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渋沢栄一の「論語と算盤」 正義を断行する勇気と精神老衰の予防法

渋沢栄一は明治時代に多くの会社の設立・経営に携わり、2021年にはNHKの大河ドラマの主人公になり、2024年には1万円札の肖像に採用される「日本の実業界の父」と言える人物です。

その渋沢栄一は実業だけでなく論語もたしなみ、「論語と算盤」という書を出しており、渋沢栄一とともに早晩ブームになることでしょう。この本の読み方はいろいろあると思いますが、敬老の日の今日(2020年9月21日)にちなんだ内容を紹介します。

論語と算盤の「立志と学問」という章の中に「精神老衰の予防法」という項があります。渋沢はこう言います。

「近頃は青年青年といって、青年説が大変に多い。青年が大事だ(略)というは、私も同意するが、(略)青年も大事であるけれども、老年もまた大切であると思う。(略)自分では文明の老人のつもりであるが、(略)文明の老人たるには、身体はたとい衰弱するとしても、精神が衰弱せぬようにしたい。精神を衰弱せぬようにするには、学問による外はない

渋沢は青年を批判している訳ではありません。むしろ、青年を鼓舞しています。
青年時代に正義のため失敗を恐れておるようでは、到底見込みのない者で、自分が正義と信ずる限りは、あくまで進取的に剛健なる行為を取って貰いたい。正義の観念をもって進み、岩おも徹す鉄石心を傾倒すれば、ならざることなし、という意気込みで進まねばならぬ

続く「勇猛心の養成法」の項ではこう言います。

正義を断行する勇気は如何にして養うかと言えば、平生より注意して、まず肉体上の鍛錬をせねばならぬ

勇気の修養には、肉体上の修養とともに、内省的の修養に注意せねばならぬ。読書の上において、古来勇者の言行に私淑して感化をうけるもよし(略)。」

そして次のようにも言います。
品性の劣等なるものは勇気にあらずして、自然野卑凶暴となり、かえって社会に害毒を流し、遂には一身を滅亡するに到るものであるから、この点はよくよく注意し、平生の修養を怠ってはならぬ

人生100年時代の今、肉体と内省を鍛錬していつまでも正義を断行する青年でありつつ、精神が衰弱せぬように文明の老人でありたいと思います。


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