あいあむ

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記事一覧

わたしのたいせつなおしごと

夕飯どうしようかな、冷蔵庫の中何が入ってたっけ、なんて考えて、目の前の白髪頭にはっとする。一瞬のワープ。白髪頭の男は喋り続けている。わたしは話の合間を見計らって…

あいあむ
5年前
3

愛され慣れていないもので

きらいじゃない。むしろ好きだ。シンプルな考え方もストレートな伝え方も、見ていて気持ちがいい。優しい言葉、楽しい話題、紳士的な振る舞い。これら全部、目的を達成する…

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5年前
2

こんな方を募集します(希望人材)

社会的問題の解決に関心があり、目標の実現に向けて地道な努力を積み重ね、何事にもていねいに向き合い、工夫改善を続け、環境や他人のせいにせず、自分の意見を発信するこ…

あいあむ
5年前
3

さよなら、サラリーマン

本日が最終出社日となりました。入社以来35年間大変お世話になりました。今後は穏やかな暮らしを楽しみつつ、少し早目のお迎えがくればいいかな、と思っています。それでは…

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5年前
4

金曜日、渋谷で

本気だよ、と彼が言う。 嘘だ、と思う。わたしは微笑む。彼に会うのは2回目だ。時間に換算すれば4時間程度。その間にお互いが得た情報は、職業と年齢と家族構成、それだ…

あいあむ
5年前
1

価値がなくて役に立たないこと

週末はこの世界から消えることにしてるの。 わたしは首をひねる。休日の過ごし方について話しているつもりだったけど、いつの間にか話題が変わったのだろうか。目の前に座…

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5年前
3

想像力が足りない

出会ってから21年、付き合って19年、一緒に暮らし始めて16年。結婚はしない。子供はつくらない。ずっと2人で生きていく。「なにかあるんだろうね」と、陰で言う人もいるけ…

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6年前
5

いくつになっても弟はかわいい

わたし拓ちゃんと結婚したいのだけど、どうだろう。 兄弟は結婚できません。 明日法律が改正されたら結婚したいなぁ。 やだよ、俺はお断り。 拓ちゃんが家に戻ってきて…

あいあむ
6年前
1

ためしてから選んでください

わたしはもう働かない。と、彼女は言った。わたしには人に合わせて働く能力がない。この3年でそれがよくわかったから、もう働かないことに決めた。でも、働かないと生きて…

あいあむ
6年前
2

オプション付け忘れていませんか

神さま、五体満足につくってくれてありがとう。風邪はめったにひかないし、大きな病気もしていません。そりゃね、もう少し目が大きくて、足が細くて、頭の回転が速かったら…

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6年前
2

ことばのちから

随分とご無沙汰しておりました。20年ぶりでしょうか。あの時のわたしはまだ幼くて、少し大人になってからあなたがすごい人なのだと知りました。あなたをTVやCMでお見かけす…

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6年前
1

わたしが会社を休む理由

電車の扉とホームドアが開く。 マイクを通して聞こえる駅員さんの声は、静かだけど怒りを含んでいる。電車の扉とホームドアが閉まる。そして、また開く。これで3回目だ。 …

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6年前
6

男の子のふしぎな世界

「あの2人仲良いよね。」 「そうかな。」 「だって、いつも一緒にいるじゃない。」 「歩くスピードが一緒だからだよ。」 「歩くスピード?」 「あの2人は歩くのが遅い…

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6年前

自由にだまされない

ブランドバックを買う時、赤が欲しくても失敗のない無難なブラックを選ぶ人が多い。売れ筋が消費者の本当に望んでいるものとは限らない。 というニュアンスの話を最近どこ…

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6年前
1

おとなになったこども

「どうして大人はわたしの気持ちをわかってくれないのだろう。こんなに傷付いているのに、どうして誰も救ってくれないのだろう。わたしは大人になったら子供の気持ちに気付…

