まつむらまきお

イラストレーター、マンガ家、ライター、成安造形大学教授。

まつむらまきお

イラストレーター、マンガ家、ライター、成安造形大学教授。

マガジン

  • ユーレカの日々

    日々の生活の中での、ちょっとした発見を綴ります。日刊デジタルクリエーターズというメルマガに、2011年から連載してきたもので、2019年7月からnotoに場を変えました。

最近の記事

ユーレカの日々[51] 気がつけば人工知能

最近、iPhoneのsiriをよく使うようになった。登場当初は「使えないなぁ」と 思っていたのだが、コツがわかってくるとかなり使える子だ。 一番使うのは、アラームの解除。 朝、起きるのがとても苦手なので、iPhoneのアラームを時間差で4~5個セットする。ところが起きてから、これを解除するのがとても面倒なのだ。 時計アプリを起動し、アラームタブをタップ、スクロールしてONになっている設定を全部オフにしなくてはならない。 あるとき、ふと気がついて「すべてのアラームを解除

    • ユーレカの日々[08]マンガが生き残る唯一の方法/まつむらまきお

      iBooks Authorが発表された。Apple最新の電子Bookオーサリング環境だ。残念ながらうちのMacのOSは「古いFlashなどを起動させる必要があるかもしれない」ため、未だ古いOSのまま。これではiBooks Authorをインストールできない。悔しいので、いろいろ記事を読んでいると、まだいくつか問題があるようだ。 一番残念なのは、文字組みが横書きのみで、縦書きができないという点。どうやら右綴じの本も作れない。 縦書きの組版はEPUB 3として標準化されている

      • ユーレカの日々[07]不自由さの中から生まれる進化/まつむらまきお

        初出:日刊デジタルクリエイターズ 2011年12月14日 メビウスというフランスのマンガ家がいる。日本の大友克洋や寺田克也に影響を与えた作家であり、エイリアンやTRONといった80年代SF映画のコンセプトデザインを手がけ、今日のSFファンタジーのビジュアルの基礎を築いた人である。 フランスのマンガは大人向きで、大判フルカラー。キャラクターの感情表現に重きを置く日本のマンガと違い、絵と物語をゆっくりと楽しむスタイル。僕が大学で教えているのはイラストレーションを学ぶ学生だが、

        • ユーレカの日々[61]2017・レプリカントとの邂逅

          ぼくの愛車である、折りたたみ自転車「モバイキー」が突然、チェーン飛びを起こすようになった。こぎだすと「パキッ、パキッ」と音をたてて、ペダルが一瞬空回りを起こす。 よく見てみると、チェーンも伸び伸びになっている。以前も何回かこの現象があったのだが、実害もなかったのであまり気にしていなかった。ところが今回はかなり深刻で、まともに進まない。 自転車屋でチェーン調整してもらったが、改善しない。スプロケット(ギア)が摩耗してしまっているのだ。 自転車のスプロケットは、規格化された部品

        ユーレカの日々[51] 気がつけば人工知能

        マガジン

        • ユーレカの日々
          23本

        記事

          ユーレカの日々[56]タイプライター・パラノイア/まつむらまきお

          初出:2016年10月19日発行 日刊デジタルクリエーターズ ひさしぶりにレンタルビデオ屋を覗くと、一本のビデオが目を惹いた。「タイピスト!」というフランス映画。 タイピストという言葉を見るのはずいぶんひさしぶりだ。ぼくが子どもの頃、テレビで外国映画やドラマを見ると、女性の事務員は必ずタイプライターを叩いていたものだ。日本映画やドラマではみかけないその光景は、ずいぶんとカッコイイものに見えた。 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/

          ユーレカの日々[56]タイプライター・パラノイア/まつむらまきお

          ユーレカの日々[33]約束の地/まつむらまきお

          初出:日刊デジタルクリエイターズ 2014年06月04日 最近テレビを見なくなっているが、たまにバラエティなどを見ると、「日本はすごい」「日本人は素晴らしい」というような番組ばかりが鼻について、すぐに消してしまう。 こういった風潮は、福島の事故以降、「絆」という言葉がやたら流行り始めた頃からだろうか。それとも、政府がやたら右寄りになっているため、こちらがセンシティブになっているからだろうか。こういった「日本人だから」という帰属意識を強調するような物言いは、どうにもこうにも

          ユーレカの日々[33]約束の地/まつむらまきお

          ユーレカの日々[62]リビングオーディオ・パブリックミュージック/まつむらまきお

          初出:日刊デジタルクリエイターズ 2017年09月06日 うちのリビングルームには、ほこりをかぶった、小さなスピーカーがある。10年ほど前に買ったもので、iPodをセットして鳴らすことができる、FMラジオ内蔵のコンパクトオーディオだ。 以前はよく使っていたのだが、iPhoneのコネクタが現在のLightningに変更された5年前あたりから、徐々に出番がなくなっていた。 自分の仕事部屋では、Macで音楽を聴くし、家族は家族でそれぞれ、iPhoneなりMacなりで音楽を聴い

          ユーレカの日々[62]リビングオーディオ・パブリックミュージック/まつむらまきお

          ユーレカの日々[39]ツギハギの世界/まつむらまきお

          初出:日刊デジタルクリエイターズ 2015年01月21日  学生のイラストで、筋交いのある壁の真ん中に窓が空いている絵があった。これは間違えている!と思った瞬間、いや、今の日本にはありふれた風景なんだと思い出した。 昨年の秋くらいだったか、自転車でこけた。 朝、駅に向かう途中、車道から歩道に乗り上げる時にハンドルをとられたのだ。僕の乗っているモバイキーは車輪が小さいので、段差にはものすごく弱い。普段から注意はしているのだが、やってしまった。 歩道にふっとばされた

