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K君との日記 #3 出会い編



宇宙でふわふわで相思相愛の巻


私ね、昔はずーっと宇宙のお空を飛んでたの

真っ暗で、宝石みたいなお星様がキラキラしてて、

私はその中をふわふわ飛んで、
ピンクや、ブルーや、黄色、緑、オレンジ、
ぎんいろ、きんいろ、いろんな色に変わってて、
キレイな金平糖みたいなキラキラした宝石が私の中にあったの

とーーーっても、キレイなの

だから、私、時々お空を見て泣くの

おかっちゃまに会いたいヨーオ、
おとっちゃまに会いたいよーオ、
みんなに会いたい、
帰りたい、かえりたい、寂しいよー
ひとりぼっち、
いやいやよーオ、
って。

泣いて泣いて。
なんでだか分からないのに、悲しいの。


私は普段、お父さん、お母さんのこと、
「おとっちゃま、おかっちゃま」なんて
呼んだことないのに、なんか、変なのよねーえ。

でもね、私、覚えてるの。

白やピンクやムラサキ、
とーっても、とーってもキレイなキレイな
ふわふわした自分のことを
お外から眺めてみたいなあ、って
ずーっと思ってたの。

ずっとずっと思ってたの。

だからね、もう一人の自分を作ってみたの!
そしたらねー、ほしたらねーえ、
この自分を見つけたの!

だから、わたし、この自分にしたの
だから、わたし、自分のこと、
だーいすき!


自己紹介 と、いつもの日常が続いています


こないだグレートセントラルサンで霊的自殺をしたわりに、
私は毎日それなりに平穏な日々を過ごしていた。
いや、全てを流していただけかもしれない。

心は呆然としながら、嫌なことはあまり考えたくないので、
日々を淡々とこなしていた。

あれから、グレートセントラルサンの溶鉱炉には
たびたび浸かりに行っていて、
とにかく自分を、自分の肉体、自分の存在そのものを
保たなくていい、というのが最高に心地よかった。
なんだか自殺のつもりが、今じゃ温泉かなと思う。
(なんじゃそりゃ)

K君とは喧嘩したまま、1週間くらい連絡をとっていなかった。
ほんの些細なケンカ。

でもなぜだかあの日、私はひどくひどく落ち込んで、
泣いて泣いて人生が終わったような気がして、
だからあんな挙動にでたのである。


私は横島マツ子と言います。
よこしまっこちゃんと呼んでください。

読者の皆様の興味を惹くため、また、イメージの助けとなるよう、
無理矢理にでも外見を例えます。
外見は、笑うと目がなくなるかんじの女優さんや、
元アイドルの人に似ていると言われます。
(決してそっくりじゃないです、強いていえばです)

年齢はアラフォーで、まだ結婚もせずに実家に住んでいます、はい。

そうです、年下の男性と恋愛をして、
結婚できるのかできないのか、
この人でいいのか、私でいいのか。
いまだに結婚にも踏み切れないような、
そんな日々の葛藤が、私の気分を重くしていた。

でも、豆腐メンタルの割には、
今までも結構いろんなことを乗り越えてきたという自負が、
私を開き直りの境地に無理やり引きずっていき、
まるで何も考えないようにしていた。

K君のことも、ケンカのことも。
これからの2人の関係のことも。

この意識の変化となるきっかけが
恋愛だけの変化にとどまらないことを
この時まだ私は感じられずにいたのです。


馴れ初めはといえば


私がK君と出会ったのは、前の会社にいた時である。
私が入社する時には、彼は入社2年目に入ったところだ、
と確か言っていた。
入社したての私に仕事を教えてくれたのがK君だった。

いろんな人が、いわゆる「運命の人」に会った時に
「将来この人と結婚すると思った」ということを話しているが、
それはある意味、そうしたいと願う本人の希望や意思も含んだ
選択の後付けでもあったのではないだろうかと私は思う。

時間は過去から現在、未来に時間が流れていると思われがちだが、
実は、時間は未来から、現在、過去にも流れているのである。
だからかなー、なんてことも思っている。

初めて彼に会った時の印象は、爽やかな若者、って感じだった。
その印象は、彼がおそらく私より年下とは分かっていたけれど、
とにかくその時彼が着ていた薄水色のシャツのせいでもあったのかもしれない。

例に漏れず私も、
「あれ?もしかして私この人が運命の人だったりするのかな?」と思った。
K君に聞いたところによると、どうやら彼は私に一目惚れだったらしい。

自意識過剰で自分の容姿に自信がない私が、なぜそう思ったかといえば、
とにかくK君は初対面の時から、めちゃめちゃ私をガン見しまくってきたからであった。

あまりにもガン見され、また、緊張しているような挙動がおかしい彼に
私は心配になっていたくらいだった。

まあ、初対面だし緊張もするだろう。

私はとうに結婚適齢期は過ぎていたし、同世代はみんなお子さんを2人くらい産んでいる。
結婚はしたいなーと思いつつ、でも自信がないしめんどくさいしな、
勉強したいことがたくさんあるしなって思っていた。
(それ以上のめんどくさい理由はこれから書くよー)

