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視座・視点・視野を図示してITエンジニアの評価制度/組織づくりに役立てる

 自社のEM職、あるいは組織改善コンサルとしてITエンジニアの評価制度の見直しに関わることが増えてきました。ITエンジニアは「スキルだけあれば良い」という会社さんは実在するのですが、経験上は下記の点に注意が必要です。

・企業側:何故正社員を雇用するのか?期待することはなにか?
・従業員側(1/2):この会社に居続ける意味はなにか?
・従業員側(2/2):(額面も大きいし、評価からも解法されて字面からして自由そうな)フリーランスで良いのでは?

 出世に興味がない30代前半以下の世代と話をしていると、「出世をするとタスクと責任が増えて損」に見えている傾向があります。その一方で「自由」を掲げたフリーランスが若手エンジニアにとって魅力的なキャリアパスとして存在しています。フリーランスが増加の一途をたどる今、圧倒的中間管理職不足が見えてきています。

 これらに対し、企業には出世をすることは報酬以外で具体的に何のメリットがあり、どういった能力が得られるのかを明示し、正社員としてチームや組織を率いることに意味付けをし、彼らに残って成長してもらう必要があります。報酬だけだと「条件の良い転職した方が手っ取り早い」もしくは「副業をする方が増え幅が大きい」という思考になるので説得力として弱いです。

 出世にはリーダーシップ、マネージメントなど様々なキーワードがありますが、その抽象的な象徴の一つが視座だと考えています。そして正社員が視座を高めた際には相応の評価によるフィードバックをすることが重要です。長くなりましたが、今回はそんな「視座(・視点・視野)」についてお話します。

 視座について辞書で調べると「物事を見る姿勢や立場」とあります。しかし「視座が低い」「視座を上げる」というのはどういうことなのでしょうか。特にITエンジニアにおいては視座はどう絡んでくるのでしょうか。

視座を図示し、ポジションとリンクさせる 

「視座」で画像検索をすると階段状のものや、塔になぞららえたものが多くヒットします。例えば下記のような灯台モデルは多いようです。

 これらに対し、評価やポジションとリンクさせるために下記のような図を作ってみました。初心者(Beginner)から始まって徐々にできることや見えることが広がっていくイメージです。例えばManagerになった場合も第一線のプレイヤー(Member)として活動する場合は下位層も含めた守備範囲になり、部下に権限移譲した場合はΩ型の守備範囲になります。

視座

 補助を受けながら作業をする初心者(Beginner)から始まり、やがて与えられたタスクをこなし、自走できるようになります(Member)。

 現在、以前紹介した「未経験フリーランス」「微経験フリーランス」のように経験年数0-1年目のフリーランスが量産されています。変な話ですがBeginner・Memberの層についてはフリーランスが当面厚い状況が続くでしょう。問題はそれ以上です。

 チームを持つようになる(Team Leader)と部下(Member, Beginner)を牽引するためにリーダーシップ、マネージメント、教育といった課題が出てきます。

 よくある企業構成では複数のチームを見たり、他職種も交えたチームを管理者(Manager)が居り、マネージメントの課題が部下より濃く出てくる他、事業の方向性や状況を意識しながら部下に下ろしていくといった事柄も重要になってきます。この頃にはエンジニアチームだけの心配ではなく、他部署との連携もより濃密に必要になってきます。

 更にその上位概念(CxO/VP/GM)になってくると企業全体の方針決めや組織づくりの要素が出てきますし、体外的な戦略もより強く求められていきます。

 私が担当する場合ですが、評価への視座の組み方としては下記のようなアプローチを提案しています。

・対象となる企業のミッション・ビジョン・カルチャーの参照
・既存メンバーのバックグラウンドの収集
・各ポジションへ期待する行動・成果の目標・評価への組み込み
・報酬体系の作成

 エンジニア特有のこととして、スキルレベルについては視座とは直接関係しないため別途計算するようにしています。

私が経験した組織運用への視座の応用例

 私が以前、周囲の力を借りながら視座を意識した丸二年のエンジニア組織改善をした例についてお話をします。この企業の場合、評価制度は既にしっかりとしたものが存在していました。しかし読み解くことがやや難解で評価時には六法全書を傍らに置いた法律家のように行動と評価の対応付けが必要でした。

 そこで先の図のようなイメージを一次評価者やリーダーっぽい人に落としていき、なんとなく評価をつけていたところを噛み砕いて行きました。

 次にリーダーアセスメントという仕組みに注目しました。これは口頭試験と小論文により、会社に期待するリーダー像を満たせば晴れてリーダー手当付きの公認のリーダーになれるというものでした。言わば視座の確認と言えます。当時、歴史的背景からエンジニアのリーダーアセスメント突破者は一人も居ませんでした。ここでも意味づけと動機づけをすることにより、1年半程度で10名程のリーダーアセスメント合格者を出すことができました。

 体制を整え、一定以上の視座を持ったとお墨付きを得たリーダーアセスメント合格者を組織に組み込むことにより、エンジニア組織を拡大する上での骨格を創ることができました。結果、2年でエンジニア組織を40名から80名までスケールさせることができ、後半の半年間は退職者0を達成することができました。

まとめ:圧倒的中間管理職不足に備える

 エンジニアを初めて1-3年でフリーランスになるケースが一般的になってきました。私も何人もそういった人たちと何人も対峙してきました。

 企業や人材紹介に関わる人達はフリーランスに進むと何が手に入る可能性があり、正社員を継続すると何が手に入る可能性があるのかということを彼らにしっかりと示さねばなりません。今はフリーランス市場の方が広報活動に長けている状況です。このまま行くと2015年頃までには各企業内だけでなく、IT部門を抱えた全業界的に深刻な中間管理職不足に陥る可能性が高いと考えています。

 最後にエンジニア視点で視座を高めることによるメリットとして、キャリアパス戦略を紹介した記事を紹介し、まとめとさせていただきます。

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