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1週間でつくったパフェ積みゲーム『フォーリンパフェ』のゲームデザイン

こんにちは。

ゲーム制作学生団体『スーパースターマイン』でリーダー兼ディレクター兼プランナーを務めているマチコーと申します。

最近はVRコンテンツ会社で開発インターンをやったり、AR/MR開発に携わったりしていますが、普段はいつもゲームを作っています。


↑ポートフォリオはこちらです


↑こんなゲームを作りました


今回は『Unity1Week』というオンラインイベントに5人体制となったチームとして初参加したので、拙作『フォーリンパフェ』を題材に、今作で実現したゲームデザインについてお話しします。

作ったゲームはこちらから遊べます。


Unity1Weekにて総合部門45位&絵作り部門35位にランクインしました!(8/30追記)

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『フォーリンパフェ』とは

まずはゲームの流れを簡単に説明します。

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スタートを押下すると下のような画面が現れます。これがメイン画面です。

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プレイヤーはボタン、もしくはA/D(←/→)キーで画面下の器を移動させることができます。その右隣りにはパフェの値札、そして上部にはマシンとタイム表示があります。


ゲーム開始後、上のベルトコンベアが動き出してフルーツ、クッキー、ワッフル、チョコレートといった材料が流れてきます。一度マシンに入ったあとはマシン下部の3つの口からそれらがランダムに排出されるので、それらを器に盛り付けていくのが目的です。

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材料にはそれぞれ値段が設定されており(盛りづらい材料ほど値段が高い)、材料の取捨選択がパフェ作りのカギを握ります。材料を獲得する度にパフェの値札がどんどん更新されていきます。

また爆弾が現れることもあり、当たってしまうとせっかく積んだパフェの材料が吹っ飛んでしまいます。パフェの体積が大きくなるにつれて爆弾に当たりやすくなるのがポイントです。


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そうして完成したパフェには、材料に応じて値段がつきます。

ランキング画面では全国のパティシエ(プレイヤー)が作ったパフェの値段を確認、また自作パフェの登録ができるほか……

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フォトモードでは作ったパフェを自由に見ることができ、Twitterでの共有もできます。

盛り付けた材料に応じてパフェの名前(左下)が変わるのも工夫点です。


↓気になった方はぜひ遊んでみてください!



最初はかき氷だった

今回のUnity1Weekのテーマは「ふえる」でした。

普遍的かつわかりやすいテーマだったからか、今回の投稿数はすでに400を超え、過去最多となっています。きっとどのチーム(個人)も「ふえる」というテーマをゲームに昇華させるのに頭を捻ったのではないかと思いますが、それは私たちも同じでした。


今回はスーパースターマインから、プログラマー2人、2D/エフェクトデザイナー1人、3Dデザイナー1人、そしてディレクター兼プランナーの私という計5人で参加しました。

テーマが発表された瞬間の8月10日午前0時、私たちはDiscordに集まり各々でアイデアを出し合いました。このブレインストーミングで用いたのがGoogleドキュメントです。


こうした会議で使われるツールとしては他にもmiroというホワイトボードアプリがあるのですが、時間の制約が厳しいこと、ツールの習得のために発想が狭められるようなことがあっては本末転倒であることから、複数人によるリアルタイムでの更新が可能なGoogleドキュメントでのブレストを行うことにしました。

このあたりは以前、ニコニコネット超会議超ハッカソンで『Cup Runmen』をチーム制作した経験が活きました。

そのおかげで、この時は非常に多くのアイデアに恵まれました。


……いいえ、恵まれすぎました。

ここで出てきたアイデアの総数は、被ったものも大小合わせて227個。当然ここからひとつにまとめなければなりません。

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↑出てきたアイデアのほんの一部


まずはアイデア全体をざっと眺め、良さそうなものに皆で印を付けていきます。それから似たアイデア、同じアイデアは統合させます。

続いて、各自でアイデアをゲームコンセプトに昇華してもらいました。そうして200以上あったアイデアは5個程度に絞られました。


こうした手順を踏んだのには理由があります。

アイデアは「これが増えたら嬉しい」「こう増えると楽しい」といった直感、抽象に基づくものですが、これをゲームコンセプトに落とし込もうとすると、具体的なロジックを考え抜く必要があります。

一般的にはEMSフレームワークと言われますが、「●●を□□して(手段)、××を△△する(目的)のゲーム」という形にアイデアを落とし込むことで、ゲーム企画への昇華に一歩近づくことができます。これこそがゲームコンセプトであり、プレイヤーの感情を動かす要になります。

