【初めて資金調達PRしたい人向け】よくある質問と気をつけたい3つのポイント
こんにちは。MAIです。秋になり、スタートアップ関連ニュースも増えてきましたね!今日はシード・アーリーステージのスタートアップがはじめて資金調達PRを行う際に、よく受ける質問と、注意したい3つのポイントについてお話したいと思います。
はじめに
私は、2022年3月末にリーガルテックスタートアップ ContractSを退社後、複数のシード・アーリーフェーズのスタートアップの資金調達活動前後の広報・PRをお手伝いしてきました。前職での経験やPR支援を通して、多くのメディアに取り上げていただき、本質に向き合い適切に価値を言語化・可視化し、適切なプロセスで丁寧に取り組めば、伝えたいメッセージを広く届けられると実感しています。
そこで今回は、一般的に言われていることに加えて、これまでの職務経験及び広報・PR支援の実践を通して重要だと感じたポイントについて、シェアしたいと思います。私の場合、マーケティングバックグラウンドからの広報・PR経験のため、マーケティング寄りの観点が大きいかもしれませんが、実践して良かったと思う点を中心にまとめています。
このnote記事が、シード・アーリーフェーズで広報担当のいないスタートアップや、経験の浅い一人広報・PRの方の参考になると嬉しいです。
Q1: まず最初に何からやれば良い?
A: 資金調達PR活動のゴールを設定し、自社の独自性と強みの言語化と、コアターゲット像の明確化。これらを盛り込みファクトブックを整える (調達リリース2〜3ヶ月前)
「数ヶ月後に、資金調達リリースを出したいが何からやれば良いか?」という相談を受ける際、まずお伝えするのが、プレスリリースは自社が伝えたいニュースを届ける手段でしかない、ということです。まずは、資金調達PR活動のゴール(採用貢献・サービス認知向上など)を設定した上で、自社の独自性と強みの言語化と、コアターゲット像を明確にするところから始めることをおすすめします。
シード・アーリーステージのスタートアップの場合、なんとなくサービスについて説明できるのですが、解決を目指す課題、自社の独自価値や競合他社と比べた強み、サービス/コーポレートそれぞれの注力ターゲット像が、明確に言語化・資料化できていない場合も多々あります。
これは事業戦略やマーケティング戦略の領域にもなりますが、ここがファジー(曖昧)なために、プレスリリースのメッセージが弱くなり、明確な強みを打ち出せず、メディアや見込み顧客にも興味をもってもらいづらくなるケースも多く見受けられます。まずは経営層、もしくは経営層と対峙する広報担当者が、解決を目指す課題、自社サービスの独自価値や競合他社と比べた強み、サービス/コーポレートそれぞれの注力ターゲット像について明確に定め、言語化することが重要となります。
私は、これらを社内で言語化するのに一定の時間を費やし、その後、これらを盛り込む形でファクトブック(会社説明資料)を作成・アップデートすることをまずおすすめします。ファクトブックって何?という方は、多くの方々がノウハウを共有してくれているので、以下などを参照してみてください。
私の前々職メルカリもファクトブックを公開しており、ビジュアルも見やすくわかりやすいので、ぜひ、構成や見せ方の部分など、参考にしてみてください。
広報・PR活動を行う際には、そのサービスに詳しくないメディアの方にも限られた時間や手段(メールやSNSメッセージなど)で、事業の強みや独自性、誰のどんな課題を解決するサービスなのかについて説明する必要があります。上記の言語化を通して、社会の関心事とブリッジする企画の切り口にも辿り着きやすくなりますし、自社の強みをわかりやすく対外的に伝えることができるようになるため、マーケティング活動にも寄与することができます。
ファクトブックの作成には時間がかかるため、面倒に思う方もいると思いますが、投資家向けのピッチ資料と営業資料をベースにしながら、背景課題や市場環境、マーケットのポテンシャルや競合環境などに触れつつ、上記項目を分かりやすく盛り込むことで、メディアとの面談の際にも、効果的に自社の独自性と強みを伝えることができます。
ファクトブックの要素は採用資料にも応用することができますし、結果的に端的に伝えたいことを届けられる武器となりますので、少し時間を費やしてでも、早めにファクトブックを作成することをおすすめします。
※戦略、独自価値、ターゲット設定などの部分は、さらっと書きましたが、最も難しい部分でもあります。戦略策定やブランディング、マーケティング経験の乏しい経営者や広報担当者が初めての調達リリースに携わる際は、戦略策定やブランディング支援会社、その領域に知見のある業務委託・副業人材に支援を求めることをおすすめします(資金に限りのあるシード・アーリーフェーズのスタートアップの場合、小規模企業や個人の業務委託・副業などでお願いできる方を見つけられると良いかもしれません)。
私が参考にしている、おすすめの書籍についても紹介しておきます。
本質的な課題について
顧客理解と独自価値について
Q2: 資金調達リリースを出したいのですが、どんな流れで何をすればよい?
