夏と秋の間の季節に聴きたくなる「秋 そばにいるよ」/aiko をちょっと語らせて
10代の頃、aikoの音楽がいつもそばにあった。
片思いの時も、両想いの時も、失恋した時も、
何かしらいつも悩んでいた当時の私にはaikoの恋愛ソングがぴたっとハマって、するっと心に入ってきていたように思う。
カセットテープからMDへ移り変わっていったあの時代、たくさんのCDをレンタルショップで借りてきて落としてきていたけど、
そんな中必ずアルバムを買っていたアーティストが、aikoだった。
だから私の中でaikoはシングル単発ではなく、アルバムのセットリストごとまるっと思い浮かぶ。曲が終わったあとから次の曲のイントロまで順番に、流れるように思い出せる。
主に聴いていたアルバムは・・・
「小さな丸い好日」
「桜の木の下」
「夏服」
「秋 そばにいるよ」
「暁のラブレター」
「夢の中のまっすぐな道」
「彼女」
繰り返し繰り返し聴いていたのはここまで、そこから先はぱたりとわからなくなっている。
「彼女」のあとにリリースされたアルバムが「秘密」なんだけど、よく見てみるとリリースされた2008年はちょうど私が二十歳になった年でもあり、就職で上京した年でもある。
学生が終わり、社会にもまれ、好きな人もいなく、音楽を聴く習慣がなくなった。だからか。
今まで共感していたことが少しずつ自分と重ならなくなり、フェードアウトしていった。
別に共感できることだけが音楽ではないのだけど、とにかく時間と余裕がなかったんだと思う。
中学高校は友達と通学していたし、
専門学校は家から徒歩3分のところに学校があったので(近すぎ)、今みたいに「移動中に音楽を聴く」という習慣がまるでなかった。
だから、音楽を聴く場所は決まって実家の狭い自分の部屋。
部屋の角にある棚の上に置いた、みかん色の大きなCDコンポから流れてくるあの空間こそが、青春時代に寄り添ってくれた音楽だった。
部屋にこもって、深夜に、一人で聴くもの。
それが私の好きな音楽との向き合い方だった。
ところで
私は夏から秋へと移り変わる、暑さと涼しさが混合する今みたいな季節が好きだ。北海道の秋は短いので、その期間限定の儚さもあいまってなんだか惹かれるのかもしれない。
あと、個人的に恋愛の始まりが秋が多かった(当時)っていうのも関係しているのかも。
そんな季節に思い出すのが「秋 そばにいるよ」というアルバム。
このアルバムは2002年9月に発売されたので、今から20年ま・・20年前ェ!?書いててびっくりした。発売から20年経ったようですよ奥さん。
シングル「今度までには」「あなたと握手」「おやすみなさい」の3曲を含む、全13曲が収録されている。
秋 そばにいるよは、明るくポップな曲よりも、落ち着いてしっとりした曲調の落ち着いたラインナップが多いように思う。
それこそ、肌寒い季節に寄り添ってくれそうな、あったかいコーヒーのようにほっとさせてくれるような・・・それでいて物憂げな雰囲気もなんとなく漂っている。
というわけで今日は、久しぶりに聴きたくなった「秋 そばにいるよ」を思い返しながら、1曲1曲私の思い入れと解釈、aikoの良さを語りたくなったので語らせてもらってもいいですか?(勝手にどうぞ)
聴いたことないよーー興味ないよーーって人は「何の話をしているやら」と、ちんぷんかんぷんだと思うので、ついてこれる人だけついてきてください。
1、マント
このイントロ開始2秒でよみがえる記憶。これだよこれ。アルバムをセットして再生▶ボタンを押して流れるこのチャララン、ポロロンとしたピアノのイントロ。
「頑張ろうよ もっと 胸をはって 辛いのはあたしだけじゃない」という歌詞と軽快な歌声に勇気づけられる。
あと、「舞い落ちる」「舞い降りる」という歌詞が何度も出てくるんだけど、それが明らかに舞い上がっているようなメロディでそれがaikoの作曲の面白いところ、って何かで読んだ気がする。ほんとそれ!
aikoは歌詞だけじゃなくて、そういく!?っていう、凡人には到底思い浮かばないようなメロディラインを作る天才でもあるので、そこもまた面白い。
2,赤いランプ
こちらはエレキギター(?)がかっこいいアップテンポな曲。離れてしまいそうなふたりの現状を、電池が切れそうなゲームの赤いランプに例えている。aikoあるあるの「別れの歌を明るい曲調で歌い上げる」歌。
ってこんなフレーズ大人になって書ける?書けないよ!
