「細部で差がつくブランディングをより身近でサポートしたい」M&Aクラウド×投資家対談 NORTH AND SOUTH 北尾氏&南坊氏
こんにちは、「UPDATE M&Aクラウド」編集部のみょんです。
M&Aクラウドは10月末に、約10億円の資金調達を発表しました。これを受けて11月は、今回出資いただいた7社の皆さんに、当社CEO及川が出資決定の背景や今後の期待などを聞く対談シリーズをお送りしています。
最終回に登場いただくのは、株式会社NORTH AND SOUTHのFounder/Creative Director 北尾 昌大氏(写真右)とFounder/Marketing Director 南坊 泰司氏(同左)。M&Aクラウドのマーケティングやブランディング全般をサポートいただいており、実はこの投資家対談シリーズも、NORTH AND SOUTHさんのアイディアから生まれたものです。
対談では、クリエーティブとマーケティングの会社があえて投資を決めた背景から始まり、M&Aクラウドとのこれまでの関わり、調達後のステージで求められるブランディングのあり方などが話題に上り、当社のPR戦略大解剖ともいえる内容になりました。ぜひご一読ください!
ブランディングの神は、企業活動の細部に宿る。だから、並走できる関係を
――及川さんとお二人との関わりはいつからですか?
及川 北尾さんとは、まだNORTH AND SOUTHを設立される前、インキュベイトファンドに在籍されていたときにお会いしました。「電通出身の北尾さんという人が入ったから、クリエーティブの相談をしてみたら」と、当社担当の本間さんから勧めてもらったのがきっかけです。確か30分くらいのショートミーティングをちょこちょこやったんですが、その30分で出るアウトプットに、僕は当時感動しまして。自分では絶対に思いつかない発想とか言葉がポンポン出てきて、「これがプロというものか」と。
北尾 そのころ、そうやっていろいろな投資先を訪問しては、その場で課題や悩みをヒアリングし、打ち返すというサポートをよくやってました。及川さんとは、確かプロダクトのファーストビューについて相談を受け、タグラインとメインビジュアルを変えたのが最初ですね。
――今のトップページに変わったときですね? ぐっと洗練された雰囲気になり、私も感動しました。そうすると、北尾さんは電通からインキュベイトファンドに移られたのですか?
北尾 電通でずっと広告のクリエーティブをやっていた中で、広告代理店では自分の仕事に対して責任範囲が狭いというフラストレーションを抱えていました。クライアントとの関係性が薄いというか、たとえば担当したキャンペーンが失敗しても、「失敗しちゃいました、すみません」で済んでしまうし、逆に大成功させたときも、「ありがとう」で終わってしまう。もっと明確に責任を取れる形で、クライアントの支援ができる方法って何だろうと考えたときに、VCに行って投資家になるという選択が浮かんだんです。
インキュベイトファンドでいろいろ学び、及川さんともつながって、今、こうしてNORTH AND SOUTHとして出資もすることになったわけですが、自分の専門性をフルに生かしつつ、一定の責任も持てるという意味で、自分にとっては一番しっくりくる支援の形だと感じています。
南坊 北尾さんも僕も、それぞれ個人の会社も持っているので、NORTH AND SOUTHとしてはそんなに案件数を増やしたいわけではないんです。その分、支援のやり方にこだわった方がいいかなと思っているんですね。
――南坊さんのご経歴も少し教えていただけますか?
