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なぜ学校をドロップアウトしてしまう難民の子どもたちがいるのか

ヨルダンでの活動も1年と9ヶ月が過ぎたが、特に2年目の今は、活動先のパレスチナ難民キャンプの実態についての話を聞く機会にたくさん恵まれた。

その中でも、学校をドロップアウト(退学)してしまう子どもたちについて。

そもそも、キャンプ内で活動する中では、肌感覚として教育熱心な母親たちの姿をたくさん見てきた。

幼稚園児の母でさえ、まだ5歳児の娘がどうしたら英語のアルファベットが覚えられるようになるのかを私に相談してくることもあったし、母である園長先生の息子が毎日のように幼稚園にやってきては、息子に教科書を開かせて、学習を見る姿をよく見てきた。

このような教育に対する保護者の熱心さも相まって、ここのキャンプにおいては、実際にドロップアウトする子どもたちの数はそれほど多くないらしい。

小学校では、片手で数えられるほど。
中学校では、少し増えるそう。

活動先の難民キャンプでは、UNRWA(国際連合パレスチナ難民救済事業機関)が管理する学校が、男子小中学校と、女子小中学校が1つずつある。

その、男子小学校と女子小学校の校長先生に、ドロップアウトをしてしまう子どもたちの実態について話を聞かせてもらった。


原因①:低学力 〜親が読み書きできず、親が子どもの学習を見れない〜

貧困などの理由で、若いうちに結婚した母親の中には、読み書きができない女性も存在している。

実際に難民キャンプに住む女性約100人にアンケートをした際には、10%(つまり10人)の女性の学歴が、小学校または小学校中退であった。

アンケートの記入をお願いする際にも、「字が読めないの」と言う女性も数名いた。(その方々には口頭で質問した)

UNRWAの学校では、小学校と中学校が、午前と午後に分かれている2部制が一般的だ。

ある月では、午前中に小学生が登校し、午後には、同じ学校の同じ教室に中学生が登校する。

翌月は、午前が中学生、午後が小学生というように、毎月シフトが入れ替わる。

そのため、子どもたちが学校に滞在する時間は毎日4〜5時間と短く、家庭での学習が何よりも大切になってくる。

1クラスの人数は40〜50人と多く、授業はどんどん進んでいく。
また、子どもに家庭教師をつける余裕がある家庭も少ない。

そのような状況なので、親、特に母親が子どもの勉強を見ることができないのは、子どもの学力にとって致命的である。

親の低学力は、子どもにも影響してしまう。
そんな負のスパイラルが起きてしまっている。


原因②:親が教育の重要性を理解していない

教育熱心な親が多いということは書いたが、中には親が教育の重要性を理解しておらず、女の子であれば、「可愛ければ良い」「16歳になったら結婚させれば良い」と考えている親も存在する。

そのような考え方の親のもとでは、小学生でありながら、学校に通わせることよりも、家の手伝いをさせたり、生まれたばかりの赤ん坊(弟か妹)の世話をさせるなどして、なかなか継続的に学校に通いにくい家庭環境があるという。

男の子であれば、学校に通わず、親と一緒に道路で野菜を売ったりするなど、親の仕事の手伝いをさせられている場合もある。


さまざまな解決策

このようにドロップアウトしそうな子どもや、実際にドロップアウトしてしまった子どもに対して、さまざまな対策が行われていることも聞いた。

ドロップアウトしそうな子どもに対しては、その親に学校に来てもらったり、児童保護の専門スタッフが家庭訪問するなどして、子どもに学校を通わせるように説得している。

また、ドロップアウトしてしまった子どもたちに対しては、女性プログラムセンターで美容訓練などの職業訓練に通わせたり、同じ難民キャンプの公立高校では、ドロップアウトした子どもたちを集めたクラスを運営している。



日々難民キャンプで活動する中で、教育の重要性、ひいては幼児教育の重要性をひしひしと感じている。

幼稚園で、「椅子に座って話を聞く」「友だちとコミュニケーションを取る」「文字を書く」が出来ないまま卒園した子どもたちは、小学校低学年で読み書きが身に付かず、その後の学習が積み上がっていかない。

この前も、去年卒園して今小学校に通っているムハンマドくん(仮)のお母さんが「息子が学校に行きたがらない。どうしたら良いの?」と私に泣きながら訴えてきた。

私にできることはあまりにもちっぽけなもので、そのお母さんの泣きながらの訴えに大したことは何も言えなかったことが心に残っている。

全ての子どもたちが教育が受けられる世の中になりますように。






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