緑黄色社会と全力老人
若いとはどういうことか、というと「すぐに答えを出したがる」「自分の好き嫌いを信用する」「権威に反発したがる」などがあがる。
年齢を重ねると「いそいで出した答えはさほど良い結果をもたらさない」「自分の好き嫌いは刻々と変化する」「権威に反発したいのならそれなりの知恵をもて」などがわかってくるので、結果、なんだか優柔不断で、好き嫌いのはっきりしない日和見の老人ができあがる。
日和見の老人が先日コンサートのチケットをどこかに落とした。スキマスィッチをはじめとして小田和正・東京スカパラダイスオーケストラ・ゆず・スピッツ・JUJU・奥田民生・緑黄色社会などなど、なんだかスゴイメンバーが集うコンサートのチケットである。
日和見の老人は、つまりわたしのことだが、わたしは某ファミリーマートでチケットを発券し、それをプラスチックのA4ケースに入れて意気揚々と帰宅したのだが、夜になりビールを二本飲んですっかり気分がよくなったところで、はて、チケットを入れたケースが見当たらないことに気づいたのだった。
あれこれ探したがどこにも見当たらない。配偶者、夫、要は旦那さんに「知らんか?」と聞くと「知らん」という。
2日間通しのチケット1人30000円×2人分合計60000円の紛失である。いっきに酒が抜ける。ないない。ふだんから散らかっている部屋をじたばた探すがどこにもない。旦那の目が座っている。「なにやってんの?」とかれは言いたくてたまらないのだ。わたしも思う。いったいわたしは何をやっている?60の婆さん野外コンサートのチケット60000円相当を落としひとり顔面蒼白。
すごすごと警察署に向かった。どこかで落としてしまったとしたら、誰かが、奇跡のように親切な誰かがそれをポリスステーションに届けてくれている可能性だって、今の日本であれば、まだ数パーセントくらいは残っているかもしれない。
「チケットを落としました」
「チケット?なんのチケットですか?」
「音楽のチケット、スキマスィッチのチケットです」
「どんな特徴のチケットですか?」
「ファミリーマートの封筒に入っています」
「封筒は茶色ですか?」
「ファミリーマートの封筒ですから緑です」
「ほかにどんな特徴がありますか?」
「はあ。紙で出来ています」
「紙ですね。形は?」
「はぁ。しかく、です」
「しかく。長方形ですね?」
「そうです長方形です。丸や三角ではありません」
「チケットにはなにか書いてありますか?」
「なにかとは?」
「誰のチケットとか、書いてありますか?」
「はぁ。スキマスィッチとかいろいろと書いてあります」
仕事熱心なおまわりさんである。世の中には木やプラスチックで出来ているチケットももしかしたら存在するかもしれないからね。
そうこうするうちに旦那から電話が入った。
「チケットあったよ」
「え?」
「あったよ」
「どこに」
「下駄箱の上」
そういうわけで今週末、自分は旦那とふたりでスキマスィッチwithジャパニーズメジャーアーティストたちの音楽を聴きに中部地方へ向かう。東京スカパラダイスオーケストラと緑黄色社会が来るのだ、と若い卓球コーチに威張ろうとしたら緑黄色社会を緑黄色野菜と言い間違えた。老婆である。オフコースは知っているが緑黄色社会の音楽には馴染みがない。これからSpotifyで予習する。
バイデンは全力老人なのだろうか?アメリカ合衆国がどうなろうが自分には関係はないやとは決して言えない。日本人の哀しさである。
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