南坊 僕も電通出身で、NORTH AND SOUTHの設立前の数年間はメルカリにいました。クリエーティブのプロで投資視点も持つ北尾さんと、マーケティングができてメルカリで事業視点も学んだ僕が一緒になることで、スタートアップに対して他にない支援ができるはず――そう考えて、2020年1月にスタートしたのがNORTH AND SOUTHです。
立ち上げから約1年半経った今年の夏頃、北尾さんと「今後は少し支援のあり方を変えていこうか」と話していました。というのは、スタートアップに対して、マーケティングやクリエーティブの観点からできる支援って、特定の案件やプロジェクトに留まらないんですね。ちょっとした情報発信の際にどんなビジュアルを使うか、どんなコピーを入れるか、いわば企業活動の一挙手一投足にクリエーティブの要素があり、積み重ねで違いが出るんです。結構、細部に神が宿るんですよ。
なので、僕らNORTH AND SOUTHの理想としては、こまごました部分まで包括的にサポートし、パートナーとして貢献していきたい。とはいえ、純粋に「お仕事頼んでます」「お金もらってます」の関係だと、たぶんそういう依頼の仕方ってしづらいんですよね。
――頼む方も遠慮しちゃいますよね。
南坊 その点、VCとスタートアップの関係を見ていると、しっかりした精神的な結びつきができているケースが多いなと。僕らも取引先に対して投資もすることで、お互いに強く結びついていい結果を出し、一緒に達成感を味わいたい、そんなことを話し合っていたタイミングで、及川さんからシリーズC参画の話を頂いたんです。
及川 僕としては、北尾さん、南坊さんレベルの方に、かなりリーズナブルなフィーでお願いしていることにずっと申し訳なさを感じていました。しかも最近、僕だけじゃなく、社内のいろいろなメンバーからお願いするようになり、結構負担をおかけしてるなと、ハラハラする場面もあって(笑)。NORTH AND SOUTHさんにとって、これはさすがに割に合わないんじゃないか、今後もサステナブルな関係性を築いていくためには、当社の株を持ってもらった方がいいんじゃないかと。
北尾 結局いいタイミングで、それぞれの思いが重なった形ですね。今までの関係性があったので、僕たちも特に改めて検討することもなく、出資を決めました。「どうする?」「いいんじゃない」くらいの感じでしたね(笑)。
創業noteの執筆から生まれたワードで、怒涛のセルフブランディング
――南坊さんには、NORTH AND SOUTHの設立時から、当社に関わっていただいているのですね?
及川 そうです。最初、広告の予算配分を見ていただいたら、早速ダメ出しされた記憶が(笑)。
南坊 リスティング広告の予算が高騰していたので、ターゲットの人数が限られるM&Aビジネスの場合、現時点ではブランディング、PRに注力した方がいいんじゃないかと。M&Aクラウドには第一想起を取れるポテンシャルがあると思い、そういう提案をしました。
及川 そこから路線変更して、それまでのリスティング広告とかFacebookマーケティングをゴリゴリ回す方向性よりも、ブランディング戦略を積極的に展開し始めたんです。及川をもっとメディアに出すとか、イベント開催をどんどんやるとか、こういうオウンドメディアを立ち上げるとか。
僕が個人noteを始めたのもその流れですね。創業時の思いを書くよう南坊さんに勧めてもらい、原稿自体もかなりリライトしてもらって。おかげで、300近いスキを獲得する記事ができ、仕事につながる反応もいろいろありました。あのときは、記事が完成するまですごい数のやりとりをしましたね。
南坊 創業noteは1回しか出せないので、そこはクオリティにこだわるべきだという思いがありました。結果、広告費0円でそれだけの成果が出せてよかったですし、僕自身、あの記事のリライトを通じて、M&A業界のこと、及川さんのことを深く理解できました。M&Aクラウドへのコミットメントがかなり高まった気がします。
及川 あのやりとりの過程で、ブランディング上、重要なものがいろいろ生まれたんです。「M&Aは社長の転職」とか「ディールでなくアライアンス」とか、概念そのものは以前から僕の頭の中にモヤモヤとあったんですが、それがお二人とディスカッションする中で明確になっていった。今、対外的に発信する際に、ああいう強いキーワードを使って話せるのは大きいです。
南坊 そうやってこだわって作った言葉一つひとつから、会社に対する信頼感って醸成されていくんですよね。M&Aの場合、特に売却側のニーズは、経営者本人も普段はそれほど意識していないケースが多いでしょう? 何かのきっかけで、ふと売却を思い立った瞬間に、「M&Aクラウドならよく聞くし、信頼できそう」と思い出してもらえるよう、クオリティの高い発信を続けていくことが大切だと思います。
及川 そういえば、南坊さんには、僕のTwitterのプロフィール文まで直されましたね。もともと「寿司握れます」みたいなプロフィールにしてたんですけど、ちゃんとM&Aのことを書くようにと(笑)。おかげでフォロワー数もかなり増えました。
使われてこそ意義がある。バリューのリデザインで知ったクリエーティブの力
及川 北尾さんが「UPDATE M&A」というフレーズを考え、ロゴを作ったのも、確か創業noteのころですよね?
