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金曜日、渋谷で
本気だよ、と彼が言う。
嘘だ、と思う。わたしは微笑む。彼に会うのは2回目だ。時間に換算すれば4時間程度。その間にお互いが得た情報は、職業と年齢と家族構成、それだけ。好きになる要素としては少なすぎる。いや、もしかしたら多すぎるのかもしれない。
彼は同じ台詞を繰り返す。誰に向かって言っているのだろう、と思う。わたしなのか、それとも自分自身なのか。おそらく、どちらにも。わたしは微笑む。
気付かないフリと傷付かない方法をわたしたちはそれぞれ身に付けて出会った。だから、話し方とか雰囲気とかそういうぼんやりしたものだけでいい。どうせ、その人自身には辿り着かない。でも、わたしはそんなワザ身に付けたくなかったと思っている、今でも。
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