ忘れてたと
カバンをがさごそとあさる彼
どうやらお土産のようだ
気を遣わなくていいのにと
僕はいいつつ
どんなお土産か
ちょっと期待した
目を輝かせながら
包みを解いてみる
水茄子の…浅漬け…
うん…
この時季にぴったりだね
彼の星にも
季節があって
夏が来て
美味しい野菜が
獲れるんだなって
感慨に耽ったよ
って
あれ?
消費期限
昨日で切れてない?
そんなことは言えず
もう夕食は済んでしまったから
明日いただくよということで
ありがたく受け取っておいた
そして誰にもバレないように
そうっとゴミ箱へ
なんだか申し訳ないな