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Kindleで無料で読む 源氏物語

源氏物語。そのボリュームを前にどうせ買っても挫折するだけだろう、積ん読になってしまうだろうと思い、読まない言い訳にしてきた感がありましたが、Kindleで無料でダウンロードすることができる訳本を見つけました。

原文に取り組んでも途中でギブアップするので、与謝野晶子の訳なら分かりやすいだろう、しかも無料ということでダウンロードしました。

源氏物語については、高校の頃に音読した更級日記の冒頭に、

「あつま路の道のはてよりも、なお奥つ方に生い出でたる人、 いかばかりかはあやしかりけむを、いかに思ひ始めけることにか、 世の中に物語といふ物のあんなるを、いかで見ばやとおもひつつ、 つれづれなる昼間、宵居などに、姉・継母などやうの人々の、 その物語、かの物語、光源氏のあるやうなど、 ところどころ語るを聞くに、いとどゆかしさまされど、 わが思ふままに、そらにいかでかおぼえ語らむ。
いみじく心もとなきままに、等身に薬師仏をつくりて、 手洗ひなどして、人まにみそかに入りつつ、「京にとくあげ給て、物語の多く候ふなる、あるかぎり見せ給へ」と、身を捨てて額をつき、祈り申すほどに、十三になる年、 のぼらむとて、九月三日門出して、いまたちといふ所に移る」

とあり、更級日記の作者がそれほどまでに読みたい物語とはどのようなものだろうか、と気になっていました。

また、アート鑑賞の対象が西洋画から日本画へ広がり、室内調度品である屏風を装飾するために和歌の紙片をそこに貼ったりしていることから、和歌や古典に対して関心が強くなっていました。

こうしたなか、Kindleの無料本を見つけました。

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訳本とはいえ、54帖もある大作です。1日1帖を目標にしましたが、登場人物が多く、人間関係も複雑で、読み進めるうちに何の話しだったか分からなくなってきました。

そこで、解説本を購入し参考書として併せて読み進めることにしました。
源氏物語に関する本は多数ありますが、岩波新書の青版が電子書籍化されていましたので購入しました。

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源氏物語は、主人公である若い光源氏の雅なそして艶のある女性関係を綴った物語というイメージがありました。そのような面はありますが、光源氏が壮年になり、老いていく頃や没後の帖の方に共感を感じ読みふけってしまいます。若い頃に読んでいたら後半は興味が湧かず最後まで読まなかったことでしょう。

源氏物語を読むのと併行して、谷崎潤一郎の細雪もkindleで無料ダウンロードして読み始めました。こちらの方は上巻しかなく、結局有料で購入することになりました。谷崎も訳に取り組んでおり、その代表作の細雪を読んでみようと思ったからです。

こちらも長編で、併行して読むには時間がかかりましたが、谷崎は「細雪」の回顧として、次のように書いています。

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「『細雪』には源氏物語の影響があるのではないかと云うことをよく人に聞かれるが、それは作者には判らぬことで第三者の判定に待つより仕方がない。しかし源氏は好きで若いときから読んだものではあるし、特に長年かかって現代誤訳をやった後でもあるから、この小説を書きながらも私の頭の中にあったことだけはたしかである。だから作者として特に源氏を模したと云うことはなくても、いろいろの点で影響を受けたと云えないことはないであろう」

細雪は4人姉妹の戦争前の生活を描いたもので、当時の厳格な男女関係が分かりますが、源氏物語の描く緩い男女関係とは大違いです。谷崎は源氏物語のどこが好きだったのか興味が湧いてきます。

源氏物語には多くの和歌があります。男女の物語ですから、当時のコミュニケーション手段だった和歌が登場するのは当然でしょうが、すべて紫式部が作ったものです。また、当時の男性貴族が昇進するには漢学の知識が必須でしたが、紫式部は漢学の知識も豊富だったことが分かります。

後半部分にさしかかることにころに、とても参考になる新書が発売されました。これを辞書代わりにすることで、挫折することなく読了することができました。

源氏物語は有名すぎるほど有名ですが、読み終えてみるとその後の日本の藝術に大きな影響を与えることがよく分かりました。例えば、直接的には「源氏物語絵巻」がありますが、後世の歌人が源氏物語の場面を引用した和歌を作り、それを本歌取りしてみたり、さらにそれを絵画のモチーフにしたり。

訳本とはいえ読み進めるにはかなり難渋しましたが、源氏物語は日本画、美術、美学に大きな影響を与えていることを感じました。

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紫式部 全訳 源氏物語 与謝野晶子訳 青空文庫版全巻セット
更科日記 原岡文子訳注 角川ソフィア文庫
細雪(上中下完全版) 谷崎潤一郎 古典教養文庫
源氏物語(電子書籍版) 秋山虔 岩波新書(青版)
源氏物語を読む 高木和子 岩波新書
百人一首 大岡信 講談社文庫


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