すなわち、『面白そう』と『面白い』の間には飛び越えなければならない小川が流れているのです。このあたりは後で詳しく述べます。


そんなこんなでアイデアが5つに絞られたわけですが、時刻はすでに午前4時。その日は一旦お開きにして、翌日改めて集まることにしました。

この中で出てきたもののひとつに「極寒の雪山で降り注ぐ雪をかき氷の器に盛り付け、その高さを競うゲーム」というコンセプトがありました。

ひと目で『面白そう』かつ目的がはっきりしているのが良いと思っていましたが、雪を実現することの難しさ、また物理演算ベースのゲームで高さを評価軸に置いてしまうと、何回か試行しても結果があまり変わらない(=プレイヤー個人のスキルの向上が感じられない(=フロー体験の原則に反する))ことからそのままでは使えないと判断しました。


そこで練り直したのが「材料を器に盛り付けてパフェを作り、その金額を競うゲーム」でした。

パフェにした利点は、材料は雪に比べて画面に収まるオブジェクト数が少なくて済む(WebGL向きである)こと、またかき氷に比べて見栄えすることが挙げられます。一方で課題だったのは、物理エンジンのチューニングでした。

この辺りは弊チームのリードエンジニアのいーだが記事にしてくれる(はず)なので、そちらに任せます。


↑記事にしてくれました(9/4追記)



開発、Twitter、そして開発

経験者の方はご存知かと思いますが、Unity1WeekはTwitterが非常に盛り上がるイベントです。そこで開発と並行し、その進捗を伝える画像あるいは動画をツイートすることが慣例となっています。

私が開発を開始した初日(Unity1Week二日目)に投稿したのは、以下の動画でした。


……正直なところこれは進捗などではなくただのバグ(Rigidbodyの設定ミス)なのですが、フワ〜と浮き上がるパフェのシュールさがウケたのか、投稿24時間で100を超えるいいねを得ることができました

最初に多くの注目を集められたことはチームメンバーのモチベーションにも繋がり、私自身も大いに励まされました。拡散していただいた方々、本当にありがとうございました。

その後も開発の傍ら、一日一回(不具合が頻出してスキップしたこともありましたが)のツイートを心がけていました。



「面白そう」「面白い」「面白かった」のサイクル

今回の制作過程でメンバーには伝えていませんでしたが、私にはどうしても実践したいことがありました。それは、かえるDさんの提唱する「面白そう」→「面白い」→「面白かった」→「面白かったの共有」のサイクルを作り出すことです。

↑有料記事ではあるものの、本稿で触れる部分までは無料で読めます。また有料部分もとてもおすすめです


記事中ではこの「面白そう」→「面白い」→「面白かった」→レビュー→……というループ構造により、いわゆる“流行り”が生まれるのだと説明しています。

理論についてはかえるDさんの記事以上のことは語れないので、ここでは「フォーリンパフェにおいてどのように実践したか」をお話しします。



「面白そう」の実践

まず「面白そう」のパートですが、これこそが前述したTwitterでのツイートです。

上は完成当時のツイートですが、この動画はタイトルから開始するのではなく、『ゲーム中盤〜終盤→ランキング画面→フォトモード→タイトル』という流れになっています。


これは偶然ではなく意図的なもので、この流れを見せることでユーザーに

・「パフェが積み上がる様子(=ゲーム内容の説明)」
・「爆弾(=リスク管理)の存在」
・ 「終盤にかけてのゲームスピードの加速(=擬似的なフロー感覚)」
・「ランキングの存在(=アルファゲームへの誘い)」
・「フォトモードとTwitter投稿機能(=シェアリングの疑似体験)」

を少ない時間で伝えることができます。

これにより、まずはプレイヤーにコンセプトを理解してもらい「面白そう」と感じてもらうことを目指しました。



「面白い」の実践

そして肝心なのはインゲーム部分のゲームデザインです。ゲームとしての出来がこの評価に直結するため、ここは企画段階から力を入れていました。

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今作では具材を積めば積むほどスコアを稼ぐことができますが、たまに落ちてくる爆弾に当たると吹っ飛んでしまいます。材料を積めば積むほど爆弾による被害が大きくなるので、いつ勝負を仕掛ける(高額材料を取る)かが勝負のカギを握ります

