白鳥 正夫

1944年8月14日生まれ 愛媛県新居浜市出身 中央大学法学部卒業 文化ジャーナリスト…

白鳥 正夫

1944年8月14日生まれ 愛媛県新居浜市出身 中央大学法学部卒業 文化ジャーナリスト・ジャーナリズム研究関西の会会員・朝日新聞社元企画委員 著書に『シルクロードの現代日本人列伝』『アート鑑賞の玉手箱』)『夢をつむぐ人々』など多数

マガジン

  • アート曼荼羅あれこれ(2024年連載スタート)

    先行きの不透明な混迷の世、時代を表現するアートは普遍的な価値をもつ。興味の尽きない「アートの世界」を、新聞社の企画事業に長年かかわり、その後も文化ジャ-ナリスとして追跡する筆者が、美術館や展覧会の現況と課題、その舞台裏、作家の精神や鑑賞のあり方、さらには世界の美術紀行まで幅広くリポートする。

  • 旅で磨こう「文化力」

    「大人の心は、いつも発見の旅を待っている」。そんな旅のヒントを、これまで体験した内外の旅を通じ伝えたい。

  • 私の出会った先達の人生訓

    新聞社で定年を迎えたこともあって、夢を追い、共に生きる社会を願い、先達との邂逅に恵まれた。人生をより豊かにしてくれた先達との出会いを伝えよう。

記事一覧

現代アート界の “モンスター”が競演

 筆を持てば自由自在、絵画だけではなく多方面で活躍する現代アート界の “モンスター”の展覧会を取り上げる。“彼方”村上隆は、世界の現代アート・シーンに巨大なイン…

白鳥 正夫
2週間前
7

「大英」だけではない、魅力あふれる イギリス紀行            文学の舞台や自然美の湖水地方や田園、水道橋…

   初めてイギリスを旅してから13年も過ぎたが、その年、ウイリアム王子とケイトさんのご結婚直前でイギリス国旗が各所に掲げられ、テレビ取材の準備も進められていたこ…

白鳥 正夫
1か月前
5

龍谷大学龍谷ミュージアムで「バーミヤン大仏の太陽神と 弥勒信仰」展    破壊された東西大仏周辺の壁画を再現

 アフガニスタンのバーミヤンと言えば、東西2体の大仏があり、石窟の周囲には壁画が描かれていた。しかし2001年3月にイスラム原理主義勢力・タリバンによって爆破されて…

白鳥 正夫
1か月前
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人の死を見つめた旅、インドのベナレス巡礼者が求める人生の最後、河畔で焼かれ骨灰が川へ

 一枚の写真の前でくぎづけになった。「藤原新也の聖地 旅と言葉の全軌跡展」(2004年、朝日新聞社主催)を見た時のことだ。その写真には、人間の死体を犬の群れが食べて…

白鳥 正夫
1か月前
6

古代ガラスと手彩色写真、レアな企画展

 ガラスと写真は、文化生活に欠かせず、芸術表現の分野としても進化し続けている。その原初的な展覧会が滋賀と兵庫で催されていて興味深い。MIHO MUSEUⅯで春季…

白鳥 正夫
2か月前
2

「砂漠の美術館」中国の敦煌は世界の宝 窟の数は1000以上も、壁画や塑像に加え古文献

    甘州から粛州までは五百支里(編注・一里四百-四五十メートル)、約   十日間の行程である。水の涸れた川の岸に露営した翌日から、部隊は細   かい石の原へは…

白鳥 正夫
3か月前
3

大阪中之島美術館で「モネ 連作の情景」 「睡蓮」とジヴェルニーの庭もリポート

 何度見ても新鮮で飽きることのないモネの作品にまた出会えた。しかも国内外40館以上から集結した約70点すべてがモネの作品だ。東京・上野の森美術館で46万人を超す集客の…

白鳥 正夫
3か月前
3

神秘と謎に満ちた古代エジプトを再訪 ピラミッド圧巻、ナイル川流域の古代遺跡も驚嘆

 エジプトの旅の続編で、2003年12月のシナイ半島訪問後、12年の時を経て2015年9月に再訪した。ギザのピラミッドから2キロの近くで建築中だった大エジプト博物館は、新型…

白鳥 正夫
4か月前

初めてのエジプトはモーセのシナイ山 敬虔なイスラム教国家に旧約聖書の世界

 7000年前、世界最初の文明を拓いた古代エジプト。悠久の歴史を持つエジプトへの関心は高く2度旅した。その魅力は、謎に満ちた巨大建築物のピラ ミッドだけではない。今…

白鳥 正夫
4か月前
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名古屋市美のガウディとサグラダ・ファミリア展 世紀を超えた建設、見えてきた完成

 1882年の着工から142年が経過して今なお建設途中という、珍しい世界遺産「サグラダ・ファミリア」。世界が注目するこの建築物の全体で最も高いメインタワーである「イエ…

白鳥 正夫
4か月前
4

「note」 連載の「私の出会った先達の人生訓」が、本になりました! 

