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効果的なオウンドメディアの企画・運営に必要な7つの視点

こんにちは、MAIです。最近スタートアップメディアが減ってきて、寂しい気持ちとともに、オウンドメディアへの注目の高まりを感じます。オウンドメディアの立ち上げ・運営について相談をいただく機会も増え、このタイミングで自分の経験にもとづいたナレッジをまとめておこうと思い、効果的なオウンドメディアの運営に不可欠な「企画・運営に必要な7つの視点」について書きました。オウンドメディアの立ち上げを検討している方や、悩みながら運営している方の参考になると嬉しいです!


1. メディア運営の経験者のアドバイスを受ける

オウンドメディア立ち上げをアサインされる方は、いろんなバックグラウンドを持っています。とくに、スタートアップだと、これまで企画・編集・コンテンツづくりの経験がない方に「オウンドメディアの立ち上げ・推進をよろしく!」とアサインされるケースも。そんなときは、メディア運営の経験がある方を、外部アドバイザーとしてでもいいので、巻き込むのが良いと思います。というのも、企画・編集・メディア運用で必要な考え方やプランニングは、専門性の有無が、コンテンツのクオリティや効果に大きく影響を与えるからです。

私は、新卒時にリクルートの旅行情報誌の編集部で、メディアプロデューサー(編集者)として働き、その際に、企画立案についてみっちりしごかれました。「やりたいこと」起点に企画書を作成する新人の私に、厳しい先輩や編集長は、ダメ出しをたくさんしてくれて、「背景・現状課題」「目的」「ターゲット」起点で企画を立てる大切さを染み込ませてくれました。とくに、調査結果などを分析し企画立案を行う、圧倒的な「読者・ユーザー視点」を身に付けられたのは、この初職の経験が大きかったと思います。その後、オウンドメディアの立ち上げや、マーケティング、PRと仕事の領域を広げる中でも、「企画力」を強みにできているのは、この原点のお陰です(これまでの経験はこちら)。

20代前半に、泣きながら企画書を何度も書き直し、徹夜をした経験は、今でも活きていると感じますが、同時に、この企画立案の思考法というのは、身につけるのにラーニングが必要と実感します。何ら経験のないまま、独力でメディア立ち上げ・企画立案を行った場合、私が最初に陥った「やりたいこと」起点での企画立案を行なってしまいがちだからです。

自分達が「やりたいこと」は、一旦横に置いておいて、「背景」となる自社の課題と、課題を解決するための「目的」、読み手であるターゲット層が、「何を求めているか」を徹底的に掘り下げることが大切です。これはマーケティング施策全般に言えることです。そのためにも、最初はプロのアドバイザーを入れて、立ち上げを進めた方がスムーズだと感じます。

次のパラグラフ以降では、この「企画」立案のステップと効果検証、オウンドメディアの位置付けについて、深堀りしたいと思います。

2. 背景・現状課題を洗い出し、目的を明確にする

「オウンドメディアを立ち上げたいんだけど」と相談を受けるとき、まず確認するのが、自社の現状と課題感です。これは、企画立案にあたっての「背景・現状課題」と「目的」整理にも繋がります。

<現状・課題のヒアリング項目>
・自社のステージ:企業がどのフェーズなのか(スタートアップの場合、PMFしているか)
・自社の課題:直近の自社の課題は、サービス理解向上なのか、ユーザー獲得なのか、認知・ブランディング向上なのか
・自社のリソース:何人くらいの体制で、マーケティング・PR活動を行なっているのか、いくらくらいの予算を割けるか

なぜなら、オウンドメディア立ち上げ・運営は、リソースがかかり、かつ、短期の獲得よりも、中長期的な視点でのサービス理解向上、認知・ブランディング向上目的の方が相性が良いため、リソースの限られる、アーリーフェーズのスタートアップだと、Web広告など別の獲得系施策を優先させた方がよいケースも多いからです。

私がよく相談を受ける、アーリーフェーズのスタートアップに対しては、最初から、別途「メディア」を立ち上げるのではなく、「事例コンテンツ」を自社サイト上に掲載する形でのオウンドメディアのスモールスタートをおすすめしています。

というのも、「メディア」立ち上げとなると、メディア自体のコンセプト立案とブランディング、ウェブサイト作成、コンスタントな記事更新が必要となり、十分なリソースが確保しきれない、または、優先順位としても、確保すべきでないケースが多いからです。