A: 言語化し、ファクトブックに盛り込んだ要素を参考に、資金調達リリースを作成。近しいサービスやベンチマークとする企業のリリースも参考にしつつ、知見ある方々に確認してもらうと◎ (調達リリース1ヶ月前)
資金調達リリースの相談を受ける際、これをステップ1だと思って相談いただくケースも多いですが、Q1で記載した内容を1-3ヶ月程度時間をかけてブラッシュアップしておくことで、調達リリースの作成も非常にスムーズになります。
調達リリースの原稿は、1ヶ月前くらいにはある程度作成し、投資いただくVC(ベンチャーキャピタル)や広報アドバイザーなどにアドバイスをもらい、ブラッシュアップするのがおすすめです。余裕を持ってファーストドラフトを作成することで、より多くの方達からのフィードバックを得られ、ブラッシュアップするのに時間をとれるからです。シード・アーリーステージのスタートアップは、社内のリソース・知見が限られるため、社外の多くの方を味方につけ、協力を仰ぎながら資金調達広報活動を進めていくことをおすすめします。
調達リリース配信までの主な流れ
調達リリース配信までの大まかな流れは下記の通りです。各社の状況によりスケジュールは異なりますので、あくまでも一例として参考にしてみてください。
1ヶ月前:調達リリース原稿作成 → VC各社にリリース原稿確認依頼&投資家コメント依頼 → 原稿修正(リリース1週間前までにはFIXさせたい)
4週間前:メディアアプローチ開始、関係のあるメディア及び、VCなどに紹介してもらったメディアに面談を依頼・調整
3週間〜1週間前:メディア面談を実施、ファクトブックやプレスキット(代表プロフィールと写真、サービス関連画像素材、サービスロゴ、会社関連素材、その他共有可能資料)などを面談後、メディア担当者に送付。
1週間前:リリースに掲載する投資家コメント回収・画像・バナーデザインをFIXさせ、調達リリース原稿完成 → PR TIMESなど配信ツールに流し込み・セット
数日前:投資家にプレスリリース本番URLを共有し、配信日時を伝えるとともに、SNS拡散を依頼。自社公式SNSや代表SNSの投稿文を用意。社員に情報解禁タイミングを告知するとともに、リリース後のSNS拡散を依頼する
リリース当日:リリース配信確認後、社内アナウンス。自社公式SNSや代表SNSで調達リリースについて投稿。関連noteやメディア露出、採用活動に関する投稿も続いて行い、調達ニュースを盛り上げる。
翌日以降:資金調達ニュース及び、メディア露出などを、マーケティング・営業活動や採用活動に活用。ナーチャメールやスカウトメールなどにも効果的に活用することで、資金調達ニュースを自社の成長に繋げる様々な活動に活かす。また、早めのタイミングで振り返りを行い、一連の活動の良かった点と改善点、次のアクションを明確にするとよい。
調達リリース作成の際のチェックポイント
シード・アーリーフェーズのスタートアップは、サービスについても、世の中に広く知られていない場合が多いため、資金調達リリースを作成する際には、以下をしっかり伝えることを意識して作成することをおすすめします。
事業の背景課題
出資する価値のある課題を解決するサービスであることを伝えるサービスの概要と特徴
どんなサービスか、ビジュアルなども用いて分かりやすくビジネスモデルと特徴を解説創業者の事業成長にかける思い
エモさも重要。創業の背景や資金調達を経て、事業をどう成長させていきたいか伝える。このタイミングでnoteを執筆し、リンクをリリース内に掲載するのも◎
資金調達リリースの具体的な書き方・配信設定の方法については、下記などを参考にしてみてください。資金調達リリースを検討し始めたタイミングから、日々、PR TIMESなどに配信される他社の資金調達リリースをチェックし、参考にしたい表現や構成、ビジュアルバナーなどをメモとしてストックしておくこともおすすめです。
プレスキットについては下記などを参考にしてみてください。
Q3: 資金調達リリースのタイミングで、他にやっておいた方が良いことって何?