短いようで長い人生、見知らぬ人との出会いは不思議だ。 本来なら接点がない人と偶然か、必然か交差する。 そして人生の一時期、懇親を重ねることになる。 そうした不思議…

白鳥 正夫
6か月前
4

かつて日本の統治下、“有事”懸念の台湾今や世界トップの半導体、観光新名所も次々

 近年、気になるニュースに“台湾有事”がある。中国政府は、台湾はもともと中国の領土だとして、必ず統一すると主張してきた。中国が軍備増強を図り国力をつけるなか、軍…

白鳥 正夫
7か月前
7

日本と古くから歴史の交流、芸術と文化のオランダ 数多くの名画を遺し、37歳で自殺した薄幸のゴッホ

 オランダは、江戸・徳川幕府の鎖国時代も長崎湾に浮かぶ扇型の人工島“出島”を通じて、唯一交易を続けた国だ。西洋の様々な物品だけでなく蘭学が普及し、オランダは“新…

白鳥 正夫
7か月前
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アンサンブル金沢を創設した岩城宏之さん「おらが街のオケ」、世界をめざし大きな足跡

 人生の出会いは不思議だ。まさに偶然の積み重ねでもある。美術はともかく音楽には、それほどの関心もなく、ましてクラシックの音楽会など縁遠かった私は、新聞社の異動で…

白鳥 正夫
10か月前

大航海時代の残影、ポルトガルを初訪問華麗な装飾の修道院や独自の文化的建造物の数々

 ポルトガルへの旅は、私にとって56ヵ国目とはいえ、いつか訪ねるであろうと確信していた。幼い頃学んだ鉄砲やキリスト教伝来の歴史の記憶や、7年前に隣国のスペインを旅…

白鳥 正夫
11か月前
7

壮大な挑戦、進化し続ける美術家の蔡國強さん「戦争と破壊」や「平和と再生」などをテーマに芸術表現

 私が4半世紀前に出会ったアーティストの一人、蔡國強(さい・こっきょう、ツァイ・グオチャン)さんは、今や現代アートの世界的なトップスター になった。国立新美術館…

白鳥 正夫
1年前
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現代アート界の “モンスター”が競演

 筆を持てば自由自在、絵画だけではなく多方面で活躍する現代アート界の “モンスター”の展覧会を取り上げる。“彼方”村上隆は、世界の現代アート・シーンに巨大なインパクトを与えてきたが、今回は古都に乗り込んでの京都市美術館開館90周年記念展「村上隆 もののけ 京都」。京都市京セラ美術館 新館 東山キューブで9月1日まで開催されているが、国内で約8年ぶりとなる大規模個展だ。“此方” 横尾忠則の方は、絵画をはじめグラフィックデザイナー、版画家、作家としても活躍、ニューヨークで個展が開

「大英」だけではない、魅力あふれる イギリス紀行            文学の舞台や自然美の湖水地方や田園、水道橋…

   初めてイギリスを旅してから13年も過ぎたが、その年、ウイリアム王子とケイトさんのご結婚直前でイギリス国旗が各所に掲げられ、テレビ取材の準備も進められていたこともあって、よく覚えている。栄光の大英帝国時代の名を冠する大英博物館を訪ねたいと、機会をうかがっていた。その旅は、イングランド北部の湖水地方から中央部のコッツウォルズ地方、さらには南西部の古都バースなど多くの魅力に満ちた土地を訪ねる10日間のツアーだった。「大英」だけではなかったイギリスの魅力を、行程に沿って記す。

龍谷大学龍谷ミュージアムで「バーミヤン大仏の太陽神と 弥勒信仰」展    破壊された東西大仏周辺の壁画を再現

 アフガニスタンのバーミヤンと言えば、東西2体の大仏があり、石窟の周囲には壁画が描かれていた。しかし2001年3月にイスラム原理主義勢力・タリバンによって爆破されてしまった。かつての日本の調査隊による資料を検討し、壁画の新たな描き起こし図が完成したのを記念する特別展「文明の十字路・バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰―ガンダーラから日本へ―」が、龍谷大学龍谷ミュージアムで6月16日まで開催されている。筆者は4半世紀前になるが、朝日新聞社企画部に在籍時「西遊記のシルクロード 三蔵法

