婆ちゃんの愛 〜女パチプロの手記〜 ①終
その日私はハマっていた。
三共の、確率1/180の台。
開店からいきなり千回ハマりである。
甘デジコーナーでの千回ハマりは非常に目立ち、後ろにギャラリーが出来てしまった。
現金投資中なのは痛いが、一日打っていればこんなハマりは想定内。
平均28回も回っているのだ。
4万円近く入っているが、ヤメるわけにはいかない。
この店では1箱およそ4千円になる。
元を取るには10箱必要だ。
普通、甘デジコーナーで10箱出すのは難しい。
しかし、私は知っている。
この台が甘デジではないことを。
確率だけを見て1/100~1/250の台を甘デジコーナーに置く店は多い。
だがこの機種、実は出玉性能はミドルと変わらないのである。
絶対にプラスにできる。
私は確信していた。
程なくしてようやく当たり、3連チャン、下1箱。
大爆発が見られると思ってワクワクしていたギャラリーはガッカリして散っていった。
大ハマりしている台は反動で大連チャンするのでは、と期待する一般客は多い。
しかし裏モノでない限り、そんな事は起こらない。
ハマっていようがいまいが完全確率。当たり方に特に変化は無い。
ふ~、やっと静かに打てる。
そこへひとりの婆ちゃんがやってきた。
「いくら入れたんだい」
え?
えっと、4万ぐらい。
「もうヤメときな」
いやまだやっとこれから……。
困惑している私に婆ちゃんは厳しく、そして優しく言った。
「その1箱飲ましたら帰んな。そしてもう二度と、4万円も入れるんじゃないよ」
婆ちゃんは去っていった。
1箱飲ましたら帰んな、か……。
それは無理だな。
閉店までまだ充分時間はある。
全部飲まれても、まだまだ追加投資出来る計算だ。
でも絶対プラスにしてみせるよ!
なんとか1箱以内に次の当たりを引き、出玉は増えていった。
下5箱ぐらいになった時、また婆ちゃんが来た。
「それ以上は出ないよ」
いやいやいや。
「元取ろうなんて考えるから失敗するんだ。アタシゃ何人も見てきたんだよ」
……婆ちゃん……。
「わかったね。アタシゃもう帰るよ。アンタも暗くならないうちにお帰り」
……。
……ありがとう、婆ちゃん。
本当に心配してくれてるんだ。
でも、ごめん!
アタシは続けるよ!
結果、26箱出て無事プラスに。
ありがと。
またね!婆ちゃん。
おしまい
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