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中国の子供生活調査レポート【4】遊び事情 ~ゲーム規制、STEM教育による変化~

日本のお正月と言えば、「凧あげて、独楽を回して遊びましょう~♪」という童謡のイメージでしょうか。皆さんは子供の頃どんな遊びをしていましたか?今回は中国の子供たちの遊びについて、マクロミルで実施した調査結果を交えながらお伝えします。

調査方法:インターネット調査 
調査地域:上海
回答者数:幼稚園児/小学生の子供を持つ母親1200名
調査時期:2021年3月 

中国の子供は一人で遊んでいる

第三回目の「果てしない受験戦争、それは幼稚園から始まる」でお伝えしたように、中国の子供は勉強や習い事で忙しい生活を送っています。では、どのように遊んでいるのでしょうか。まず遊び相手をみると、学齢に関係なく「一人」で遊ぶことが最も多く、続いて「両親」が続きますが、「友達」と遊ぶことは少ないのです。友達との予定がなかなか合わないのでしょう。一人遊びは、子供が自分自身の内面世界を広げるためには大切ですが、ちょっぴり可哀そうですね。

学齢に関係なく、「一人」で遊んでいる

一人遊びに欠かせない相棒は玩具

一人で遊ぶとなると屋内になりがちで、そうなると相棒はおもちゃ=玩具となります。

マクロミルの調査では、玩具の購入者は主に両親で祖父母が続きます。直近1年以内に購入した玩具の上位は、男児向けは「積み木」、「ラジコン」、「アニメ人形・フィギュア」で、女児向けは「ぬいぐるみ」、「積み木」、「ままごと道具」があがりました。玩具を買う時は、正月やクリスマスを差し置いて「パフォーマンスがよい時」が一番。親たちは、子供の学習意欲向上の手段としてご褒美的に玩具を購入しているようですね。

購入玩具ジャンル ※直近1年以内(男女別)

男児は「積み木」「ラジコン」「アニメ人形・フィギュア」、
女児は「ぬいぐるみ」「積み木」「ままごと玩具」がTOP3

玩具購入タイミング(学齢別)

玩具は、学齢によらず「パフォーマンスがよい時」に最も購入されている

玩具に関する情報は、ライブコマース、ECサイト、口コミ、動画サイトなどのオンラインや、玩具専門店から入手して、中国のECサイト市場でシェア上位の「Tmall」や「京東」、玩具ブランド専門店で購入しています。
また今回の調査結果によると購入時には、材料や設計などの「安全性」、「コスパ」、「年齢との適合」を意識していて、特に材料に対する不安が大きいためか「玩具の臭い」をチェックしたりします。

玩具選びの決め手は「IP」

数多ある玩具から特定のものを選ぶときに頼りにするのはブランド。そのブランド選択に大きく影響しているのが「IP」です。IP(Intellectual Properties)とは知的財産のことですが、 玩具やエンタテインメント分野では、アニメ・映像、ゲーム、キャラクター、楽曲などが複合して出来上がった独自の「世界観」として受け止められています。その中心が「アニメ」。あるアニメが好きになって、それがきっかけでキャラクターの玩具を買うという流れです。 

かつての中国は、日本をはじめ、海外のアニメがTV放映されて大人気でしたが、現在は放映が規制されています。中国産のアニメ育成のためで、その効果は着実に表れています。今回の調査では、2012年に登場した「熊出没」という中国系IPが人気No.1でした。一方で、日本の「ウルトラマン」、「クレヨンしんちゃん」「ちびまる子ちゃん」も上位にあがっており、これら日系IPは根強い人気を保っています。また昨年2021年、日本アニメとしては十数年ぶりになりますが、「はたらく細胞(工作細胞)」がCCTV(中国中央電視台)で放映され話題になりました。

技術革新がもたらすメディア接触の変化

では、子供たちはこれらのIPにどのように触れているのでしょうか?
中国では電子デバイスの利用が日本よりも各段に進んでいます。小学校からは、学校の宿題や塾の授業がオンラインで行われることが多く、ほぼ全員がタブレットや親の携帯を使っています。そこからインターネットに接続すればすぐに様々なコンテンツが視聴できるのです。

また、液晶TVも放送番組を見るためのだけのものではなく、アプリの入り口でもあります。電源を入れると、インターネットに接続されたテレビの画面上に複数のアプリが表示され、リモコン操作で簡単にコンテンツを大画面で楽しめるのです。日本でもテレビのネット接続率が41%まで伸びていますが(2021年11月マクロミル調べ)、中国でも伸長しており、放送コンテンツを制作する上海日欣文化伝媒有限公司によると、上海でのTVチャンネル数はなんと400以上。それに加えて液晶TVを通じて接触できるIPがこの4・5年で爆発的に増加しているのです。そうなると、小さな子供にとっては一体全体何を見ればよいのかわからないので、親がコンテンツを選ぶことになるわけです。

液晶TVの画面上には沢山のアプリが・・・(上海日欣文化伝媒有限公司提供)

親としてもここまで選択肢が多ければ自分自身で検索するのではなく、他人の推奨に頼る人もいます。結果として各家庭の子供がどのIPに接触するのか次第で、玩具の選択や遊び方は変わってきます。

ゲームは週末だけ、1日1時間のみ!STEM教育が変える「遊び」の未来

さらに国家の政策も「遊び」に影響します。当局は今年8月、「ゲーム依存症」を予防するため18歳未満のオンラインゲーム利用を金、土、日曜と祝日の午後8~9時のみに制限するとしました。

一方で、中国は国をあげてAI時代に活躍する人材の育成に取り組んでいます。中でも注力するのが、STEM教育。「S=Science(科学)」「T=Technology(技術)」「E=Engineering(工学)」「M=Mathematics(数学)」の頭文字からなる教育手法です(ここにArt<芸術>を加えた「STEAM教育」も)。タブレットなどデジタル端末でのオンライン学習に抵抗のない子供が多く、急速に定着しつつあります。 

ゲームを規制したり、詰め込み偏重型の教育を見直し、代わりに文化・芸術活動やスポーツ、ボランティアなどを奨励したりする動き。その流れの中で今後重要になってくるテーマは「知育」でしょう。すなわち、創造性と想像力、探求心や好奇心、自発性、判断力や問題解決力、などの総合力をこれからの子供たちは求められていきます。

世界的なIPは「知育」を意識して、モノ=玩具を超えた独自の「体験」を提供する動きを加速させています。社会の変化とともに「遊び」の文脈が変わっていく。激変する中国、「遊び」の変化にも目が離せませんね。

次回は、「子供の食」についてお話しします。お楽しみに!

~ 付録:ご参考画像 ~ 
撮影協力:マクロミル上海法人の現地社員

実例1:保有している玩具(男の子・3年生)

実例2:保有している玩具(女の子・幼稚園中)

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・・・【付録】皆様の調査や研究のご参考情報としてご活用ください・・・

”激変するアジア。2022年も変化の兆しを探し続けます。”
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