人の死を見つめた旅、インドのベナレス巡礼者が求める人生の最後、河畔で焼かれ骨灰が川へ

 一枚の写真の前でくぎづけになった。「藤原新也の聖地 旅と言葉の全軌跡展」(2004年、朝日新聞社主催)を見た時のことだ。その写真には、人間の死体を犬の群れが食べている光景が撮られていた。目を背けたくなる作品は、まぎれもなくインドのベナレスで撮った現実の一コマであった。写真には「人間は犬に食われるほど自由だ」のタイトルが添えてられていた。  藤原はインドを長く放浪した写真家で知られている。文章も達意で、小説家であり思想家でもある。展覧会の図録にはこんなコメントを綴られている

古代ガラスと手彩色写真、レアな企画展

 ガラスと写真は、文化生活に欠かせず、芸術表現の分野としても進化し続けている。その原初的な展覧会が滋賀と兵庫で催されていて興味深い。MIHO MUSEUⅯで春季特別展「古代ガラス―輝く意匠と技法」が6月9日まで、神戸市立博物館では特別展「Colorful JAPAN―幕末・明治手彩色写真への旅」が5月19日まで、それぞれ開かれている。絵画や彫刻、陶芸などの展覧会と異なり、レアな企画だ。まさに「百聞は一見に如かず」と言えよう。 MIHO MUSEUⅯの春季特別展「古代ガラス

「砂漠の美術館」中国の敦煌は世界の宝 窟の数は1000以上も、壁画や塑像に加え古文献

    甘州から粛州までは五百支里(編注・一里四百-四五十メートル)、約   十日間の行程である。水の涸れた川の岸に露営した翌日から、部隊は細   かい石の原へはいったが、その石の原は進むにつれて次第に沙漠の様相   を呈して 行き、終いには全くの沙漠に変わってしまった。行けども行   けども一木一草なく、沙の原だけが果てしなく続いて遠く天に連ってい   た。馬は沙中に脚を埋めないように蹄(ひづめ)に木履を履かされ、駱   駝は蹄を※牛(やく)の皮で包んでいた。  (講談社

大阪中之島美術館で「モネ 連作の情景」 「睡蓮」とジヴェルニーの庭もリポート

 何度見ても新鮮で飽きることのないモネの作品にまた出会えた。しかも国内外40館以上から集結した約70点すべてがモネの作品だ。東京・上野の森美術館で46万人を超す集客の巡回展。フランスには2度旅をし、2010年5月に再訪した目的の一つは、モネが晩年を過ごし、睡蓮を浮かべた庭のあるジヴェルニーのアトリエのある邸宅と、オランジュリー美術館の「睡蓮」シリーズの大作の展示室を見ることだった。その時の現地リポートも合わせ取り上げる。 〈睡蓮〉など「連作」に焦点“100%モネ“の作品

神秘と謎に満ちた古代エジプトを再訪 ピラミッド圧巻、ナイル川流域の古代遺跡も驚嘆

 エジプトの旅の続編で、2003年12月のシナイ半島訪問後、12年の時を経て2015年9月に再訪した。ギザのピラミッドから2キロの近くで建築中だった大エジプト博物館は、新型コロナウイルスの感染拡大で何度も延期され、2024年春に開館する。世界遺産のピラミッドの観光と、《ツタンカーメン王の黄金のマスク》を展示するエジプト考古学博物館の鑑賞は当然として、2度目の旅のハイライトは、クルーズによるナイル川の上流にあるルクソールやアスワン、アブ・シンベルなど古代エジプトの遺跡めぐりだっ

初めてのエジプトはモーセのシナイ山 敬虔なイスラム教国家に旧約聖書の世界

 7000年前、世界最初の文明を拓いた古代エジプト。悠久の歴史を持つエジプトへの関心は高く2度旅した。その魅力は、謎に満ちた巨大建築物のピラ ミッドだけではない。今回はシナイ半島を取り上げる。エジプトはスエズ運河を挟んでアフリカと中東に領土を有する。中東ではイスラエルとパレスチナのガザ地区に国境を接し、昨年末からの中東の戦乱ではガザへの救援物資が国境の検問所に運ばれていた。約20年前の2003年12月、モーセが十戒を授かったとされるシナイ山に登り、ご来光を仰いだ思い出が今も

名古屋市美のガウディとサグラダ・ファミリア展 世紀を超えた建設、見えてきた完成

 1882年の着工から142年が経過して今なお建設途中という、珍しい世界遺産「サグラダ・ファミリア」。世界が注目するこの建築物の全体で最も高いメインタワーである「イエスの塔」はガウディ没後100年の2026年に完成予定という。ようやく完成の道が見えてきたこの時期、名古屋市美術館で特別展「開館35周年記念 ガウディとサグラダ・ファミリア展」が3月10日まで開催中だ。東京国立近代美術館、滋賀の佐川美術館と巡回し、名古屋が日本での最終会場だ。筆者は2度、バルセロナを訪ねていて、その

「note」 連載の「私の出会った先達の人生訓」が、本になりました! 

