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【イベントレポート】ワーケーションは個人と企業にどんな価値をもたらすのか。

こんにちは!
NPO法人ローカルデザインネットワーク(以下、LDN)の鈴木美和です。
結婚後の本名は「市川美和」ですが、静岡・東伊豆町で活動するLDNでは、故郷・東伊豆町に住んでいた頃の旧姓「鈴木美和」を使っています。
 
2021年度からスタートした、東伊豆町のワーケーション推進事業「まちまるごとオフィス東伊豆」。

今回は、1/29(土)にコミュニティスペースSHIBUYA QWS(渋谷キューズ)で実施したトークセッションイベントをレポートします。

「ワーケーションは、個人と企業にどんな価値をもたらすのか?」

オンライン会議やリモートワークが日常化し、私たちが働く場所は、会社の中だけではなくなりました。カフェやシェアオフィス、自宅も「オフィス」になる現代。気分や目的にあわせて働く場所を選ぶことで、仕事の質やスピード、事業成果を上げていこう、という流れもあります。

私たちは2021年度、静岡県・東伊豆町をフィールドに「町をまるごとオフィスに見立て、地域と関わり、豊かな自然を堪能しながら働く」提案を行い、ワーケーション推進活動を開始しました。題して「まちまるごとオフィス東伊豆」。
 秋には、首都圏で暮らすワーカーの皆さんを招き「まちまるごとオフィス東伊豆」ワーケーション体験企画を実施しました。

SHIBUYA QWSでのトークイベントには、『働く』をテーマに思考を重ねるパネラーの皆さんにお集まりいただきました。ワーケーションの最新事情や、『人を幸せにする働き方』について、また、1年間展開した「まちまるごとオフィス東伊豆」で得た可能性や課題について、パネラーそれぞれの視点を持ち寄り、意見交換を行いました。

パネラー:
※投影画像「Q&A」の向かって左から、左へ順に
秋沢崇夫さん(株式会社ニット代表取締役社長)
坪内恵子さん(株式会社スノーピークビジネスソリューションズ)
森田七徳さん(東伊豆町企画調整課課長)
黄瀬真理さん(株式会社ライフワークス)
市川鈴木美和(NPO法人ローカルデザインネットワーク)

モデレーター:※写真右端
守屋真一(NPO法人ローカルデザインネットワーク副理事長)

ワーケーションのメリット

トークセッションのテーマは、『ワーケーション』は、個人や企業に、どんな価値をもたらすのか。『働き方の変化』は人を幸せにするのか。

オンライン&オフラインのハイブリッド型で実施したイベントには、ワーケーションに興味のあるワーカーのみなさんや、受け入れを検討されている自治体の方、導入を検討されている企業の方など、多くの方がご参加くださいました。
 
はじめに、リモートワーク事情に詳しい秋沢崇夫さん(株式会社ニット代表取締役社長)に、テレワークやワーケーション等に関する国や企業の動向、ワーケーションのメリット、課題などを伺いました。

400人のスタッフ全員がフルリモートというユニークな会社、株式会社ニットの秋沢社長。

同社は、オンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU(ヘルプユー)」を運営。業務委託を含む約400人のメンバーが日本全国および世界33カ国からフルリモートで業務を遂行する、ユニークな会社です。しかも、コロナ禍以前からこのスタイルなのは、驚きです。数多くの自治体からワーケーションモニターとして誘致を受け、令和3年度には「テレワーク先駆者百選総務大臣賞」を受賞しています。

「ワーケーション実践メンバーは、幸福度が高い。」(秋沢さん)

「まちまるごとオフィス東伊豆」モニター企画。海を眺めながら仕事をするモニターの皆さん。

秋沢さんは、ワーケーション実践に関する企業と個人のメリットを、下記のように考えています。
 
【企業側のメリット】社員のエンゲージメント向上
【働く個人のメリット】長期休暇の実現+セレンディピティの創出

まずは、企業側のメリットについて。
「部署やチームでワーケーションをしてもらうことで、テレワーク環境での孤独・繋がりの欠如を解消できます。リアルに会って、現地で一緒に仕事をしながら、寝食を共にする。相互理解を進めることで、共に働く人との繋がりを創出し、企業としての文化醸成に寄与することが可能です。」
 
働く個人のメリットとしては
「普段と違う環境で仕事すると、新しいアイディアが浮かんできたりします。また、会社通勤スタイルだと取りにくい長期バケーションも、ワーケーションなら、仕事を継続しながら海外や長期休暇を取得できますよね。」
 
確かに!
長期休暇制度などを利用しなくても、リモートワークでなら、休暇と仕事を同時に実現できますね。

東伊豆町稲取・高台のカフェ「マナスカフェ」にて。仕事の合間のリフレッシュランチタイム。

秋沢さんの会社では、日本における幸福学研究の第一人者、前野隆司教授のグループとコラボし、幸福度診断を実施。(株)ニットでワーケーションを実践しているメンバーの幸福度は、一般よりも高いという結果が出たそうです。「ワーケーションは、働く人を幸せにする」ことが、実証されたわけですね。