あとこの曲を聴くと首都高を車で駆け抜けているような、夜の高台を自転車で爆走して街並みを見下ろしているような、快速で止まらない電車内で窓から外を見ているような、そんな光景が目に浮かぶ。そういうシチュエーションで聴いていたわけではないのに。(妄想力が豊かすぎか)
3、海の終わり
こちらも、失恋ではないけどふたりの関係を不安に思うような1曲。気まずくなってもう修復できないかもしれないけど仲直りしたい、と切に願う歌詞が印象的。ちゃんと大切にしなかった後悔って誰しもが経験あると思うんだけど、それを叫ぶように歌っている。
そう、この曲息継ぎどこでするん?ってくらい肺活量が必要なロングトーンが駆使されている。叫んでいる。
「なーーかーなーーおーーりーーしようよーーふたりぃーーついたーーーーー傷ーーーをふさごぉおおーーーーーー」
って伸ばし棒を乱用したくなる!一度聴いてみてほしい。
4,陽と陰
この曲はちょっと情景が浮かびにくく、内容が難しい。aikoには珍しく恋愛の歌ではないような。嫌なことや壁にぶち当たった自分への応戦ソングのような気もしている。曲調が好き。
何度も出てくる「グリーンランド」ってワード、、まさか三井グリーンランドのことではないよね?(北海道にあるローカルな遊園地)
5,鳩になりたい
いや鳩になりたいて。鳩になりたいとは思ったことがないのでaikoの感性はすごい。これは私的に初期のaikoを思い起こされるような曲調というか楽器の使い方だなぁと思った。
鳩になりたいと言っていたかと思えば「ナマズになりたい」とも歌っているのでaikoの感性はやっぱりすごい。
ここの歌詞とかもそうだけど、なんとなく遠距離恋愛が連想される。
離れているともやもやして、同じ空なのに自分だけくすんでいて相手はきらきら輝いて見えるような、ひねくれた考えにになることもあるよね。
6,おやすみなさい
9thシングル。
シングル9作目にして、初の別れの曲。ゆったりとしたテンポのバラードなんだけど、「カブトムシ」のときと同じようなaikoの伸びやかなロングトーンが心地よい。
歌詞が、“このままの関係でいることはできない、諦めなければいけない”と自分に言い聞かせているような切なさが溢れている。
と言ったかと思えば、しばらくの間奏のあとすぐに
って続くんですよねえーーーー!!
この「今も好きだよ」を挟むことの重み。
「バイバイ」「さよなら」「またね」などの別れを表すではなく、
あえて「おやすみなさい」というタイトルとフレーズを使うことで、より切なさが倍増している。
この曲は遠距離恋愛中の恋人との別れ、との解釈もある。
そんな相手と普段夜に電話をしていて切るときに「じゃあね、おやすみ~」と言ってから切る習慣があって、(aikoが実際にそうらしい)
別れる時も直接ではなく電話で、ラストの「過去を愛しく思えるように心込めて~」の歌詞が、せめてもの反抗じゃないけど・・・いつもと同じ切り方をすることで相手にも何かを感じてほしいという願いみたいなものがうかがえる。
・・・ちょっと何言ってるかわかんなくなっちゃった(自己完結サンドウィッチマン)
↑何回読み返しても自分で何言ってるかわかんなくてちょっとウケた
7,今度までには
11thシングル。
「おやすみなさい」からの流れでなんと2曲連続で別れの曲。
こちらは、相手に対して ん?と思うところがありそこからどんどんズレていってしまうような、おやすみなさいとは全く別の状況が浮かぶ。
で、終わる。
「きっとそうだあたしはあなたの・・・」何?あなたの何!?という終わり方だけど、冒頭歌いだしでは「きっとそうだわたしはあなたの 言うことすべてに応えてきたつもりよ」と歌っているので、そこへ続くのか、また違う言葉へと続くのか・・・聴く側に想像を託されるような、余韻を残す歌い終わりが良い。
8,クローゼット
こーれはトランペットの音と小太鼓(ドラム?)のリズムがくせになる、マーチのようなノリノリな曲だけど、これまた内容は両思い幸せハッピー!っていうものではない。でもすごい可愛らしくて好きな曲!
