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spinel3
『三本の足で』
Olsen氏は懸命に働いた
都会の片隅で雑貨商を営んでいる
ときに従業員を罵倒し
顧客をも激怒させたことがあった
しかし事業は順調に進み
Olsen氏はたった一代で
世界でも指折りの
サプライチェーンの経営者に
名を連ねるまでになった
そんなOlsen氏も
病には抗えなかった
若くして
床に伏した
短い療養が済んだら
すぐにオフィスへ戻ると
誰もがそう思った
ところがOlsen氏は
突如として姿を消した
カリスマ経営者を失った会社は
あれよという間に斜陽を迎え
--
いよいよ腰が曲がって
上半身を支えるものがなければ
立っていることも
おぼつかないようになった
都合よく
あばら家の前を流れる川を
板切れが下ってきた
Olsen氏はこれからの人生を
三本の足で立つことに決めた
よく出来たコンテナの
端切れのような材木が
終の棲家での
唯一のパートナー
最後の一仕事とばかりに
川べりから手を伸ばし
なんとか板切れを掴んで
Olsen氏はその板材に書かれた文字に
自身の目を疑った
Olsen's Multi Market Inc.
”ウチのコンテナ”じゃないか
Olsen氏はこれからの人生を
三本の足で立つことに決めた
よく出来たコンテナの
端切れのような材木が
終の棲家での
唯一のパートナー