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まちと宿ラボ#3 / コロナ禍で変化した,宿泊施設と地域のこれからの関係づくりとは?

地域との協働や貢献を進める宿泊施設を学び、増やしていく「まちと宿ラボ」

コロナ禍の取組みや地域との協働事例に焦点を当て、3名のゲストをお迎えし、2020年12月9日に開催した第3回勉強会の様子をお伝えします!

「友達」が集まるホステル、NINIROOM

BKK西濱

1人目のゲストは姉妹でNINIROOMを運営されている西濱さん。
NINIROOMは、築40年の印刷会社のオフィスビルをリノベーションして2017年にオープンしたホステルです。(今月で3周年、おめでとうございます!)

「寝るためにお金はかけたくないが、地元の人と交流したい」という西濱さんご自身の旅の経験から、「京都に住む友達の部屋」をコンセプトとして運営されています。そのコンセプト通り、予約サイトを介さない直接予約が4割と、友達の紹介で新たな人が来てくれる循環が起こっているそう。

また、NINIROOMでの地元の人とゲストをつなぐ取組みとして、webメディアとスタンプラリー帳を紹介してくださいました。ご近所メディア「おとなりさんと、よそさん」は、地元の人がなぜこのエリアに住むのか、旅行者がなぜこのエリアに来たのか、2つの視点から地域を見るwebメディアです。

また、地元の人と旅行者が話す機会をつくるために、近所のお店や観光地が載ったスタンプラリー帳「NINIのご近所おさんぽ帳」をつくられました。

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こちらは、昨年度の京都市「地域と宿泊施設の連携事業補助金」を活用され取り組まれた事例です。オープン当初から繋がり続けた方々をじわじわと巻き込み、1つの冊子としてまとめ制作され、手帳には地域の商店や隠れスポットが複数掲載されています。

イノベーティブな老舗、綿善旅館

BKK小野

2人目のゲストは、創業1830年の老舗、綿善旅館の若おかみ小野さんです。
綿善旅館は、当時薬商を営む傍らで行われていた簡易な宿から始まり、今年でなんと190周年を迎えられたそう。

「お客さんの一生の思い出をつくりたい。宿の名前は忘れても、体験は忘れない。」

そのためにはスタッフがハッピーに働いていることが大切ということで、変形労働時間制を導入したり、評価制度、研修制度などを時代に合わせてどんどん改革されています。

また、コロナという忘れられない節目となった190年目に実施された、新たな取り組みをたくさん紹介してくださいました。

コロナで学校にいけない子ども達や、外に出れずストレスが増えているご家庭の話を聞き、ストレス発散や家庭での話の種になるようにと、小野さん自らがパンダの着ぐるみを着て公園で板前弁当を販売したり、寺子屋として56畳の大広間を開放したり、大学とのコラボ企画や出張修学旅行の企画を進めたり。

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このように、スタッフがハッピーに働ける環境を整えながら、社会で必要とされていることを種まきのようにたくさん実施されたのが印象的でした。

国際交流の拠点、FUJITAYA Kyoto & FUJITAYA BnB

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3人目のゲストは、インバウンドの専門家で、トリップアドバイザーで京都1位を誇るFUJITAYA Kyoto、FUJITAYA BnBを運営されている藤田さん。

キャンピングカーでの海外旅行経験が豊富で、現地の方と地元の方をつなぎたいという思いから、コロナ以前はゲストハウスで毎週のようにたこやきパーティーをされていたそうです。

現地の方と地元の方が一緒にたこやきのタネをつくってみんなで回すのは、国際交流を体現すると思ってやってきました。それ以外にお花見、流しそうめん、もちつきなど、日本の季節を感じるイベントを地元の人、ゲストとともにやってきました。その体験の評価がトリップアドバイザーでの評価につながっていると思います。」

コロナ禍ではオンライン宿泊を始め、これまで通り「熱くて円満な」交流の場を実現されています。参加されたほぼ全員が「リアルでFUJITAYAで乾杯しよう」と、未来の宿泊を約束してくれているのが素敵な場だなと思いました。
「オンラインでつながってリアルで乾杯」という言葉が印象的でした。

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その他、京都の事業者との連携事例として、京都のブリュワリーをゲストに呼んだり、近所の喫茶店と連携したりもされています。FUJITAYAでの宿泊者には、マスターがフルーツカッティングをサプライズで提供してくれることもあるそうです。

ゲストトークセッション

三者三様の宿紹介の次は、ゲストのみなさんでのトークセッション。

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お互いの話から触発され、コロナ以前~最中のよかった取組みについて話が膨らみました。

「コロナ以前は思い付きでイベントを開催していました。そこで参加してくれていた地域の人たちがご近所割(丸太町プラン)で宿泊してくれました。」と西濱さん。

キャンセルしかなく気持ちも落ち込んだ3月に、近所の人に泊まりに来てもらいたくて1か月実施した「丸太町プラン」は180組の利用があったほど好評で、苦しい時期を支えてくれたそうです。

