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価値がなくて役に立たないこと

週末はこの世界から消えることにしてるの。

わたしは首をひねる。休日の過ごし方について話しているつもりだったけど、いつの間にか話題が変わったのだろうか。目の前に座る彼女は少し時間を空けた後、笑いながら口を開く。

ごめん、もったいぶった言い方だったね。最近、週末はずっと寝てる、下手したら2日で6時間も起きてないかも。それくらい寝てる。病気じゃないよ。平日は普通に機能してるし、問題ない。強いて言うなら、月曜日は頭と腰が痛いかな。でも、それくらい。

平日そんなに忙しいの?

ううん、そんなことない。少なくとも5時間は睡眠時間確保してる。でも、寝ちゃう。っていうか、消えちゃう。

消えちゃう。わたしは小さく繰り返す。

比喩だよ。求めているのって、睡眠じゃなくて消えることなの。わたしさ、この世界は異常だと思ってる。毎日働いて、身体を鍛えて、本を読んで、飲みに行って、誰かのために料理なんかしちゃって、生産性のある時間ばかり求められるじゃない。効率とか将来性とか評価とか、もうイヤ。意味なんかなくたっていい。なんでもかんでも理由を求める奴全員いなくなれ。

ははは。でも、そんなに寝てると周りは心配するでしょ。引きこもって漫画を読むとかじゃだめなの?

それはだめ。1回試してみたんだけど、1巻と2巻の間に考えちゃう。ああ、なんでこんなことしてるんだろう、って。根が真面目だから。そういうのいらないの。

なるほどね。

それにね、人が1人消えたってこの世界は何も変わらない。卑下してるわけじゃなくて、本当に世界は変わらない。ちっとも。テロが起きたって自然災害が起きたって変わらない。

世界はね。でも少なくともわたしの世界は変わるよ。でも、消える時間が必要なんだっていうことはわかった。だから、わたしはあなたが戻ってきてくれればそれでいいや。まってるよ。

#エッセイ #ひとりごと

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