『「ったくどいつもこいつも使えねえし身勝手な主張ばっかり…」』
「未達未達うるせえんだよいいからさっさと稼いで来い無能!」
怒号がオフィスに響き渡る
営業部長による鉄槌はお馴染みの光景
怒号を浴びせられた社員はすごすごと席に戻り
アテもなく終わりも見えない営業の旅へ
「はぁ?産休なんて1か月で充分だろこれだからオンナは…」
大きなおなかを抱えた女性社員は涙を浮かべ
気分が滅入ったせいなのか手洗いへ向かった
「まだゴルフ始めてねえのか、一生底辺のさばってる覚悟だな!」
「中身なんて確認しなくていいから早く処理しろよその領収書!」
「飲み行かないって何様だよ、黙ってついてきて酌してりゃいいんだ!」
「ったくどいつもこいつも使えねえし身勝手な主張ばっかり…」
特定の部下がターゲットになるのではなく
およそ等しくすべてのメンバーに対して
罵声を浴びせ時代錯誤な価値観の強要をする
ときに耐えかねて感情を爆発させる社員もいたが
おまえごときすぐに消せるんだぞといった脅し文句に
皆おとなしく引き下がった
実際には営業成績の芳しくないものはおらず
勤務態度も良好であった
ところが営業部長の横暴な態度により
オフィスの空気はまるで墓場のような雰囲気
感情をなくして亡霊のようにさまようものも少なくなかった
ただ不思議なのは
皆休むことなく従順に職務をこなしていること
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「さて、例のテスト導入の様子はどうですか?人事部長
「はい、常務!おかげさまで効果はてきめんです
「なるほど、具体的にはどのように?
「なにせ見た目だけでなく能力面が優れておりまして
「通常の業務遂行は問題ないんだね
「はい、さらには感情のコントロールも完璧であります
「営業部長もストレスなく働けていると
「その通りでございます
「よし、まずは順調といったところだ、一安心
「それが常務、ひとつ…
「ん、なにかまずいことが?予算か?
「いえそうでないんです
「ではなんだ、メンテナンスの問題か?
「その…有能な社畜ロボのせいでクビになった社員たちが訴訟を…