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買って良かった、扇子を持つ愉しみ。


扇子を買った。

暑すぎるから、風をおこすものを持ち歩きたかった。
でも、ハンディーファンは苦手。
ブーンという機械の音も、直線的に当たる風もあまり好きではない。
見た目もそこまで。

…そうだ、扇子をもとうかな。
ふとそう思い立った。

昔から着物が似合いそう、とか時代劇に出られそうとか言われてきた。
流行りの服が似合わないし、一般的な可愛いイメージと遠い外見が好きになれず、ふーん、と聞き流して生きてきた。
でも最近、プロに写真を撮ってもらう機会があり、和風なことは私のアイデンティティかもしれない気がしてきた。 
せっかく持って生まれた個性を活かしたいと自然に思うようになったのである。


とはいえ、日々着物を着るのは流石にハードルが高い。
会社員生活との相性も良くないだろう。
でも扇子なら、いつでも持ち歩ける。
日常に和小物をとけこませるには、扇子は最適だった。

扇子を買おうと決めたはいいものの、どこで買うか本当に悩んだ。
扇子と言っても、高いものから100円ショップで売っているものまでピンキリだし、何かの衣装に使われるような、もはや普段使いではないデザインのものもある。


迷った結果、私はお気に入りの京都の雑貨屋さんで3000円くらいのものを購入した。

かまわぬという手ぬぐいのブランドが出している扇子だ。
まるで手ぬぐいのような、気楽なデザインは普段使いにもってこいだった。
淡い水色に、ピンクとブルーの朝顔のような模様の扇子は、華やかなのにしっとりした落ち着きが感じられる。
普段よく着る紺色のワンピースの差し色にぴったりだった。
骨組みの作りもしっかりしていて、持ち歩くのに安心感がある。

あぁ、なんて良い買い物をしたんだろう、と大満足だった。
扇子を開くたびに、しゃんとした気持ちになる。
そこには、自分の持ち物へのこだわりや日本文化へのリスペクトをひと匙ずつ含まれている。

夏真っ盛りは終わっても、まだまだ残暑の日々は長い。
お気に入りの扇子とともに、どこに出かけていこうか。

《おわり》

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