          ユーレカの日々[39]ツギハギの世界/まつむらまきお

          ユーレカの日々[21]愛しのソニー/まつむらまきお

          初出:日刊デジタルクリエイターズ 2013年04月03日 ソニーが社名を「ソニーグループ」に変更するという報道があった(2020年5月)。ソニーはもう、家電メーカーではない、なにか、ということなのか。 1969年か70年、大阪で万国博覧会が開かれた頃の話だ。父が海外に視察旅行に行くことになり、その取材のために一台のテープレコーダーを買ってきた。 当時ぼくは小学校3年生くらい。カセットテープレコーダーというモノは知っていたが、その真っ黒でコンパクトな製品は、身の回りにあるど

          ユーレカの日々[21]愛しのソニー/まつむらまきお

          ユーレカの日々[25]アバターの時代/まつむら まきお

          初出:日刊デジタルクリエイターズ 2013年09月04日  先日、心斎橋に出かけた時のことだ。用を済ませ地下の駐車場からクルマを出す時、不思議な事が起きた。ゲート前で一時停止しようとしたら、勝手に遮断機が開いたのだ。 クルマを利用しない人のために説明すると、無人駐車場の出口には精算機と遮断機があり、チケットを入れて精算すると遮断機が開く仕組みだ。ところが今回は、チケットを入れるどころか、遮断機の前で一時停止する前に、ゲートが勝手に開いたのだ。 そういえば以前、他の大型商

          ユーレカの日々[25]アバターの時代/まつむら まきお

          ユーレカの日々[55]怪獣の夏、日本の夏

          初出:日刊デジタルクリエイターズ 2016年09月07日 コロナウィルスの状況を見ていて、災害映画や怪獣映画を思い起こす人も多い。コロナと戦う、と政治家たちは言うが、ぼくたちは、いったい、何と戦っているんだろう? この夏(2016年)は怪獣の夏だった。映画『シン・ゴジラ』と、『ポケモンGO』。街中ではポケモンを探して人々がウロウロし、劇場ではゴジラを見て人々がオロオロする。ネットでは、いい大人たちが、存在しない獣について、意見を闘わせたり、情報を交換している。 怪獣。なん

          ユーレカの日々[55]怪獣の夏、日本の夏

          ユーレカの日々[24]複製力の不思議と不気味

          初出:日刊デジタルクリエイターズ 2013年07月24日 先日、ある印刷通販会社の人と話をしていて、3Dプリントの話になった。その会社でも、3Dプリントのサービスを始めたのだという。素材も樹脂や金属、陶器など色々選べる。 話題の3Dプリンターだが、一般の人にとっては「なにに使うの?」というシロモノだろう。生活の中で、小ロットの立体物をオリジナルで作らなくてはならない場面、というのはほとんど思いつかないし、なによりデータを作る部分がネックとなる。 その会社でも、まだ手探り

          ユーレカの日々[24]複製力の不思議と不気味

          ユーレカの日々[37]「人形遣い」

          初出:日刊デジタルクリエイターズ 2014年10月29日 今年、ガンダム40周年で、横浜山下ふ頭に、実物大で可動するガンダムが建設される。コロナウィルスのおかげで、おそらく7月の公開予定には間に合わないだろうが... なんでそんな、馬鹿げたプロジェクトをやるのか。数年前に考えたことは正しかったなぁと思う今日このごろである。 大阪市が文楽に対する補助金を打ち切ることに決めたそうだ。橋下市長になってから補助金が減額されてきたが、今後は年間の補助金ではなく、公演など事業毎の申請、

          ユーレカの日々[37]「人形遣い」

          ユーレカの日々[60]絶対に来ない誕生日

          初出:日刊デジタルクリエイターズ 2017年05月10日 2020年の誕生日なので再録(笑)えーと、今は平成何年?? 運転免許証の更新に、妻と二人で試験場まで出かけた。誕生日が一か月違いなので、同時更新ができるのだ。このところふたりともゴールド免許なので、五年ぶりの更新だ。 免許更新は近くの警察署でもできるのだが、大阪府に二か所の試験場だと即日交付で終わるのが魅力。窓口に向かうと長蛇の列。申請して、印紙を買って、視力検査をして、写真を撮って、講習を受ける。五年前よりも、業

          ユーレカの日々[60]絶対に来ない誕生日

          ユーレカの日々[06]不確実な過去

          初出:日刊デジタルクリエイターズ 2011年11月09日 これを書いてから9年。記録というものがこれほど蔑ろにされる国になっていようとは、当時は想像もしなかったよ。 以前、勤務先の大学で、最終学位を提出しなくてはならない、ということがあった。通常は「◯◯大学卒業」といった経歴だけで済むのだが、役所に出す書類に正式な学位名称が必要なのだという。単に学士とか修士とか博士とかなのかと思っていたら、時代や分野によって名称が違うらしく、卒業証書や卒業証明書などで確認すべし、というお達

          ユーレカの日々[06]不確実な過去

          ユーレカの日々[59]絵画とデザインの境界線に佇むモノ/まつむらまきお

          初出:日刊デジタルクリエイターズ 2017年03月01日 ディック・ブルーナが2017年2月16日に亡くなった。享年89歳。言わずと知れた、ミッフィー(昭和世代にはうさこちゃん)の作者である。 今ではミッフィーとして知られている、あのウサギのキャラクターは、1964年(ぼくが3歳の時)に福音館から発刊された「こどもがはじめてであう絵本」シリーズの中の一冊。 このシリーズは、けして「ミッフィー」が中心ではなく、ブルーナが絵本というものをデザインした、絵本のマスターピースで

          ユーレカの日々[59]絵画とデザインの境界線に佇むモノ/まつむらまきお