事例コンテンツ」は、「サービス理解」と「認知向上」に効果的で、かつ、良質なコンテンツを発信することで、「ブランディング」にも繋がります。また、頻繁な更新が求められる内容ではないため、自社の可能なペースで継続しやすいという利点もあります。

さらに、活用事例を時流に合わせた切り口で発信することで、PR効果も得られ、メディア掲載に繋げることも可能です。オウンドメディアのコンテンツとして、企画立案・取材を進める中で、ストーリーの解像度も上がるため、メディアにも企画提案・紹介しやすくなります。

オウンドメディアコンテンツ例とメディア掲載に繋がった一例:

3. 自社データとユーザーヒアリングを通して、ターゲットの解像度を徹底的に上げる

上記の整理を経て、背景・現状課題と目的が明確になったら、次は「ターゲット」の解像度を上げていきます。自分達の思い込みではなく、ユーザーの利用状況やチャーンレート、ファーストタッチからのCVR、ロイヤルカスタマーの属性分析などを行います。

そして、主なユーザー属性と、これから獲得していきたいユーザー属性を整理し、この整理に基づいた見込み顧客や顧客をピックアップし、定性インタビューを実施。これらの定量・定性データをもとに、ターゲットペルソナをいくつか設定し、これらのターゲットを動かすコンテンツの作成を目指します。

上記のアプローチは、ブランディングやマーケティング、コミュニケーション戦略の策定を行う際にも用いられるアプローチです。メディア立ち上げにあたっても、しっかり事前にユーザー分析を行い、ターゲット像を明確にしておくことで、その後の企画にブレがなくなるため、少し手間だと思っても、このプロセスを加えることをおすすめします。

また、このユーザー調査結果は、メディア企画だけでなく、マーケティング・PR企画全般にも活用できるため、効果の薄い施策実行を避けるためにも、アーリーフェーズのスタートアップもしっかり実施できると良いと思います。

4. ターゲットのニーズを満たす情報を提供する企画を立案

ターゲット像が明確になれば、彼ら・彼女らの課題を解決し、ニーズを満たす企画を立案します。ターゲットの解像度を上げておくことで、作り手の「独りよがり」となる企画を避けることができます。3.のプロセスを経るとよく分かると思うのですが、「ターゲット像」は1つでない場合が多いです。自社サービスに興味をもってくれそうなターゲットは、数パターンのペルソナに分類され、それぞれに向けた企画の立案が必要となります。

そのため、ターゲットAに向けてはA企画、ターゲットBに向けてはB企画、ターゲットCに向けてはC企画と、複数の企画立案を行なっていく流れになります。それぞれの企画に対して、適切に効果検証を行うことで、PDCAを回し、以後の企画の精度を上げていくことが可能です。

私が企画立案を行うにあたって、必ず含めるのは下記項目です。2,3のプロセスで明確になった、「背景・課題」「目的」「ターゲット」も、企画粒度にブレイクダウンした上で、再度言語化することをおすすめします。

<オウンドメディア企画書に含める項目>
・背景・課題:
このコンテンツが必要な背景と、コンテンツを通して解決を目指す課題について
・目的:コンテンツを通じて実現したいこと
・ターゲット:読者ターゲット。上記で設定したペルソナの具体的な関心や知りたいことにまで落とし込む
・読後の態度変容:コンテンツを読んだ後に、どのような認識の変化、行動の変化をもたらすか
・企画概要:目的を実現するための具体的な企画内容
・構成案:
コンテンツの詳細な構成イメージ、具体的な質問項目も含む
・参考情報:企画立案に際して参考とした情報や記事などのリンクを掲載(取材関係者の理解促進のため)

企画書を作成したら、企画会議を行い、さまざまな観点で議論・ブラッシュアップすることも効果的です。

5. ライター・カメラマンなど、信頼できるプロフェッショナルをアサインする

企画を立案したら、取材先への相談・取材依頼を行い、同時にライター、カメラマンへの依頼を行います。メディア立ち上げ時には、並行して、記事を掲載するCMSの作成もデザイナーに依頼します。

未経験だと、ライター・カメラマンとの繋がりもあまりないと思うので、立ち上げ初期には、ライター・カメラマンとの繋がりが一定ある、外部の編集のプロに業務支援を依頼するのがおすすめです。クラウドサービスや、マッチングサービスなどを活用しての自身でライター、カメラマンの選定・アサインも可能ですが、ディレクションが不慣れだと、質が担保できず、結果的にネガティブブランディングとなってしまうリスクがあるからです。