あいあむ
6年前
2
わたしのたいせつなおしごと

わたしのたいせつなおしごと

夕飯どうしようかな、冷蔵庫の中何が入ってたっけ、なんて考えて、目の前の白髪頭にはっとする。一瞬のワープ。白髪頭の男は喋り続けている。わたしは話の合間を見計らって相槌を打つ。聞いてますよ、のアピール。

話がつまらない。これって相当な罪だと思う。他人の時間と精神力を奪うのだから、立派な窃盗だ。この男とわたしの間にははっきりした従属関係があるので、「敬う」というポーズが必要だけど、例えば彼が父親だっ

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愛され慣れていないもので

愛され慣れていないもので

きらいじゃない。むしろ好きだ。シンプルな考え方もストレートな伝え方も、見ていて気持ちがいい。優しい言葉、楽しい話題、紳士的な振る舞い。これら全部、目的を達成するためであり、その目的は女を抱く、ただそれだけ。わかりやすくて好ましいじゃない。ホテル誘われた?行ってきなよ、一夜限りだし楽しんできな、なんて言っちゃう。他人事だから。

当事者になると話は別。今この瞬間、あなたはこの世でいちばん信用でき

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こんな方を募集します(希望人材)

こんな方を募集します(希望人材)

社会的問題の解決に関心があり、目標の実現に向けて地道な努力を積み重ね、何事にもていねいに向き合い、工夫改善を続け、環境や他人のせいにせず、自分の意見を発信することが出来て、多様性を認めながら豊かな人間関係を育み、自己成長を続けられる人

あんたの会社は神さまでも募集してるのか?
#エッセイ #ひとりごと

さよなら、サラリーマン

さよなら、サラリーマン

本日が最終出社日となりました。入社以来35年間大変お世話になりました。今後は穏やかな暮らしを楽しみつつ、少し早目のお迎えがくればいいかな、と思っています。それではみなさまお元気で。

彼はそう言って笑った。それを聞いたみんなも笑った。でも、わたしは笑えなかった。笑ってあげればよかったと思う。寂しいお別れの言葉。わたしが生まれる前から働いていた人。

会社は働いた分お給料をくれる。でも、人生まで保証

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金曜日、渋谷で

金曜日、渋谷で

本気だよ、と彼が言う。

嘘だ、と思う。わたしは微笑む。彼に会うのは2回目だ。時間に換算すれば4時間程度。その間にお互いが得た情報は、職業と年齢と家族構成、それだけ。好きになる要素としては少なすぎる。いや、もしかしたら多すぎるのかもしれない。

彼は同じ台詞を繰り返す。誰に向かって言っているのだろう、と思う。わたしなのか、それとも自分自身なのか。おそらく、どちらにも。わたしは微笑む。

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価値がなくて役に立たないこと

価値がなくて役に立たないこと

週末はこの世界から消えることにしてるの。

わたしは首をひねる。休日の過ごし方について話しているつもりだったけど、いつの間にか話題が変わったのだろうか。目の前に座る彼女は少し時間を空けた後、笑いながら口を開く。

ごめん、もったいぶった言い方だったね。最近、週末はずっと寝てる、下手したら2日で6時間も起きてないかも。それくらい寝てる。病気じゃないよ。平日は普通に機能してるし、問題ない。強いて言

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想像力が足りない

想像力が足りない

出会ってから21年、付き合って19年、一緒に暮らし始めて16年。結婚はしない。子供はつくらない。ずっと2人で生きていく。「なにかあるんだろうね」と、陰で言う人もいるけれど、特に何もない。病気もない。犯罪歴もない。お互いの家庭環境もいたって良好。ちなみに、異性同士だ。ただ、結婚という形を取らなかっただけ。彼女は彼のことが大好きだし、彼は彼女を大切にしている。彼女たちには世界の秩序を守るための言葉や法

