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漫画語りー5.青い情熱に泣かされた漫画<BLUE GIANT & SUPREME>

はじめに

こんにちは、マッチロと言います。

ぼくは漫画が大好物で、これまで何作品か読んで楽しんできました。その中で感動して印象に残った作品がいくつもあるわけですが、このnote上で、ここが好き、これを学んだ、等の自分の感想や印象をとことん綴っていこうと思います。読んだことない人のために作品の魅力をできるだけネタバレしないよう紹介するつもりです。拙い箇所もあるかもしれませんが、漫画が同じく好きな方は少しお付き合い頂いけると幸いです。

今回はぼくの大好きな作品の一つ、宮城県仙台市の高校生が世界一のジャズサックスプレイヤーを目指す青春音楽漫画、
『BLUE GIANT』&『BLUE GIANT SUPREME』(※現在も連載中)  です。

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若い心で今を生きる

 主人公、宮本大のジャズとの初めての出会いは中学校の友人に誘われたジャズライブでした。それからあるきっかけで彼はサックスを手にしてからというもの、ほぼ毎日のめり込むように練習します。暑い日も寒い日も、雨の日も雪の日も、世の中がイベントに興じてる日も、ライブの次の日も。

努力は夢中に勝てない」という言葉がありますが、大の練習風景はまさにその言葉を体現してます。

前回の『ブルーピリオド』の主人公も高校生から物語がスタートしていますが、どちらも読んでいると、この青年期の重要性に気付かされ、改めて"若い"っていいなあ、と感じます。まっすぐ何かに打ち込んでる大を見てると、
ぼくも青春時代に何かに夢中で打ち込んでたらなあ、とつい羨ましくなりますもの・・・。

じゃあ、青年期を過ぎた人は読んでも意味がないか、というとそんなことはなく、むしろ何か心がたぎる気持ちになって元気をもらえます。たとえフィクションであっても、青年が本気で何かを目指してるストーリーは応援したくなるものです。

かつてアメトーークで麒麟の川島さんも、
読み終わると夜中でも外へ走り出したくなる
と感想を述べていました。
めちゃくちゃ共感します。それくらいほとばしる気持ちになっちゃうんです。

また、大から"今"という時間の大事さも気付かされるでしょう。
彼は"常に前を見ながら今を全力で吹き抜く"をモットーとし、演奏時には"おれの音を聴いてくれ"と自分を積極的にアピールし続け、行動力でもお金も言葉も半端なのに単身海外に挑戦します。

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(▲第二部8巻の大とアーネストが話すシーン)

こういうスタイルのために、『SUPREME』のヨーロッパ編で大はメンバーからセルフィッシュな人間と評されますが、そのジャズに"今"を捧げる情熱が本番の演奏を後押しし、聴く人を次から次へと圧倒させ、感動を与えていくのです。

"今"が大事という考えは、元MITラボ所長、伊藤穰一さんのプレゼンが参考になるでしょう(時間がない人は10:00からどうぞ)。

最終的に大はジャズの本場アメリカに進出するでしょうが、そこで彼がいままでの場数を糧にどんなビッグプレイヤーに成り上がって、どんなプレーを見せてくれるか。今後の活躍が楽しみです。


石塚先生の描写テクニックによる魔法

 また川島さんは「漫画から音が聴こえてくる」ともおっしゃてました。

普通に考えたら紙から音が出るなんてあり得ません。
だから音ありきの音楽モノは漫画界でリスキーなテーマなんですけど、それを克服するために石塚先生は、楽器の擬音、音符、キャラクターの表情、パワフルなスピード線、音楽のテンポを意識したコマ割り・・・等あらゆる要素を使って自由に演奏を描写しています。

その表現ぶりに「音をこう描くのか」と感心するのですが、読むうちにジャズならではの激しさと熱情が伝わって、大たちの演奏に不思議と音を感じる気がするのです。とにかくこれは実際に読まないと感じられません。

