誰にでも怒鳴りつける『馬鹿ヤロー』おじさんに『おはよう』と言われた終戦の日
娘を保育園に連れていく途中の道に、変わったおじいちゃんが住んでいる。
毎朝道路沿いに仁王立ちして待ち構え、
自転車に乗っている人を見かけるとかならず
「バカヤロー!危ねぇじゃねーか!」
と怒鳴り散らす。
まぁまぁ尖ったおじいちゃんだ。
スマホを見ながら危険な運転をしている人がいれば当然
「バカヤロー!危ねぇじゃねーか!」
だいぶ安全運転をしている華奢な女子が通ってもやはり
「バカヤロー!危ねぇじゃねーか!」
過去に自転車にぶつかられた経験でもあるのだろうか。
おじいさんなんだけど、娘との呼び名は「馬鹿ヤローおじさん」である。
ぼくは運良く(残念ながら?)他の人が怒鳴られているタイミングだったりして「馬鹿ヤローおじさん」に一度もご指導いただいたことがなかった。
が、先日、ついにその日がやってきた。
タイミングは、ドンピシャ。
他に誰もいない。
怒鳴られるための絶好の環境が整っているではないか!キター!
「バカヤロー!危ねぇじゃねーか!」
予想に違わず、それは飛んできた。
「おはようございま〜す!」
ぼくはそう返そうと決めていた。
「おはよう。」
え?
正直、ちょびっと涙が出たような気がする。たぶん。
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その日は娘を保育園に連れて行った後だったので、お迎えのときにその話をした。
「ねえパパ!それはほんものの魔法だよ!」
子供の言葉は、ときどき心に直接触れてくる。
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そして、おじいちゃんの戦いは終わった。
翌日から、朝の待ち伏せ馬鹿ヤローキャンペーンが無くなったのだ。
ちょっと寂しくもあるけれど、おじいちゃんが自分で決めた終戦。
おじいちゃんの中で何かが解決したのだろうか。
あれから、街のどこかでたまに見かけるが、穏やかな顔をしている。
ぼくにとって愛すべき光景がひとつ消えてしまったわけだが、
おじいちゃんにとってあの数年?数十年?はなんだったのだろうか。
そして、あの「おはよう」の瞬間、どんな気持ちだったのだろう。
たぶん、今日もおじいちゃんはこの街のどこかで生きている。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
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