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いくつになっても弟はかわいい

いくつになっても弟はかわいい

わたし拓ちゃんと結婚したいのだけど、どうだろう。

兄弟は結婚できません。

明日法律が改正されたら結婚したいなぁ。

やだよ、俺はお断り。

拓ちゃんが家に戻ってきてくれて本当に助かってる。お母さんの機嫌も良いし。

それはよかった。

女だけの時に比べて2人共家事をするようになったし、男の人が家にいるだけで、ちゃんとした生活を心掛けるようになるもんだね。

そんなもんかね。

だから、いっその

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ためしてから選んでください

ためしてから選んでください

わたしはもう働かない。と、彼女は言った。わたしには人に合わせて働く能力がない。この3年でそれがよくわかったから、もう働かないことに決めた。でも、働かないと生きていけないから何か手に職を付けようと思うんだ。とりあえず、世界を見てくるよ。そう言って、彼女は行ってしまった。

わたしは笑顔をつくる。上司のどうでもいい話に心の中で舌打ちしながら。そうやってお給料をもらっている。これから定年まで40年くらい

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オプション付け忘れていませんか

オプション付け忘れていませんか

神さま、五体満足につくってくれてありがとう。風邪はめったにひかないし、大きな病気もしていません。そりゃね、もう少し目が大きくて、足が細くて、頭の回転が速かったらって思うけど、そういうことは言い出したらキリがないから、もういいの。健康がいちばん。ありがとう。

そう、基本的には満足しているの。でもね、やっぱりね、1コだけ言わせてください。ブスだって、バカだって受け入れているんだから、これだけは言わせ

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ことばのちから

ことばのちから

随分とご無沙汰しておりました。20年ぶりでしょうか。あの時のわたしはまだ幼くて、少し大人になってからあなたがすごい人なのだと知りました。あなたをTVやCMでお見かけする度に、誇らしい反面、どこか遠くへ行ってしまったような気がしていたのですが、今日は改めて、あなたが冷静で頭が良く、愛に溢れて、近くて遠い存在なのだと実感しました。

先日、谷川俊太郎展を訪れた。

わたしが「詩」と関わった時間は短い。

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わたしが会社を休む理由

わたしが会社を休む理由

電車の扉とホームドアが開く。

マイクを通して聞こえる駅員さんの声は、静かだけど怒りを含んでいる。電車の扉とホームドアが閉まる。そして、また開く。これで3回目だ。

無理なご乗車はお止め下さい。電車が出発できません。

先程よりも強く、怒りを伝える声。

内臓が冷えていくのがわかる。

目の前でおばさんが電車に乗り込もうとする。アナウンスは続く。身幅と車中のスペースの差などまるで気にしない。身体の

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男の子のふしぎな世界

男の子のふしぎな世界

「あの2人仲良いよね。」

「そうかな。」

「だって、いつも一緒にいるじゃない。」

「歩くスピードが一緒だからだよ。」

「歩くスピード?」

「あの2人は歩くのが遅いんだよ。」

歩くスピードでグループが決まる男の子の世界。よくわからない。
#エッセイ #ひとりごと

自由にだまされない

自由にだまされない

ブランドバックを買う時、赤が欲しくても失敗のない無難なブラックを選ぶ人が多い。売れ筋が消費者の本当に望んでいるものとは限らない。

というニュアンスの話を最近どこかで読んだ。

食べ物に置き換えてみた。わたしはからあげが世界でいちばん好きである。できることなら毎日食べたいし、毎食だってどんとこい。でも、身体のことを考えるとそれはいけないことだとわかる。(とか言いつつ、2日に1回は食べている)

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おとなになったこども

おとなになったこども

「どうして大人はわたしの気持ちをわかってくれないのだろう。こんなに傷付いているのに、どうして誰も救ってくれないのだろう。わたしは大人になったら子供の気持ちに気付いてあげよう。だから、今の気持ちを忘れないでいよう。」と、子供の時に思った。

その時の状況(私は車に乗っていた)、その時の景色(山の中を走っていて、葉っぱの間から光がキラキラしていた)を鮮明に覚えている。強く心に誓ったことも思い出せる。

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