短いようで長い人生、見知らぬ人との出会いは不思議だ。 本来なら接点がない人と偶然か、必然か交差する。 そして人生の一時期、懇親を重ねることになる。 そうした不思議な出会いの数々を綴った。    断捨離より大切な「終活」とは?  人生を豊かにした出会いの残夢整理――。『絆で紡いだ人間模様――私の出会った先達の人生訓』に綴った不思議な出会いの数々。新聞社を定年の著者が、生きることの喜びを伝える。  『絆で紡いだ人間模様――私の出会った先達の人生訓』には、文化勲章受章者3氏をはじ

かつて日本の統治下、“有事”懸念の台湾今や世界トップの半導体、観光新名所も次々

 近年、気になるニュースに“台湾有事”がある。中国政府は、台湾はもともと中国の領土だとして、必ず統一すると主張してきた。中国が軍備増強を図り国力をつけるなか、軍事力を使ってでも台湾を統一するという構えを見せるようになっている。これに対し、アメリカは「中国が台湾に侵攻したらアメリカは軍事的に対応する」とする考え示し、平和的な関係を望む日本も、その立ち位置が問われている。台湾は、かつて日本統治下にありながらも親日的だ。中国大陸から分かれ、政治や行政、経済も独自路線を貫き、アジアの

日本と古くから歴史の交流、芸術と文化のオランダ 数多くの名画を遺し、37歳で自殺した薄幸のゴッホ

 オランダは、江戸・徳川幕府の鎖国時代も長崎湾に浮かぶ扇型の人工島“出島”を通じて、唯一交易を続けた国だ。西洋の様々な物品だけでなく蘭学が普及し、オランダは“新しい世界への窓”となった。歴史的に、鉄砲やキリスト教伝来のポルトガル同様に、関心を寄せていた。すでに4半世紀も前になったが、2000年8月、旅行社が企画した「名画と古都」のツアーに出かけた。 1987年に安田火災海上保険(現・損保保険ジャパン)が、ゴッホの代表作《ひまわり》(1888年)を53億円で落札して世間の耳目

アンサンブル金沢を創設した岩城宏之さん「おらが街のオケ」、世界をめざし大きな足跡

 人生の出会いは不思議だ。まさに偶然の積み重ねでもある。美術はともかく音楽には、それほどの関心もなく、ましてクラシックの音楽会など縁遠かった私は、新聞社の異動で音楽と大いに関わりを持つことになるとは…。オーケストラ・アンサンブル金沢(以下OEK)を創設した岩城宏之さんに初 めてお会いしたのは、朝日新聞金沢支局長に着任した1991年春に遡る。当時、朝日系列の北陸朝日放送が開局し、メディアミックスによる各種イベントに奔走することになった。開局して間のないテレビ局にとって、3年目

大航海時代の残影、ポルトガルを初訪問華麗な装飾の修道院や独自の文化的建造物の数々

 ポルトガルへの旅は、私にとって56ヵ国目とはいえ、いつか訪ねるであろうと確信していた。幼い頃学んだ鉄砲やキリスト教伝来の歴史の記憶や、7年前に隣国のスペインを旅していて「次は」との思いもあった。15~17世紀、未知の世界に勇躍し一大海洋国家を築いた大航海時代の輝かしい歴史の残影と、華麗な装飾の修道院が点在し、独自の文化的建造物や景観は、大いに好奇心を満たしてくれた。加えてキリスト教の三大聖地とされるスペインの「サンティアゴ・デ・コンポステラ」に足を延ばせたことも有意義であっ

壮大な挑戦、進化し続ける美術家の蔡國強さん「戦争と破壊」や「平和と再生」などをテーマに芸術表現

 私が4半世紀前に出会ったアーティストの一人、蔡國強(さい・こっきょう、ツァイ・グオチャン)さんは、今や現代アートの世界的なトップスター になった。国立新美術館とサンローランは、6月29日から8月21日まで、「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」を開催。日本では8年ぶりの 大規模な個展だ。朝日新聞社時代、広島と神戸で実施された蔡プロジェクトに関わった私は、その後の海外展示を含め着目してきた。壮大な挑戦をし、進化し続ける蔡さんの芸術と人生についてリポートする。 火薬