北尾 先ほどの「ディールではなくアライアンス」に象徴されるような、新しいM&Aのあり方を社会を巻き込んで考えていこうという発想で考えたフレーズです。そこから「UPDATE M&A」をキャッチフレーズにしたセミナーを結構やりましたね。
及川 M&AのIVSのような、1,000人規模のイベントなんかも本当は企画してたんですが……今の感染症の流行さえなければ、もっと続けたかったですね。
M&Aクラウドの今のバリュー「1 Team」「2nd Priority(=顧客第一。その他の都合は2番目)」「10 Player(=Investorの視点でT型人材を突き破る“十”型人材)」のワーディングも、NORTH AND SOUTHさんにお願いしたものですが、あれもプロの技を感じました。
――リニューアル前のバリューは「One Team」「勝つべくして勝つ」「全員UX」で、当時の全社員のディスカッションをもとに決まったものでしたが、「One Team」以外の2つはあまり浸透しませんでした。それに比べて、今のバリューは、本当にみんなが日常会話の中で使っていますね。
北尾 ミッション、ビジョンやバリューを作ってほしいというオーダーは、そのころ他社からもいくつか受けていました。いいものを作ることはもちろん大事ですが、もっと大事なのは作ったものが使われることです。M&Aクラウドの場合は特に、依頼をもらった時点で表現したい内容は固まっていたので、あとはどうやって使ってもらえるフレーズにするかだなと。ダジャレとか歌とか語呂合わせとか、流通しやすさの観点でいろいろ考えてみた中で、あの数字縛りのアイディアがポンと浮かびました。
及川 もう一つ、「M&Aクラウド」は今、M&Aだけでなく資金調達のプラットフォームとしても打ち出しており、その方向で機能拡充もしてきました。これも実は、もともと北尾さんからアドバイスいただいた方向性に沿っています。M&Aの潜在層を広げる意味でも、資金調達とか業務提携のニーズも積極的に取り込んでいった方がよいのでは、と。
――そういう事業戦略面のアドバイスも、NORTH AND SOUTHさんから頂けるんですね。
及川 マーケティングを見てもらうと、結局事業全体を俯瞰してもらうことになりますから。かつ投資視点、事業視点も兼ね備えたお二人とディスカッションすることで、僕の起業家としての幅が広がったと感じています。
次のステージを着実に目指せる、攻めと守りのブランディングとは?
及川 今回10億円調達して、これからのM&Aクラウドは、大きなお金をいかにうまく使ってグロースさせていくかが問われます。ブランディングやマーケティングの役割も大きくなっていくので、お二人からはどんどんプロのアドバイスを頂きたいと思っています。
南坊 ブランディングに関しては、冒頭お話ししたように、まずは日々の積み重ねが大事だと思います。そこでしっかりとした芯をつくっていくことで、たぶんこの次の調達のタイミングあたりで、より強いブランディングやマーケティングのアクションを取れるようになるのではないでしょうか。
及川 マーケティングに関しては、一人目の責任者を早めに採用したいと思っているのですが、なかなか……。
北尾 大きなお金を使って勝った経験のあるマーケティング人材自体、限られてますからね。
南坊 特に一人目の採用は重要ですよね。そこはご相談にも乗りますし、採用できるまでの期間の体制づくりに関しても、僕らの持っているネットワークを活用した支援ができると思っています。
及川 ありがとうございます。あと、お金が入って思い切ったアクションを取ったばっかりに、ブランドを壊しちゃうケースもあると思うので、もし僕らが言っていることがおかしかったら、ぜひストップをかけていただければ。
南坊 会社の規模が大きくなると、どうしても手が回らないところも出てくるし、注目度も大きくなるので、ちょっとしたことで炎上するリスクは高くなります。炎上している会社の中の人は、意外と「なんでこんなに燃えているのか分かりません」というケースがあって、その感覚のずれが怖いところですね。北尾さんも僕も、支援している会社に関して気になる点があれば、すぐ指摘するようにしています。
さらに、M&Aクラウドの場合には、プラットフォーマーとして責任ある行動をしていくことも大事ですよね。仁義にもとることをしないのはもちろん、M&Aや資金調達を成立させた後までしっかりサポートができる会社になっていくと、ブランド価値もどんどん上がっていくはずです。その意味でも、今年スタートした「CFOコミットメント」のようなサービスには、大きな意義があると思っています。攻めと守りのブランディングをバランスよく進めていきたいですね。
北尾 M&A自体を誰にでも分かりやすく、簡単にできるものにすることにフォーカスしていけば、結果としてM&Aクラウドという会社も大きくなっているはずです。今後、規模が大きくなる中でも、ぜひそうした視点を大事にしていっていただきたいですね。その原点さえ見失わなければ、社会のニーズに応えて大きく成長できる会社だと思いますし、私たちもそのよさを最大限に伝えるよう、知恵を絞って並走していきます。
及川 志は高いチームだと自負していますので、今後ともビシバシ鍛えてください!
南坊 当社はVCのような大きな出資はできない分、強いコミットで成長に貢献していく、その基盤となる関係性をつくったことに、今回の出資の意義があると思っていますから。そして、いつかM&Aクラウドが上場の鐘を鳴らした暁には、及川さんや皆さんとおいしいお酒が飲めることを楽しみにしています。
――引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました!
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