また音の表現以外にも石塚先生は、風変わりな演出を施しており、たとえば

セリフを一切出さずに絵だけで話を進める回や、
同じ大きさのコマを配置してキャラの会話や心情を表現する(例:第一部9巻の沢辺雪祈のワンシーン、下図)等、

まるで漫画にもジャズの自由さを取り入れてるようで面白いです。
他のマンガで類を見ないような構成と表現を出してくる、石塚先生の発想力と挑戦する勇気に脱帽します。読めばきっと皆さんも、新しい視点と面白みを得られることでしょう。

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リアリティが涙を誘う

 主人公の個性と描写に加えて、なんと言ってもこの漫画の魅力は、
夢を追いかける人ならではのリアリティに溢れたストーリーです。その中で個人的に教訓になるような内容がいくつかあったので以下に紹介します:

最初に失敗はつきもの

 いくら各登場人物の演奏が優れてて魅力的でも、この漫画では初めての挑戦に対してちゃんと失敗を描いています。失敗の展開は読者も残念に感じますが、現実では全然起こりうることなので逆になんか安心します。彼らだって最初からうまくいくわけじゃないんだ、と。だからこそ、そこから彼らが失敗をバネに這い上がろうとする過程にすごい勇気をもらえます。

音楽で食っていく覚悟の代償

 代償とは主にお金ですが、ぼくはミュージシャンのお金事情を描いてる点が他の音楽漫画と一線を画してると思います。楽器代、ギャラ代、生活費など金額がリアルに描かれていて、「ミュージシャンが本気で音楽で飯を食っていくというのはどれだけ大変なことか」、がよーーくわかるでしょう。登場人物たちが掛け持ちでもアルバイトしながら時間の合間にひたすら練習してる姿はつい感極まります。

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(▲第一部4巻で工事現場で働く大のシーン)

人との縁はめちゃくちゃ大事

 「バンドはその時だれと組むかが一番大事」というセリフが作中に出てきますが、これって音楽バンド以外でも大切だと思います。ある目標に向かって誰かと協力して同じ時間過ごすなら、中途半端な人より同じくらい技術も熱意もある人の方が自分も成長するはずです。ペイパル創業者のピーター・ティールも最初の人選が大事と言っています。

何かを始めるにあたって 、最も重要な最初の決断は 、 「誰と始めるか 」だ 。共同創業者選びは結婚のようなもので 、創業者間の確執は離婚と同じように醜い 。どんな人間関係もはじめは楽観的なム ードに包まれている 。うまくいかない可能性を冷静に考えると興ざめなので 、誰も考えない 。だけど 、創業者の間で和解しがたい対立が生まれると 、その犠牲になるのは企業だ。



人の縁つながりで言うとぼくは、大の周りの人がなんでもない素振りをしながら実は裏で身を削って支援する場面にいつもうるっときます。特に大の兄ちゃん、師匠の由井さん、ピアニストのブルーノの3人。めちゃくちゃ粋な計らいをしてて男前です。


おわりに

 このように『BLUE GIANT』はストーリー上でグッとくる感動ポイントがいくつも出てきます。一つ一つ場面を挙げていったらキリがないくらいです。ちなみに、第一部の10巻は賛否両論の評価がありますが、ぼくは大泣きしました。

音楽を奏でる楽しさを少しでも知っている人は間違いなくこの漫画を好きになるでしょう。ぼくはまだまだジャズに疎いですが、なぜ人がジャズに魅了されるのか、がこの漫画のおかげでわかった気がします。音楽以外にも、大が歩む軌跡から人生における大事なこともたくさん学べて、何か行動することに勇気をもらえるので是非読んでみてください。

ジャズとは何ぞや?をもっと知りたい方はこちらも参考にどうぞ▼

山下さん✖️タモリさん✖️糸井重里さんのジャズ対談



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