見出し画像

コロナにより経営が不安となった企業がとる自力再生以外の対策とは?

コロナウイルスの影響により、経営不安が深刻化して経営者は存続判断を迫られています。

コロナ関連の倒産や事業休止が増える中、自力での再建に不安を感じている経営者がとる方法の一つが、事業承継です。事業承継を適切に行い、他の企業と連携を図ることで、自力再建では実現できなかった新しい道が拓けることがあります。このコラムでは、コロナ禍の経営不安で自力再生が厳しい経営者に向けた対策、事業承継について解説します。コロナにより先行き不安を感じておられる中小企業の経営者のみなさんに参考となれば幸いです。

コロナ関連倒産の現状

コロナウイルスの影響を受けての倒産は、2021年7月21日時点で発生累計が1788件となっています(帝国データバンク調べ)。コロナ関連倒産では、「破産整理」が1554件と発生件数全体の86%を占めているのが現状です。
とくに、テレワークや外出自粛に対応できない業種である飲食店や建設業、宿泊業の倒産は多くなっています。倒産に追い込まれた企業は、もともと経営状況が悪化している中で、コロナが決め手となるケースも少なくありません。さらに、飲食店や宿泊業の倒産は、食品卸や観光業への連鎖が避けられない状況です。

参照元:帝国データバンク https://www.tdb.co.jp/tosan/covid19/index.html

コロナ禍の経営不安の正体

コロナ禍で業績が悪化した企業の経営者は、以下のような不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。

● 取引先企業の影響を受けた“連鎖倒産”を避けられるだろうか。
● 事業存続のために自力再生ができるだろうか。
● 以前のように売上が戻ったとしても、コロナで受けた融資は自力で完済できるのだろうか。

いずれにしても、不確実性の高いコロナウイルスの流行は、先行き不透明感を生み、事業における中長期的な見通しをたてづらくなっています。その中で、足もとの売上も低迷し運転資金の工面さえままならない状態で、経営を続けていくのは経済的にも精神的にも大きな困難を伴います。


コロナ禍の経営不安への対処-事業承継

コロナウイルスの経営不安を回避する対策として、政府では世代交代の事業承継を推進しています。事業を引き継ぐ後継者がいれば税制上の優遇措置が受けられます。しかし、事業承継において、すでに後継者が決まっている企業は少ないのではないでしょうか。後継者不在の場合、親族内承継、従業員承継、第三者承継など幾つかの方法がありますが、親族内承継、従業員承継は人材の選定や資金の準備などに時間がかかることも多くあります。短期で検討できる処方箋という観点では、第三者承継を選択する必要があります。

参照元:帝国データバンク https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p210605.html


コロナ禍の経営不安対処-第三者承継

第三者承継は、事業承継の方法の一つです。現状の企業経営者が後継者不在のため、第三者に経営権を譲る方法になります。

第三者承継は、次のような状況下において効果的です。

● 後継者がいない
● コロナによる収益獲得ができない
● 金融機関からの資金調達ができない


事業承継や第三者承継には補助金も適用されるものもあります。
中小企業庁より令和2年度第3次補正予算「事業承継・引継ぎ補助金」の公募が開始されています。事業承継による補助金は400万円~800万円を上限とする規模です。

本補助金は“事業承継やM&A(事業再編・事業統合等。経営資源を引き継いで行う創業を含む。)を契機とした経営革新等(事業再構築、設備投資、販路開拓等)への挑戦に要する費用”とされており、事業承継やM&A(第三者承継)にかかる費用の一部を補助するものとなります。

参照元:中小企業庁 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2021/210702shoukei.html


第三者承継のメリット

● 後継者問題から解放される
● 旧社名を残して事業を継続できる
● 買い手と売り手のシナジーが期待できる
● 雇用の継続ができる
● 取引先や仕入れ先との関係性を続けられる
● 譲渡代金を受け取れる
● 後継者問題からの解放

後継者問題は、少子高齢化の進む我が国の大きな課題です。子供がいないご家庭はもちろん、なんらかの事情で子供に経営のバトンを渡せない状況など、親族内承継がスムーズに行えないケースも多くあります。事業承継において、第三者承継の取り組みは今後ますます標準化していくでしょう。

経営に第三者的視点がはいることなど、副次的メリットも大きいです。

旧社名を残した事業継続
事業承継後も旧社名を残した事業継続が可能な場合もあります。

コロナの影響がなければ経営が順調だった企業の場合は、旧社名を残した承継では、取引先や仕入れ先の信用につながることが考えられます。事業自体がまったく新しい発想となる場合は、旧社名を残さないケースもあるでしょう。社名に関しては、事業状況により判断が左右されます。

買い手と売り手のシナジー効果
買い手が売り手の事業を引き継ぐことで、買い手が既存に持っていた事業や経営資源と、売り手から引き継いだ事業やノウハウ・経営資源を組み合わせることで相乗(シナジー)効果が発生することが考えられます。シナジー効果は、売り手・買い手双方の事業にプラスになることが多く、事業の停滞によって引き継ぎを決めた売り手の事業が、シナジー効果によって再生する事例などもあります。

事業承継先を選ぶ際のポイントとしてシナジー効果は重要です。

雇用継続
事業承継をせずに廃業を選択した場合、雇用している従業員は原則解雇となります。事業承継で事業や会社を残すことを選択した場合には、買い手の方針にもよりますが、従業員の雇用を継続できる可能性が拓けます。通例、事業承継をした買い手も、引き継ぎ後の事業を滞りなく運営するために従業員を継続雇用するケースが多く見られます。

取引先や仕入れ先との取引継続
売り手の取引先や仕入先は重要な経営資源になりますので、事業承継の際には、取引先や仕入れ先との取引継続を買い手から望まれることが多いです。事業継続により、従来の取引を継続できれば連鎖倒産の防止にも役立つでしょう。

譲渡代金
事業の売り手経営者には、会社(株式)や事業の譲渡代金が入ります。その他、退職金等が支給される場合もあります。

株式譲渡代金や退職金等は税制の観点からも役員報酬や給与所得より優遇されていますので、ある程度まとまった資金を手元に残すことができる可能性は高まります。

コロナ禍の経営不安の対策まとめ

コロナ前と同様の経営においては、急激な環境変化に伴う一時的な手当てができたとしても、負債の増加など、経営に対する悪影響は免れません。中長期的に考えれば尚更のことです。見通しのつかない不安もある中で、環境変化への対応を実行しなければいけません。

独立独歩での事業回復以外の選択肢として、第三者承継を活用した事業承継も有用な選択肢の1つとなりえます。事業上の相乗効果や、資本力や経営資源の豊かな企業とタッグを組んで業績の回復や再成長を志向するのもアフターコロナの新しい手法と言えるでしょう。

このコラムで紹介した事業承継のメリットと一致する部分があれば、前向きに検討してみてもよいかもしれません。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?