個人と企業の幸福度をアップする、ワーケーション実践3つのステップ

「ワーケーションの実施にもスキルとプロセスが必要」と秋沢さんは言います。紹介されたのは、導入における、3つのステップです。

 長野でのニットのワーケーション風景。地元体験や、現地の方との交流も。

ステップ1.ワーケーション先で、通常通りのテレワーク
→現地で通常通りのテレワークを実践できるように、コワーキングオフィスを探したり、ホテルの環境(Wi-Fi、部屋の机や椅子が完備されているか)を確認したりする。

ステップ2.ワーケーション先で、対面ディスカッションやワークショップの機会を作る
→社員同士で数日間ともに過ごすワーケーションを実践。未来に向けたディスカッションや現状の課題の洗い出しなど、膝を突き合わせ、本音で語り合える時間を作ることが有効。

ステップ3.現地の企業・自治体と協力して、地域の課題解決にチャレンジ
→ワーケーション先で現地の方々との交流する機会を設ける。社会課題を我が事として捉えられる機会を創出することも、企業としては重要。また、ワーケーション中での一過性の取り組みではなく、長期的な社会課題解決への貢献やビジネスへの反映こそ、企業がワーケーションに取り組む意義であり、ワーケーションの価値でもある。
 
最初はテレワークの延長でのワーケーションから、徐々に、現地との繋がりを作り、地域の課題解決にも関与していく。
ワーケーションは、働く個人の自己実現(幸福度向上)にも、企業の価値向上やビジネスチャンスの創出、企業風土改革にも寄与できるのですね。

「人の生活を豊かにする東伊豆町でありたい」(森田課長)

続いて、「まちまるごとオフィス東伊豆」を展開している静岡県・東伊豆町役場の企画調整課長、森田七徳さんから、東伊豆町のことや、ワーケーションを通じて描いていきたい未来について、お話しいただきました。

東伊豆町役場・企画調整課の森田課長。ワーケーション客も住民も豊かさを感じる町を目指します

「東伊豆町は、都心から早ければ2時間の、観光が主幹産業の町。年間 100 万人を超える方が宿泊されています。
ワーケーションの観光業への貢献は限定的ですが、ワーケーションをきっかけに、移住したり二拠点居住をしたりする若者も出てきました。
今後は、日本中が人口減少に向かいます。我がまちも例外ではなく、町の規模は縮小せざるを得ない。
しかし、町と継続的に関わってくれる人が増えることで、生活の豊かさは継続できると思うのです。住んでいる人にとって、交流人口が増えることで、楽しさや豊かさを実感できる町にしていきたい。また、ワーケーション実践者の皆さんには、東伊豆町でワーケーションしたことによって、生活が豊かになったと感じてもらいたい、と思っています。(森田)」

ワーケーションモニター企画での風景。東伊豆町稲取のツリーハウス広場にて。

なお、東伊豆町では、ワーケーションで町を訪れる人のための無料のシェアカーも装備。「ワーケーションする人を、東伊豆町だけに留めておきたいとは思っていません。シェアカーで足を延ばして、伊豆半島全体の魅力を楽しんでほしい。(森田)」

2021年度から始まったワーケーション推進プロジェクトの課題については、「3つあります。①企業側のメリットをどう作れば良いか ②モニター参加者との継続的な繋がり作り③ワーケーション客と地域の人をどう繋げるか。2022年度以降の活動で、この課題を解決していきたいと考えています。(森田)」

ワーケーションの潮流と、働き方の変化

続いて、パネラー同士のディスカッションタイムに。
LDNの守屋がファシリテーションを務め、『よりよい働き方』や『ワーケーション』をテーマに、パネラーのみなさんのお話を聞きました。ポイントをご紹介していきます。
 

Q.ワーケーションの潮流や働き方の変化など、聞かせてください

坪内恵子さん
(スノーピークビジネスソリューションズ株式会社HRS事業部チーフ)

アウトドア研修やオフサイトミーティングを提案する、スノーピークビジネスソリューションズでの経験や知見をお話しいただいた、坪内さん。ワーケーションモニターにも参加されました。

「最近は、比較的大きな規模でのキャンプ研修のニーズが高い。コロナによって、社員同士の接触や交流の喪失に対するより戻し現象と感じる。」
「アウトドアワークは、コミュニケーションとチームビルディング向上に最適。普段はオフィスの中で閉じ気味の意識も、自然の中だと素直に自分を開放できる。」
「モニターで訪問した東伊豆町は、シェアオフィスなどの室内やアウトドアワークができる場所など、シーンで分けて仕事ができる、魅力的な場所がたくさんあった。」

黄瀬真理さん
(株式会社ライフワークス マーケティング課長、キャリアコンサルタント)