何より恋愛している時の精神状態が最悪で、二度とイヤだよ、
という気持ちの方が大きかった。
何より私は自分が変わっている、変人だという一点の曇りなき
自負と自身があった。
そんな私には、結婚、出産、普通の家庭をきずく
カタギの幸せなど許されない、とでもいう諦めのような、
覚悟のようなものがあった。

また彼と出会う1週間ほど前はちょうど七夕で、
地元の神社に行ったら七夕の短冊が用意されてあったので、
軽い気持ちで転職活動の成功と、
ついでに素敵なパートナーとの出会いをその短冊に書いて
笹の葉にくくりつけ、願っていたところだった。

それなのに、自分が願っておきながら人間とは勝手なものである。
(地元の神様、ごめんよ…)

私がその時に転職活動の成功とともに、いやそれより何より
昼も夜も寝ても覚めても熱く願っていたのは、漫画家になるという夢だった。(え?別のエッセイに飛んだ?と思った読者の方ごめんなさい)

そう、そのころの私は寝ても覚めても
漫画の修行に明け暮れていたんである。
あるきっかけで、中学生時代以来、何十年かぶりに
「漫画家になりたい。自分が作った物語を世に出したい」
という思いに取り憑かれ、ある意味そちらにぞっこんだった。

寝ても覚めてもその夢に浮かされていた。
そう、まるで恋愛のように。
遠く輝くスターに憧れるように。

ランチタイムには一人で近所のカフェに行き、
小さなメモ帳とスマホを取り出し、デッサンポーズのスマホアプリを
ガン見しながらランチタイム中、デッサンに励んだ。
(最近はなんでもアプリがあるのねー、便利ねーとか言いながら)

ランチタイムに食事を楽しむ気なんて元からなく、
いかに多くの時間を練習に費やせるか、
そのことしか頭になかった。

寝ても覚めてもそのことしか考えられなかった。
美しいものや芸術は、いつも私を虜にして、離してくれない…
私の恋は、いつもこんな風だった。
生身の人間よりも恋焦がれていた。

いつだってそう、対象物がデッサンじゃないだけで、
私の人生の時間は常にそんなふうに今習得したい技術や、
勉強したい事柄に熱中することで過ぎていった。
(といっても疲れてやる気がない時は、主にスマホでテトリスやってましたあー)

だからなんである。
だから「なんで今なの?」だったのである。

恋愛に捕まると、もうそのこと以外まともに考えられなくなる、
だから「めんどくさ」だったのだ。

彼に出会う数日前には、漫画家になるという心願成就のため
また別の神社にお参りに行っていて(神頼みしまくりだよオイ)
行き帰りの移動中にはどの漫画ソフトを買うか、タブレットを買うか
あんなに悩んで悩んで、やっと目ぼしい機種も2種類くらいに絞れていたのに。

イラストやデッサンが上手くなるよう、
神絵師の人たちのyoutubeチャンネル登録数は日々怒涛のように増えていき、Amazonでは新品中古を問わず人物や背景のデッサン用の書籍を選ぶことに翻弄され、休みの日にはBL漫画を読み漁る。
ここ最近はそんな日々を送っていた。

私の漫画脳はかなり症状が進んでいて、最初にK君と会った後日、
彼の風貌が大好きなBL作品に出てくる男の子(受)にちょっと似ているせいで「これ絶対運命だよなー」と思ったくらいだ。

そんな不純な動機と出会いに胸を膨らませながら、
もしK君と深い仲になったら、おちんちんのデッサンに活かせる、よし!と、本気でそんなことを考えていた。
本当に頭がおかしい。
でも、それがまっこちゃんなんである。

許してくれ、K君。
私はそんなよこしまな目で君をみていました。

例によって例の如く、
私の関心は漫画より、K君との色々、
そしてそれをきっかけにして、今まで以上に
大きく人生がシフトしていくこととなったのだ。

そういえば彼と出会った初夏のその日、帰り道ではゲリラ豪雨に遭い、
「龍神様の祝福ねー」と勝手に意味づけしながら帰ったが、
その数日前にお祈りした神社は芸術の神様である弁天様を祀っていたので、
案外ドンズバだったのだろうな。

私は龍神様が好きだし、龍神様からも愛されていると思っている。

うん、結局は相思相愛だね。

ーつづくー



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