A: サイトリニューアルや営業・採用資料のアップデート、経営層や各部門のブログ記事(CEO noteなど)作成、採用・マーケティング関連イベントの開催などを、注目度が高まるタイミングに合わせて仕込んでおけると効果的
資金調達リリースは、多くのニュースを頻繁に出すのが難しい、シード・アーリーフェーズのスタートアップにとって、貴重な自社アピールの機会です。調達ニュースでアテンションを取れるタイミングを活かして、採用活動や営業・マーケティング活動に関連する施策を仕込んでおくことで、資金調達ニュース効果のレバレッジを効かせることができるので、ぜひ、全方位で仕込みを行っておくことをおすすめします。
資金調達リリースがうまく世の中に届いた場合、ウェブサイトへの流入なども通常の数倍以上増えるケースが多いため、以下を合わせて準備しておけると良いでしょう。
資金調達リリースタイミングで合わせて検討したい施策
サイトリニューアル
資金調達リリース前(または当日)に、サイトリニューアルを完了し、よりターゲットに伝わりやすい訴求のウェブサイトを用意して置けると良いでしょう。サービスサイト・コーポレートサイト・採用サイトそれぞれを、できる限りアップデートしておけると◎。調達ニュースのタイミングを活かして、リード獲得/利用者数アップ、採用候補者数アップへの貢献を目指すことが可能です。広報の観点からも、調達ニュースを通じて、リード獲得/利用者数アップを実現することで、以後、社内の広報・PR活動に対する社内の理解を得やすくなるというメリットもあります。営業・採用資料のアップデート
事前に営業資料や採用関連資料をアップデートしておくこともおすすめです。通常よりも注目が高まり、ウェブサイトのアクセス数が伸びたタイミングで来訪してくれたユーザーの商談CVR、採用面談CVRを高める施策を準備しておきましょう。社員の顔が見えるブログ記事
CEOによる「調達リリースを経て実現したい未来」などについてのブログ記事や、経営層による今後の成長戦略についてのブログ、各部門の紹介ブログなど、会社の中の人達の顔と思いが見える記事を調達リリースのタイミングと合わせて公開。こうしたコンテンツを増やしておくことで、採用貢献にも繋がります。採用・マーケティング関連イベントの開催
資金調達ニュースを一日だけの注目で留めてしまうのはもったいないですよね。注目を集めるタイミングで、後日に開催する採用やマーケティング関連のイベントを告知することで、見込み顧客や採用候補者に継続して興味をもってもらうことが可能になります。
調達リリース内や、公式SNSなどで、調達リリースタイミングに合わせてイベント告知を行うことで、通常の自社イベントよりも集客アップすることも可能です。採用部門やマーケティング、営業部門などと、事前に連携を強化しておくことで、こうしたイベントも効果的に展開することが可能です。資金調達後のタイミングですので、解決を目指す課題や自社のビジョン、ロードマップについて語るなど、普段のイベントより高い目線のテーマでイベントを計画するのもおすすめです。
多くのスタートアップ広報の方々が、自社の資金調達PR調達戦略や施策などについて、シェアしてくれておりますので、ぜひ参考にしてみてください!
以上が、シード・アーリーステージのスタートアップが、資金調達PR活動を行う際に、よくある質問と注意しておきたいポイントです。具体的なノウハウやTipsは、インターネット上に多く公開されていますが、Howから始めるとうまくいかないケースも多いので、誰(Who)に何(What)を届けたいか、自社の強みや独自価値を明確にした上で、資金調達PR活動を行えると良いと思います。
様々な人の困りごとを解決する独自性を持ったスタートアップが、多くの人に知ってもらい、使ってもらえるきっかけに、このnoteがなると嬉しいです!
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