また、取材依頼についても、依頼先に失礼のないように、企画概要と取材したい概要などを適切にまとめて依頼することが大切です。とくに、お客さまへの事例取材依頼は、サービスへの信頼性にも関わってくるため、丁寧かつ慎重にコミュニケーションが必要です。

プロのライター・カメラマンを使わず、社内で執筆・撮影を行おうとするケースもありますが、私はあまりお勧めしていません。社内に執筆・撮影のプロがいる場合は別ですが、そうでない場合、執筆に過剰に時間がかかったり、記事・写真のクオリティが低く、伝えたいことがうまく伝えられず、逆にブランド棄損となってしまう場合が多いからです。

1つの記事の執筆や撮影にかかる費用は、それぞれ数万円〜10万円程度です。社員が作成する場合も人件費がかかることを考えると、その道のプロに依頼し、クオリティを担保したコンテンツを作成した方が効率的だと思います。

とくに、撮影については、誰でも気軽にスマートフォンなどで撮影できるからと、自分達でなんとかしようとやりがちですが、ライティング(光の調整)なども含め、プロが撮影したものと、素人が撮影したものは、かなりクオリティに差が出て、印象もかなり異なるため、自社コンテンツとして、幅広く活用を目指す場合は、プロの撮影を入れることをおすすめします。

プロのカメラマン、ライターを起用したオウンドメディアコンテンツ例:

6. PDCAを回し、効果検証を行う

企画立案時に「目的」を明確にしておりますので、その目的に沿った効果が得られているか、計測・振り返りを行うことも重要です。「認知向上」目的であれば、「問い合わせ数」の増減などをKPIとしたり、「利用促進」目的であれば、コンテンツ経由の新規ユーザー数をKPIとするのも有効です。

また、オウンドメディアは、待っているだけでは読み手に届かず、コンテンツを適切に届けるアプローチも必要ですので、SNSを活用したり、導入事例についてはプレスリリースを出したり、ナーチャリングメールのコンテンツとして活用したり、メディアへの提案に繋げたりと、他のマーケティング・PR施策と連動させることで、コンテンツの効果最大化を目指し、効果を検証することも大切です。

また、オウンドメディアコンテンツの企画をヒントに、イベント企画を立案したり、逆にイベント企画をレポートの形で、オウンドメディアコンテンツとしてストック化することも可能ですので、オウンドメディアを持つことで、自社の多くの情報をストック化し、何度も活用することが可能になります。

7. 中長期的な視点を持つ

最後に、これは、オウンドメディアを立ち上げたいと相談される方皆さんにお伝えするのですが、メディア運営には、短期的な視点ではなく、中長期的な視点が必要です。短期の効果にフォーカスするのであれば、まずWeb広告などからスモールスタートする方が費用対効果はよいケースが多いです。

コンサルティング業やターゲットが限定されたBtoBビジネスなどの場合は、情報をしっかり届けるコンテンツマーケティングが初期から有効ですが、それ以外のビジネスの場合は、Webマーケティングを一定行った次に、中長期的なブランディングも視野にオウンドメディアに着手するのが望ましいと感じます。理由は、前述の通り、一定のクオリティを担保したオウンドメディア運営には、リソースがかかるからです。

一方で、Web広告がブランディング広告を除き、消費型の予算消化になりがちなのに対し、オウンドメディアは、その投資が資産として自社に蓄積できるメリットがあります。そのため私は、リソースの限られるスタートアップに対しては、獲得目的Web広告→オウンドメディア(事例記事など自社のPRコンテンツ含む)・戦略PR→ 認知向上目的ブランディング広告(動画広告など)の順で取り組むことをおすすめしています。

オウンドメディアは、ROIをコントロールでき、短期成果もあげられる、獲得目的のWeb広告よりは、即効性がありませんが、ROIがどうしても低くなりがちなブランディング広告よりは、予算を抑えつつ、ブランディング効果をあげやすいためです。今は低予算で実現可能な動画広告なども増えているので、メディア立ち上げとブランディング広告、どちらを先に着手するかは、それぞれの企業の解決課題によって、決めてもよいかと思います。

いずれにしても、オウンドメディアの効果は、獲得系広告と比べて、即効性が期待できるものではありませんので、中長期的に、自社のブランディングに寄与する施策と位置付けて実施することをおすすめします。

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以上が、オウンドメディアの立ち上げ・運営の際に、私が必要だと思っている観点です。メディア運営については、さまざまな考え方やアプローチがあると思いますので、あくまでも一例として、参考にしていただけると嬉しいです!

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