またマシン下のノズルにばかり気を取られず、画面上のベルトコンベアを流れてくる材料を見極めて取捨選択を行うのも大切です。

終了間際には具材の排出が激しくなるため、そこでの立ち回りも命運を分けます。


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↑はアイデア出しの前にメンバーに共有したドキュメントです。

過去に大手ゲーム会社のゲームデザイナーインターンで社員の方からお聞きしたり、様々な本・記事を読んだ上で自分なりにゲームデザインについてのTipsをまとめたものですが、その中でも一番大切なのは

・プロト制作に着手する前にゲーム性(あそび)の軸を固めておき、最後までそれを信じて貫く

ということです。


一番最初にゲーム性の軸を固めておくことについて、その理由は至極単純であり、『後戻りを許さないため』です。

Unity1Weekはたった1週間のイベントであることから、初日の初手からいきなりプロトを作り出す人が多いと思います。この手法のメリットは手っ取り早く動くものを公開できることで、個人制作ならばそういった作り方が大半でしょう。

しかし私の経験則から、ある程度以上の規模感のチーム開発でそれをやってしまうと空中分解を引き起こしかねないと考えています。それが深夜に出たネタで、かつメンバー全員に疲労の色が見えている場合ならばなおさらです。


「コンセプトを考えたときは面白そうだと思ったのに、作ってみたら勝手が違った」
「プロトから作り始めたが事前のゲームデザインの練り込みが甘く、どうしても要素がぶつかってしまいゲームにならなくなった」

という経験をしたことがある開発者の方は少なくないのではないでしょうか。

Unity等のゲームエンジンの民主化により、イテレーションを素早く回してプロトタイピングを行うことは容易になりました。しかし一旦頭の中でゲームを組み上げ、ゲームデザインに抜けがないかどうかを考える方が手戻りが少なく済み、結果として確実かつ素早くプログラマー/デザイナーに仕様を手渡すことができるのです。



「面白かった(の共有)」の実践

前述したかえるDさんの記事では、「面白かった」と「面白かったの共有」の違いについてこのように書かれています。

Steamでのアプリ全体レビューと違って、Twitterなどで共有される「驚き」や「プレイ中の体感」だったりの共有は、面白かった記憶をそのまま記述するわけではない。記憶の中での特異点を記述するような形となる。なので、フロー体験から引き剥がされるくらいの変化だったり、ストーリーの特異点だったり、強すぎるボスだったり、人に語りたくなったり、自慢したくなるような、はみ出した部分が必要となってくる。


フォーリンパフェではこの“はみ出した部分”をアウトゲームに設けました。

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それがこの『フォトモード』です。

以前から「Twitter上でゲームが拡散されやすい仕組みを作りたい」という議論をプログラマーと行なっており、題材がパフェということでSNSでのシェアと相性が良いのではないか?と仮定して組み込んだものになります。

フォトモードの仕様策定においては、インスタで#パフェ活というハッシュタグの投稿をたくさんチェックし、背景・構図・雰囲気作りの参考にしました。


そのこだわりの甲斐あってか、unityroomのコメントでは「インスタ映え」「撮影できるのが面白い」といったコメントを多数いただくことができました。



【まとめ】ゲームデザインとは

私は日頃から、ゲームとは『コミュニティ』であり、ゲームデザインとはコミュニティをデザインすることそのものであると考えています。

↑元スクエニの下田賢佑さんはこれを『ゲームメカニクス』という言葉で説明しています


今やゲームは実況プレイ動画、eスポーツ、SNSなどとは切っても切り離せない関係にあります。四角に囲われた液晶の外の世界、すなわち社会をデザインすることがゲームプランナーを志す私にとっての目標でした。

そんな中制作した今回のフォーリンパフェでは、SNS上に色とりどりのパフェが咲き乱れる様子を観測することができ、またそのビジュアルに興味を惹かれた非ゲーマーの方々からの好意的な反応を頂戴することができました。このことから、私の目標である『コミュニティをデザインする』ことに一歩近づけたのではないかと自負しています。

このチャレンジをたった1週間、信頼できる4人の仲間たちと共に成し遂げることができたのも、自分にとっては本当に大きなことでした。



今後もこうした作品制作を通し、遊んでくれる人々・見てくれる人々の人生を少しでも豊かにするお手伝いがしたいです!

そして皆さんにはぜひこの『フォーリンパフェ』を遊んで、評価を付けたりTwitterで拡散していただけると嬉しいです!!


また次の記事でお会いしましょう。

それでは!




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