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『バチェラーとバチェラー』


俺は毒を飲まされて

もうそんなに長くはない

っていうかあと数十秒

もって数分でしぬはず


かんぜんに油断していた


こんやはとっても楽しい

元・奥様会のつどいだった


元・奥様ていうのは

俺の元妻たち

十二人

いや

十三人だったかな


まあそいつらと集まって

飲めや歌えやする会


俺はいま独身だし

なんにもやましいことはない


なんせみんな

別れるときには

気持ちよく


誰もが等しく皆

性格の不一致ということで

それなりの手切れ金を渡して

別離したもんだから

恨まれる筋合いなんて

いっさいないはず


だったんだけど


現に俺はいま

貸し切りのレストラン


そのフロアの真ん中で

泡を吹いて

倒れている


意識が遠のいていく


俺のどこが悪かったのか

教えてほしい


浮気はいちどもしたことがない

つまり前とは縁を切って

次にいっているということ


それから

子供はひとりもつくっていないし

借金などもない


なんならさっきも言ったように

それなりもカネも渡してる


なにか俺がみんなに

迷惑をかけただろうか


あぁいよいよほんとうに

おわりみたいだ


十二人

いや

十三人の

なんとも醜い笑い顔が

俺の顔を覗き込んでいる




エントランスのほうから

鐘の音がする


ドアを開けて

誰かが入ってきたようだ


もうすっかり俺の意識は

お空のほうへ向かって

よくわからないけど


なんだか若くて洒脱な男が

ひとり現れた


これからここにいる

十二人

いや

十三人は

この男を

取り合うのだろうか


わるいことは言わない


見苦しいから

やめておけよ











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