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#011 もう何も言えない

ガキんちょの頃、
駄菓子屋だがしやで、
50円を握って何を買おうか迷っていると、
店のおばちゃんに「はやく決めろ!」とかされました。
そのおばちゃんは、
ガキんちょたちに「あれこれ触るな!」とよく言うひとでした。

中学生のとき、
友人たちと隣町となりまちのオシャレな服屋さんに行って、
服選びをしていたら、店員さんがやってきて、
「お前ら、買う気がないなら、出て行け!」と言われました。

その当時、生まれ育った地元の少年少女たちは、
ぶっちゃけ素行そこうが悪かったです。
万引きを警戒されていたので、
そんな扱いをされるのも、まぁ仕方のないことでしょう。
時代的にも、地域的にも、まぁ納得できます。

少年少女たちもそんな扱いに慣れていました。
あまりに腹が立ったら、お店のひとに向かって、
汚いことばを吐き捨て、お店をあとにしていました。
てか、それで、チャンチャン。
お店のひとも、こちらも後腐あとくされなく終了。
あまりに日常的なことだったため、まったく問題にならず、
むしろ、笑い話のネタのひとつになっていました。

当時は、商店や飲食店などの多くが個人経営(自営)で、
接客態度の荒々しいお店も結構ありました。
(近所のお店で、顔見知りだと、逆に優しくて親切でした)

ところが、
時代がつにつれ、接客態度の荒々しいお店が激減。
厳しい接客マニュアルのあるチェーン店やフランチャイズ店も増えて、
お店のひとたちはどんどん穏やかになって、
顔見知りじゃなくても親切な対応をしてくれるように。
いまどきは、個人経営(自営)のお店も親切で優しいです。
お客側のこちらも、
お店は「親切で優しくて当たり前」と思うようになっています。

もやもや~、モヤモヤ~。

サービス業なら、親切で優しいことが当たり前?
お客さんには、ぜったい親切な対応をすべき?
親切で優しいことが、当たり前のサービスって、どゆこと?

わたしは、親切で優しいサービスを、
当たり前のサービスだとは思っていません。
がたい特別なサービスだと思っています。
だから、親切で優しいお店のひとに対しては、
心から「ありがとうございます」とちゃんと言います。
逆に失礼なお店のひとには「ありがとう」を決して言いません。

最近は、勘違かんちがい客が些細ささいなことにも腹を立て、
「サービスが悪い! 謝れ!」と怒鳴どなったりします。
彼らたちは親切で優しいサービスを、
がたい特別なサービスだとは思っていません。
だから、お店に対して、
「サービスが悪い! 謝れ!」といからしてしまうのだと思います。
「親切で優しくないお店が悪い」とか、
「客を怒らせるお前たちが悪い」とか、
『オレ様が正義』を振りかざして激怒げきどする彼らは、
いちゃもんの理屈をべていることに自覚のない、
とんだ勘違かんちがい『モンスターカスタマー』です。

そんなモンカスを、わたしは何度も見かけています。
牛丼チェーン店で怒鳴どなる若者。
スーパーマーケットで怒鳴どなるおじさん&おばさん。
身近にもいました。
ちょくちょくお店でキレた、昔の彼女。
悪いのはお店のひとでしたが、やたらしつこくて長いので、
「謝ってるんだし、もういいじゃん」と言うと、
「あんたはどっちの味方なの?」と矛先ほこさきがこっちに向いて、
今度はわたしが怒られる始末しまつでした。笑

最近は、インバウンド旅行者に、
「日本はサービスがいい」「ホスピタリティにあふれている」
などとめられて、喜んでいる日本人も多いようです。
もちろんめられて悪い気はしませんが、
やっぱり「もやもや」します。

■日本のサービスは、親切で優しいことが当たり前
■ちょっとのガッカリでも「サービスが悪い」と言われてしまう

昔っから、文句を言うお客はたくさんいて、
理不尽な要求をするお客も結構いました。
しかし昔の個人経営(自営)のお店は手強てごわくて、
お客に迷惑をかけたときは、ちゃんと謝るものの、
理不尽なお客には毅然きぜんとしていました。
そもそも滅多めったに謝るなんてことをしなかった(気がします)。
お客とケンカするお店もありましたし、
お客側もお店のひととケンカして負けるとイヤなので、
理不尽な要求がエスカレートすることも少なかった(と思います)。
てか、ケツ持ち(暴力団)がいるかもしれなくて、
理不尽な要求なんかするとヤバいかも? という恐ろしさもありました。

昔の方が良かったとは思いません。
いまの「親切で優しい」お店はとても心地いい。断然だんぜんいい。

でもわたしは、親切で優しいサービスを、
当たり前のサービスだとは思わず、
がたい特別なサービスだと思うようにしています。
ちゃんと「がたきこと」だと感謝して、
心から「ありがとうございます」と言うようにしています。

先日、医療機関に行くためにタクシーを利用しました。
出発前に地図を見せましたが、
ドライバーさんの早合点はやがてんで目的地付近に来てはいるものの、
どうやら道に迷ってしまっているようだったので、
もう一度地図を見せました。
すると、ようやくナビに住所を入力して、案内ルートを表示。
しばらく進むも、なかなか目的地に到着しません。
こちらも初めて行く医療機関だったため、具体的な案内ができす、
予約時間だけが刻々こくこくと近づいてきます。
もちろん、こちらはあせっているし、イライラ、イライラ。
ドライバーさんが再度ナビに入力して、
ようやく予約時間の5分前、目的地に到着。
ドライバーさんに悪気はないので、わたしはひたすら我慢。
ドライバーさんの方から「申し訳ありませんでした」と言われたので、
わたしの方も、文句もんくを我慢して、料金を支払い、
ちゃんと「ありがとうございました」と言って降車こうしゃ
降車こうしゃ後、走って医療機関に飛び込みました。
ギリ間に合って、すべり込みセーフでした。

最近、
カスハラ(カスタマーハラスメント)が話題になっています。
で、わたしはちょっと懸念けねんしています。
理不尽な要求じゃなく、ちょっとした文句もんくも、
「カスハラだと思われるかもしれないので、もう言えない」
懸念けねんというか、不安・恐怖です。

ただでさえ、セクハラ、パワハラ、◯◯ハラなど、
ハラの種類がどんどん増えており、
ハラハラ(ハラスメント・ハラスメント)もあるようです。
文句もんくも言えない、注意・指摘すらできない時代になってしまい、
意味不明なハラも生まれる世の中です。

わたしは思うのです。

文句もんくを言ってもいいじゃん。
注意・指摘してもいいじゃん。
度を超えていたら、今度は言われた方が怒ればいいじゃん。
どっちも「申し訳ない」と感じたら、
それぞれちゃんと謝ればいいじゃん。
謝られたら、その場で許せばいいじゃん。
周りの人も見て見ぬふりをせず、
明らかな◯◯ハラに遭遇そうぐうしたら、
◯◯ハラ側を注意すればいいじゃん。

めたらめたで、とことん言い合えばいいじゃん。
もちろん暴力はぜったいダメですが、
言うべきことは言うべきだと思うのです。

その方が、結局、
後腐あとくされなく終了するような気がしますし、
余計よけいなストレスもまらない気がします。

その場の出来事は、その場でちゃんと解決しておこうよ。

ってことです。

なので、先日のわたし。
タクシーのドライバーさんに、
最低限の文句もんくだけは言うべきだったと、
いま反省しています。


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