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『メテオール 03』(toron*)

toron*大先生(と、こころのなかでは勝手に読んでいる)の『メテオール 03』を読みました。
うたの日をはじめたころ、いつも薔薇かつわたしの好きな歌を詠まれる方がいるな……!と思ったらtoron*さんで、ずっとファンでした。こっそり弟子入りしたいといううたの日メンバーの思いが凝縮されて、されすぎちゃって、ついに件の弟子さんという強者がうまれてしまったのでは?と5秒くらい本気で考えたこともある。あれは幻想ではないのだよな……。
まさか初参加の文フリでお会いできるとは思わなかったので、ほくほくで東京遠征を終えたのがなつかしいです。

この本はとにかくサイズもデザインもかわいくて、持ち運びやすい。星が降ってきそうな表紙がめちゃくちゃ素敵。電車にも連れて行ったし、休日に営業しているわけない市役所に着いてからそれに気づいて、なぐさめに入った喫茶店でも一緒だった。
2023年の1月・2月の日記がぎっしり、そして毎日一首の短歌が添えられ、さいごにはtoron*さん特製のお料理レシピまで付いているという豪華さ……! ゆくゆくはイラスト付きグルメエッセイなども出してほしいくらいです。

全部を読み終わって、まず、「焼酎のお湯割り」がそこそこの頻度で出てきて、toron*さん、焼酎いけるんすごい……大人だ……と思った。わたしは焼酎がほんとうに克服できないので。そして日々の食事が基本的にヘルシーで見習いたいとも思ったし、定期的にディルなるものが登場して、めっちゃおしゃれ、どこに売ってるんや……と天を仰いだりもした。あれはどこに売ってるんでしょうか。いやもっとほかに感想あるだろ。あります。めっちゃある。

日記というのはその人の生活をちょっと垣間見る感じがして、若干の背徳性をおぼえてしまうのだけど、toron*さんの日記には日々の出来事がリズムよく、無駄なく淡々と書かれていてとても読みやすかった。かといって無機質な感じでもなく、一緒に過去を回顧していくようで面白かった。
なにより毎日の活動ルーティンがとにかくパワフルで、まるで二日分の行動を一日に凝縮したような感じでおどろきの連続だった。仕事をしたあとに帰ってきて、自炊してお夕飯を食べて、そのあとバイト……!? こんな忙しいのに毎日の日記を綴るなんて、しかも短歌も欠かさず。土日のどちらかは家で&部屋着で(ここ重要)ぼけっとしていたいわたしの半年分のスタミナが使われるくらいの日々がそこにあった。ただ、あとがきでも触れられているように、ご本人にとっても、振り返ってみるとこの時期の予定の詰め方はびっくりだったようで、いまはもっと穏やかになったとのことで、勝手に安心しました。誰目線……。

あとはなんといっても短歌。うたの日に出詠された歌の日と、そうでない日がある。うたの日には大勢の人が毎日すごい数の歌を出すから、ああこの短歌好きだったな、と思ってキュンとしてもすぐに次の日へと脳がシフトしていって流れてしまう。なかなかそのキュンを正確に思い起こすのがむずかしいので、あとからこういうふうに紙で見返せるのもいいな、と思った。

toron*さんの短歌は比喩や着想に魅力がある。これをこういう視点でとらえるのか、と毎回新鮮なおどろき。うたの日の投票タイムは作者非公開の状態なのに、これはtoron*さんの歌っぽいなと思ったらだいたい当たっていることが多い。わたしの好きアンテナがびんびんしているだけかもしれませんが……。
エッセイとともに、読み手にあたらしい発見をもたらしてくれる歌をたっぷり味わえて、とても贅沢な一冊でした。

ぬいぐるみ抱きつつねむる胸奥に非常階段伸びてゆきたり

『メテオール 03』/toron*

météore(メテオール)はフランス語で「流星」。世界にひとすじのきらめきを引いてくれるような、toron*さんの歌にぴったりのタイトルだと思いました。いつも尊敬のまなざしで見つめています……(とつぜんの告白)。

短歌と日記もしくはエッセイを一冊にすることにわたし自身すごく憧れがある(というか、今年やってしまおうかと思っている)ので、この本を手にとれてよかった。歌人さんの書く日記やエッセイ、やっぱり好きだなあ。こういう本をこれからも読んでみたいです。

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