経験あるんだよなーー!日記帳でも、プリ帳でも、mixiでも…たまに引っ張り出してきて読み返したくなる時があるんだけど、そこにはほんとに無造作に当時の好きな人(または彼氏)のことが書かれてある。
そこまで赤裸々に書かなくても…ってくらいその時の心情や出来事をつらつらと書き殴る昔の自分はある意味別人のようで、でもちゃんと思い出せる。
あたため直すことはさすがにもうないけど、思い出をなぞって懐かしむことはこれからもするかもしれない。タイトルのクローゼットも本当に秀逸だと思う。しまいこんでるんだよね。
私はつい最近、90年代に流行った「プロフィール帳」をクローゼットの奥の奥からひっぱり出してきた。
小~中学生のときにみんなに書いてもらった恥ずかしい回答を握っているので、何かあったらいつでも流出する準備はできているよ(最悪)
ちなみに自己プロフィールでは、
「10年後の自分は?」の問いに対して「酒飲みになっているかもね・・・」と書いてあったので、当時(12歳)の自分に「アラサーになってもほろ酔い1缶で出来上がってしまうくらい酒飲みとは程遠い生活をしているよ」と教えてあげたい。
話それました。
9,あなたと握手
10thシングル。「ボーイフレンド」っぽいさわやかでアップテンポな曲で、aiko節が炸裂している(私見です)。
海の終わりと同じ世界観というか、“どんなことがあっても最後は仲直りする”というメッセージ性を感じるところが似てるなぁと。
同じ「手と手を重ねること」でも、「手を繋ぐ」と「握手」では意味が違ってくる。
握手は心を開く最初の挨拶にもなりえるし、和解の印でもある。相手との距離を縮める行為だと思うんだけど、そんな握手を題材にして曲をかけるaikoがさすが。
恋人として手を繋ぐことも大事だけど、人と人として握手できるような関係を忘れないでいたいというようなどっしりとした器を感じた。あくまで私の解釈だけど。
10,相合傘(汗かきmix)
こちらは原曲があってそれのアレンジだそう。汗かきmixってどんなアレンジ!?柔道部の稽古場みたいな!?外周30周走ったあとみたいな!?って思うけど(思わん)、ロックな雰囲気に仕上がっております。私も元のアレンジを聴いていないのでこれしか知らないんだけど。これはライブで盛り上がりそうだ。
そんで相合傘というタイトルからは想像できないようななんとも報われない曲。全然両想いじゃない。
長い渡り廊下のある学校に通いたかったーーー。長い渡り廊下で好きな人と目が合ったら、そら、誤解してまうやろー!惚れてまうやろー!気を付けなはれや。(なんだっけこれ、この芸人誰だっけ)
11,それだけ
ラスト3曲、ここから怒涛のバラード3連発!
重め×重め×重めの流れのスタートをきるのが「それだけ」。
このアルバムの中で私がいちばん好きなトラック。20年前なのに、今でも歌詞がするすると出てくるくらい聴き込んだ曲。
すぅっと吸う息がかすかに聞こえたと思ったらイントロもなしに急に「ただ あなただけ ひとつだけこの気持ちはここにしかない」っていう力強い歌声で始まる。
とにかくこの入りの「ただ」の部分の音程の難しさったら。音符にしづらそうな、不思議なaikoらしい音程だ。カラオケでうかつに歌ったら100%事故るやつ。
そして歌詞よ。ゴリゴリに恋するまっすぐな乙女。重めな歌詞が当時の私にぴったりだよ(白目)(恥)
ピアノの伴奏だけのシンプルな構成で、aikoの声がどストレートに入ってくる。“あなたのことが好きだという気持ち”をこれでもかというほど直球に歌い上げた壮大なバラード。
ウッ・・・・・今の私にはこれはピュアすぎて、まぶしすぎて直視できない…これを大人になってから書けるaikoは本当にすごい(さっきも言った)。
何度も同じ言葉を繰り返すことで、自分に言い聞かせているようにも思える。恋愛につきものの不安な気持ちを飛ばしてやるという強い決意さえ感じる。
名曲。
12,木星
急に不穏な感じ。オーケストラのようなイントロなんだけど、なんだか、映画で何かが起こりそうなときにかかるBGMっぽい(何それ)
常に♭がついているような(実際には知らんけど)、途中で転調もあってとにかく不思議なメロディー。幻想的ともいえる。
「じゃあね木星についたらまた二人を始めよう」なんてフレーズどうやったら思いつくの。どういうことなの。
13,心に乙女
重め3連発とは言いましたが、オルゴールのようなイントロとあどけないような可愛らしい歌い方から入る可愛らしい曲!(急に頭痛が痛いみたいな語彙力)
ベッドに入って、布団をかぶりながら聴きたい曲。
いやっ乙女よこれは本当に。
残念ながら私の心の中の乙女は冬眠しているな・・消えたとまではいかない、たぶん冬眠。
それはそうと、聴き終わったあと、「胸がじ~~~~んとする」という表現がぴったりな感覚になる。余韻がすごい。静かに拍手をしたくなる。(パチ・・パチ・・パチ・・)
これが〆の1曲ってナイスセレクト!と個人的に思う。
さて。「秋 そばにいるね」の全曲レビューが終わったところでふと、aikoの楽曲はいま一体どれくらいあるんだろう?と気になって調べてみた。
調べ方が間違えてなければおそらく、442曲。
ヒィッ!!
aikoは今年(2022年)でデビュー25周年。
その間、一途にぶれずに愛の歌をずっと作り続けていることが純粋にすごい。こんなアーティストはそうそういない。
「白って200色あんねん。」と言うのがアンミカなら、
「恋愛って400色あんねん。」と歌うのがaikoだ。
(うまいこと言うたった)
今回はたまたま「秋 そばにいるよ」の中身を紹介したけど、このほかにもたっっっっっっっくさん語りたい名曲が山ほどある。
しばらく離れていた私ですら、昔を思い返してこんなにも楽しく懐かしい気持ちにさせてくれる。
きっと誰しもが、442曲の中からぴったりとハマる1曲があるはずだ。
まずは、
部屋で窓を開けて、すっかり涼しくなった夜風を感じながら「秋 そばにいるよ」を聴いてみてはいかがでしょうか?(締め方がなんかくさいな・・)
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