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空気と音と湿気でベトナムの美しさを感じる映画|『MONSOON モンスーン』

海外に行く経験は少ないながら、社会人になって年に一回は海外旅行をするのが夢であり目標でした。台湾やシンガポールなど行きやすいアジア国へ旅行したあと、次はハワイに行こうかなぁと計画して、はや2年。海外はおろか国内旅行や実家への帰省すら、はばかられる日々に戻ってしまいました。

2019年の旅行では当初ベトナムを検討していましたが、雨季の季節だったためシンガポール旅行に変更しました。有料記事にしていますが、シンガポール旅行の写真はこちらに少し掲載しています🇸🇬

ベトナムはいつか行ってみたい国のひとつで旅行することを夢見ていますが、一足早く、映画『MONSOON モンスーン』でベトナムの空気を感じることができました🇻🇳

両親の遺灰を埋葬すべく30年ぶりに訪れるベトナムを舞台にしたロードムービー。監督は『追憶と、踊りながら』のホン・カウ監督で、『クレイジー・リッチ!』のヘンリー・ゴールディングが主演を務めています。

85分とコンパクトな作品ですが、自身のアイデンティティを探す主人公と、両親が経験した戦争。そして今現在のベトナムの姿を、映画的な美しさで描きながらも、しっかりと歴史を捉えている、そんな映画でした。

主人公キットは、6歳の時に家族とともにベトナム戦争後の混乱を逃れてイギリスへ渡ったボート難⺠。30年ぶりにサイゴンを訪れますが、ベトナム語はあまり覚えておらず、英語がわかる従兄弟のリーに昔のことを尋ねていきます。
久しぶりの祖国にキットはあまり懐かしさを感じていません。急成長するベトナムの町並みは、想像以上に大きく変化していたのではないでしょうか。

冒頭のシーンで、信号が青になった途端、バイクや車が縦横無尽に走り出す様子をカメラが上空から捉えますが、この映像はわたしがイメージするベトナムそのものでした。この雑多で活気ある状況に身を置いて、戸惑ってみたい。

雑多!活気!良い!

ゲイであるキットは、現地かアプリで出会ったと思われるルイスと時間を過ごします。アメリカ人である彼もまた、自身の国とベトナムの戦争の歴史について思索しており、キットに自身の想いや考えを伝えようとします。

実際に戦地には行っていない二世たちが、それぞれのやり方で、この国でアイデンティティを探ろうとする。日本にずっと住んでいると理解できないところもあるかもしれないけど、彼らの静かな横顔に、想いを馳せることはできました。

本作では従兄弟のリーが住むベトナムの古い集合住宅や、ルイスが住む家が登場します。ミントグリーンの壁や水色の扉がとても可愛く印象的でした。

リーの住む集合住宅は、こじんまりとした少し暗い部屋でしたが、淡いピンクの壁と丸い食卓が良い味を出しています。ルイスの家は風通りが良く、素足で歩くとひんやりしそうな床が心地よさそう。

対照的に、キットが泊まる部屋はおしゃれな高層マンションで、この部屋だけを見るとベトナムだとは分からないほど近代的。ベランダから空を眺めるシーンがとても美しかった。(花の鉢植えを2つ買って部屋に飾るあたり、キットの丁寧な性格が伺えます)
劇中に登場するインテリアについては、こちらの記事で監督が答えています。

そういえば、キットが街を探索する際、汗を拭うカットが何度かあるので、気温と湿気は相当高いだろうなと思いながら観ていました。こういうところがアジアだし、この湿気さえ伝わってくる映像がとても好きです。
ビールもよく飲んでいましたが、暑いから美味しんだろうなぁ。

▼▼『MONSOON モンスーン』に登場するごはん▼▼

上記で書いたように、キットやルイスはよくビールを飲んでいました。クラブでビールを飲むシーンもあり、ベトナムの夜の賑わいとビールがとてもよく似合う。

このレストラン素敵だなぁ

上記に貼ったGinzaの監督インタビューでも話題に出ていますが、キットがリーとお母さん(叔母さん)へのお土産として、エリザベス女王の顔がプリントされた王室御用達のビスケット(ショートブレッド)を手渡すシーンがあります。
監督いわく、THEお土産のようなお土産を渡してしまうことで、キットがどれだけウェスタナイズ(西洋化)されているかを表現したそうです。

そういえば、リーの家でお茶を出してもらうのですが、テーブルの上に伊達巻のような茶菓子?が置いてあり、あれは何なのか気になっています。カステラのようなものなのか、そもそも食べ物じゃないかもだけど、いつかこの謎を解明したい。

リーと一緒に食べるテイクアウトのお弁当も登場しました。こちらのサイトでテイクアウトグルメについて紹介されていました!映画に出てくるお弁当の中身は何だったんだろうか。

アートツアーを主催するリンと、ハノイで食事をします。何を食べていたのかははっきりとは分かりませんが、こちらも開放的なレストランでおしゃれな感じでした。

そしてリンに誘われ、実家が営む蓮茶の工房を訪れます。彼女の家族に混じって蓮のおしべを取る作業に参加しますが、このシーンがまた感動するくらい美しいのです。

伝統を重んじる工房では、月経中の女性は作業に参加できないという「しきたり」があり、リンは「意味がない」と言うシーンがありますが、インド映画『グレート・インディアン・キッチン』が頭をよぎりました。(月経が不純だとされる理由は何?)

写真より断然、映像で観るのが美しいので、ぜひ映画で!

ハリウッドでアクション大作にも出演するヘンリー・ゴールディングのハンサムさは本作でも変わらずですが、他の作品ではあまり観ることができないセリフ少なく物憂げな表情がいいなと思いました。うん、やっぱりかっこいい。

(C)MONSOON FILM 2018 LIMITED, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019

あと実は本作が劇場公開されたとき、パンフレットが制作されておらず映画自体も見逃してしまったいたのですが、鑑賞してやはり、ベトナムという国や歴史について詳しく知りたかったので、パンフがないのは少し残念だったなぁ〜と思います。
いくつかwebでの監督インタビューを貼っておきます。


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