日頃、社員のキャリア開発をテーマに、企業の人事課題と向き合っている黄瀬さん。「まちまるごとオフィス東伊豆」のワーケーションモニターにも参加されました。

「ワーケーションには、既存メンバーの活性化と、これから働く人をいかに惹きつけるのか、の2つの可能性がある。」
「初めてのワーケーションの体験が、まちまるごとオフィス東伊豆だった。モニター企画に参加し、とても感動した。自然豊かな東伊豆なら、親子ワーケーションもできる。働くママにとっては、仕事もできて、子供の世界も広がる場所は、魅力的!」
「VUCA(先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態)の時代になり、企業が求める人材像が変わってきた。ワーケーションを活用する人は、自分の働き方や仕事を自律的に選択し行動できる人、主体的な側面を持っている人である場合が少なくない。そういう点で、企業側には魅力的な人材であることも多いのでは。」
「2025年は、ミレニアル世代が労働人口の半分を占めていく。その人たちをいかに惹きつけられるか。企業側の採用の鍵になるはず」
 
市川鈴木美和
(NPO法人ローカルデザインネットワーク、キャリアコンサルタント)
「キャリアコンサルタントとして、仕事を通じた自己実現、働くことを通じた幸せづくりを支援している。ワーケーションは、幸せな働き方を実現する理想のカタチ、と考えている。」
「マルチロケーションでの仕事が可能になり、“場所的・時間的な境目”がなくなった。せっかく時間も場所もシームレスに働けるのなら、自然が豊かで、余暇も楽しめる場所で働きたい。東伊豆町は、日本でも有数の最高のワーケーション候補地になるはず。」

ワーケーションで選ばれる町の条件とは?

ワーケーションモニターとして参加された女性パネラー、坪内さんと黄瀬さんの二人。「まちまるごとオフィス東伊豆」を高くご評価くださいました!ありがとうございました!
 
しかし、ここで、東伊豆町の森田課長から、気になる問題提起が。
 
「今は多くの自治体が、課題解決型ワーケーションに注目し始めている。(森田)」
 
確かに!
多くの競合の中で「選ばれる地域」になるには、どうしたら良いのだろう?
パネラーのみなさんに、質問を投げかけてみました。

2021年の「まちまるごとオフィス東伊豆」モニター企画の風景。
海を臨む宿泊施設の屋上に、足湯付きのテーブルが。夕方、空には月が輝き始めていました。

Q.ワーケーションで「選ばれる地域」になるには?

秋沢さん
「まずはコワーキングスペースなど、物理的に働きやすい場所を整備すること。次に重要なのが、地元の人たちとの交流
何度も行きたくなる地域には、地域の人との繋がりがあった。思い出すのは、地元の人の顔や、交流シーン。自治体の人が何を考えているか率直に話してくれたり、地元の人のお話を聞いたり。一緒にお酒を飲んだり、ワークショップをやったりしたことも。交流を作ることは重要。人と会うと脳に刻まれる。」

坪内さん
企業の拠点から半日以内に行ける場所。企業が使いやすい距離感で、共同作業ができる場所と個人の時間の両方が担保されるところ。チームと個人、どちらにとっても快適な働き方ができる場所が欲しい。あとは、秋沢さんと同じく、地域の人たちとの繋がりは欲しい。SDGs観点での学びなどがあるとなお良い。

黄瀬さん
「まずは、Wi-Fiが不自由なく使えること。セキュリティも重要です。そして、オンライン会議ができる場所等の予約システムの安心感。また、ワーケーション先で、地域の仕事についてのプロボノや副業で貢献できたら、「場所や時間の自由」を活かした働き方として注目を集めそうだと思います。」

「関わる人、住む人の人生を楽しくする」まちまるごとオフィス東伊豆

「幸せに、自分らしく働くこと」に日々向き合うパネラーの皆さんから、多くの知見や、参考になるアドバイスをいただいた、今回のイベント。
 
2022年度も、町の皆さんと力を合わせて、東伊豆町を「関わる人、住む人の人生を楽しくする町」として、バージョンアップして行けたら、と思っています。
 
今年度の「まちまるごとオフィス東伊豆」プロジェクトメンバーは、昨年同様の、東伊豆町役場/企画調整課・森田課長、鈴木祥子、地域おこし協力隊/樋口、森本、鈴木敦士、NPO法人ローカルデザインネットワーク/守屋、鈴木美和で取り組んでまいります。
 
今後の「まちまるごとオフィス東伊豆」の活動にも、ぜひご期待ください!
「ワーケーションに行きたい!」といったご相談も、お待ちしています。
 
記/市川鈴木美和
(NPO法人ローカルデザインネットワーク、キャリアコンサルタント)

Wi-Fi完備で仕事もできる高台のカフェ「マナスカフェ」@稲取。私のお気に入りはロコモコです。


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