小野さんは、キャンセル続出の中、スタッフの結束を高めたことの結果が出つつあることを話してくださいました。

「以前は沢山のご予約を頂き、日々知らず知らずのうちに追われていました。当時も最善のつもりでしたが、一度立ち止まったことで、もっとお客様のために出来ることはあると改めて思いました。それを探してプロジェクトチームを立ち上げ、1つずつ実施してきました。その結果、「綿善に勤めてよかった」と言ってくれるスタッフが続出しました。そうしたら、紅葉のときに来られたお客さんからの宿の評価が上がったんです。コロナ禍の取組みの結果が今出てきています。」

このように、近所の方やスタッフという近い距離のつながりを強くすることが、コロナという先の見えない状況で頼もしく支えてくれるんだなと感じました。地域という単位は小さくても影響力の大きい商圏として機能するのを実感しました。

そして、コロナ禍で見えてきた新しい泊まり方に話題が移っていきました。

滞在日数を増やし平日の稼働を上げるため、また、地域の方との繋がりを作ってもらいたいために、ワ―ケーションを推進しています。関東の方が多く来てくれて、それによって京都府内外のつながりもつくれそうなので、今後も月1度のペースでイベント開催予定です」と藤田さん。

NINIROOMでは、長期滞在が人気だそうです。
「いま、20代後半の方を中心にマンスリープランが人気でシェアハウスみたいになっています。家を探している間にホステルで滞在すると、友達がすごく増えているみたいです」

小野さんは、ご自身が感じた生活スタイルの変化ともに、これから目指したい観光像を語ってくださいました。

「コロナ禍で、ゆっくりと人間らしい生活ができるようになりました。これが観光に結びついてほしい。本当に京都を愛する人たちがゆっくり来てゆっくり泊まり、「いってらっしゃい」「ただいま」が交わされるような観光を、他の宿泊施設ともつくっていきたいです」 

このような新しい取組みを始めやすくするには、「小さく始める」ことと、「ボランティアでしない」ことが鍵になりそうです。

「成功しなくていいから、小さくやってみることを意識しています。誰も来なかったりするけど、自分が楽しいからやっています」(西濱さん)
「ボランティアではせずに、小さくても経済を回すことを意識しています。「やってあげる」という上から目線をなくし、サービスを提供する責任を持ってもらい、対価をきっちりお支払いすることを大切にしています。」
(小野さん)

参加者を交えたセッション

ゲストトークでたくさんヒントをもらった後はブレークアウトルームに分かれて、参加者同士で感想やお互いの取組みを話し合いました。

参加者のうちで宿を運営されている方が多かったので、経営的に厳しい時期を乗り切る取組みの紹介は、みなさんにとって学びとなるものでした。

ゲストハウスを運営されている方は、飲食店やコワーキングスペースとコラボしたのが宿泊者に好評だったそうです。

「近くの飲食店で使えるクーポンを独自で発行して宿泊プランの単価を上げ、クーポンでの割引分を宿の収入とする形で提携しました。コワーキングスペースとコラボして1ヵ月プランを販売したのも人気で、長期滞在が増えました」

このように、宿の運営者同士だから広報のことや経済的なことを同じ目線で話せて、前向きな相談会のような時間となりました。

また、宿を転々としながら作業療法士として働かれる方からは、「泊まりたくなる宿の条件」を話してくださり、新たな視点から宿の運営のヒントが得られました。

「牧場で馬と触れ合えるなど、珍しい体験を提供している宿なら行きたいと思いますし、目的意識も高まります。

宿を運営する方、泊まる方、それぞれの目線から意見を交わし合って、話題の尽きない30分間でした。

参加者のみなさんからの感想

地域住民と旅人とまちのハブになる、人と人を繋ぐ仕事、というキーワードがアツいなと思います!自身が事業を始めたいと思っていますが、元々考えていた、コンセプトだったり軸というものをもつことの重要性をより感じられました。
皆さんの取り組みも面白いものばかりだったし、泊まりに行ってみたいと思える宿を知れて良かった。収益性の少ないイベントや地域活動も、後の宿泊者につながることを学べてよかった。
綿善旅館さんの話でパンダでお弁当を売る理由として一瞬でもコロナの事を忘れて貰えたらなってお話を聞いて、一つ一つの行動の中に様々な思いが入っていて、僕もビジネスだけの考えだけじゃなく、何かをする事の意義を大切に今後はなにか行動しようと思いました!

昨年の「オーバーツーリズムでは?」という状況から一変し、今年は「観光客が来づらくなって困る」という状況での勉強会でした。

いま、宿泊施設の方が同じ状況で運営の方向性を探っているからこそ、今回の勉強会はオンラインで様々な方がご参加いただけましたし、観光をリードする京都を中心としてこれからの宿と観光を考えるこの機会はとても意味がある時間だったように思います。
ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました!

次回は少し違った切り口からお話を聞ける勉強会ですので、次回もたくさんのご参加お待ちしています!


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