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フットワーク

不可逆な時間

考えているほど無駄な時間はない

以前、「考えているほど無駄な時間はない」というnoteを書きました。
頭の中で考えているだけでは全く世の中に影響は与えませんし、何も変わりません。考えれば考えるほどいろんなリスクや関係者の顔が浮かび、ダークサイドに堕ちていくこともよくあることです。

だからこそまず「手を動かすこと」が大切です。プロジェクトとして形にしてしまうのが一番ですが、簡単にはいかない場合も多いでしょう。
「手を動かす」とはそんなに大それたことではなくても、誰かに相談する、他の事例を調べる、他のまちを見てみる。。。なんでも良いのです。
ざっくばらんなブレーンストーミング的な打合せも十分に価値のあることです。
三次元のリアルな世界で「何かやってみる」ことが何より大切です。

方針が決まるまで。。。

そんななかで先日、昨年度からお手伝いさせていただいている自治体において(昨年度から引き続きの案件で至急調整したいものもあることから、)本年度業務のスタートについて相談を持ちかけてみました。
担当者が異動になったことももちろんあるのでしょうが、「方針が決まるまで待ってほしい」という連絡をいただきました。

まちみらいは「現場重視・実践至上主義」をモットーとしており、様々な制約条件や一筋縄ではいかない人たちのなかでどうやっていくか、自治体職員・首長や民間事業者の方と徹底的にディスカッションしたり、観測気球を上げたり、試行錯誤しながらやっていくことを特徴としています。
だからこそ、「方針を決める」うえで「何が課題で」「どこに躊躇し」「足りないピースが何か」などをリアルな世界でリアルな人たちが集い探していくのです。

限られた担当者や担当課だけで悩んでいると精神衛生的にもよくないですし、ポジティブに昇華していくことが難しくなってしまいます。

スピード感ではなくスピード

公務員時代、流山市の副市長に何度となく言われ強烈に覚えている言葉の一つが「これからはスピード感じゃなくスピードだ」。スピード感は「感覚」でしかなく、スピードは「絶対値」です。
数多くのプロジェクトをいかに早く具現化していくのか、それこそがプロとして求められることです。このような視点でいくつかの事例を考えてみよう。

阿南市

阿南市では下記のnoteでも書いたように、2021年度の職員研修を皮切りとして職員有志によるプロジェクトチームを組織し、公共施設マネジメントに関する専用サイトをつくったり、庁舎・科学センター等でのトライアル・サウンディングなどをあっという間に始めました。

そして、2022年度からは正式にまちみらいと一緒に走ることとなったのですが、ここでもかもだ岬温泉などのプロジェクトと並行して、大きな課題となっていた公共施設の照明や空調設備の更新をどうするかを検討し始めました。
阿南市も(一般的な自治体と比較して多少は優位にあるとはいえ)財政的に余裕があるわけではないので、従来型の「単純な更新による工事請負費を予算として確保」することは困難でした。
そこで、当初から光熱水費の削減相当額を更新の原資とするシェアードセイビングス方式のESCOを前提として勉強会から検討を始め、対象施設としていくつかをピックアップしてきました。

そうしたなかでまずは「小規模施設・照明のみ・上乗せ額なし」でできそうな那賀川図書館を第一弾とすることとしました。

こちらもコンサルに依存することなく、自分たちでサウンディングから丁寧に実施しながら要求水準書を作成して公募することとなりました。この案件では予算等の関係で「年度内に契約」することが求められたため、2023年3月24日に優先交渉権者を選定して即契約することとなりました。
※阿南市でのESCOは流山市で実施したデザインビルド型(≒最低限の与条件で公募し、事業の詳細は優先交渉権者との協議により構築していき、諸条件の整理できた段階で契約する形)を採用していたため、本来であれば契約はもう少し後の段階になるはずでした。

更に、2023年度に入り、第2弾として「空調設備を含む・早期の更新が必要」な施設として科学センターと給食センターが選定されました。
科学センターでは特定天井の改修が必要となっていること、給食センターでは様々な要素が重なり本年度中(物理的に可能なのは夏休み)に空調設備の更新を行うことが必須となっていたことから、前段の那賀川図書館の資料を下敷きとして強烈なスピードで公募関連資料を整理し、2023年5月2日には公募を開始しました。
こちらの方が実質的な時間軸で難しいのではないかと心配してしまう状況でしたが、「まずはやってみよう」という市の英断がなされたのです。

随意契約保証型の民間提案制度も2023年4月には募集を開始するとともに、同25日には民間事業者向けの説明会を(昼・夜の2部で)開催しました。

この説明会において、参加した民間事業者から「自分たち1社では提案をつくるのが難しいけれど、どこかと組むことができればチャレンジしたい」という声が複数上がったため、急遽、5月22日に表原市長も参加しての民間事業者向けの「マッチング会議」を行うこととなりました。

この他にも2022年度に全国のトップを走る津山市の川口義洋氏を招聘して実施した職員研修において紹介された「見積合わせによる解体工事の発注」についても、即実践して大きなコストダウン・事務負担の軽減を図るとともに、今後はより大きな施設の解体についても応用していく方向性が示されています。

宮崎市

宮崎市では2022年に就任した清山市長が公民連携を掲げ、職員を積極的に都市経営プロフェッショナルスクールなどの「本格的な」学びの場へ送り込むとともに、様々なプロジェクトをスタート・検討し始めました。

学校施設の包括施設管理業務、これまで市も含めて二転三転してきた庁舎の改築などについて専用サイトで一括してサウンディングを実施しています。

サウンディングだけでなく、栄町街区公園・栄町児童館やぐるっぴー発着場所におけるトライアル・サウンディングも行われています。

この2件について、前者は2022年度に「まちみらいお試し版」での議論から、後者は同じく現場視察のなかで「駅前の一等地でもったいないよね」という素朴な発想から即動くことになったのです。

紫波町

オガールプロジェクト、ひづめゆ、日詰商店街のリノベーション、しわまる号などの各種プロジェクトを展開する紫波町。
先日、脱炭素先行地域に選定されたとの報道がされました。

紫波町_脱炭素先行地域の提案内容

こちらの企画提案書もコンサルに依存することなく、全て職員が自ら作成したとのことです。

直線的に動くこと

こちらのnoteでも書いたように、「やればできる」ことは多いですし、「考えているほど無駄な時間はない」のです。

いろんなことを思いついたり、どこかでヒントを得ることができたら「直線的に動く」ことが非常に重要です。
「動く」とは冒頭にも書いたようにいきなりプロジェクトとして成立させることだけを指すものではありません。そこに向かってまずは第一歩を踏み出すことです。

阿南市・宮崎市のようにトライアル・サウンディングからスタートすることはそれほど難しいことではないでしょう。(こういうマインドを持って実施するトライアル・サウンディングは決して「無料・単発の公共資産貸出イベント」にはならないはずです)

紫波町のようにいろんなプロジェクトを蓄積することで、何かをやろうとしたときに直線的に動けるマインド・体制、基礎体力をつけておくことも有効でしょう。

暫定的な未来を少しずつ創りながら、仲間や理解者を少しずつ広げながら、プロジェクトを通じて自分たちらしいやり方をみつけながら、言い訳せずに試行錯誤していくことが大切です。

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