県内どころか中国地方でナンバーワンの超進学校に通っていた慎吾ちゃん。中高一貫男子校GI、それはつまり、理系であるということです。
慎吾ちゃんは理系。そのことが彼のダンスに多大な影響を与えていたと思うのです。
私たち昭和の視聴者は、それまでのアイドルが踊ってきたダンスとは全く違う踊りを慎吾ちゃんによって目の当たりにしました。何が違っていたのか。それはもちろんブレイクダンスの動きが私たちにとって新しかったからということもありますが、違いはもっと深いところにあるのです。
慎吾ちゃん以外理系のアイドルは存在しませんでした。当時のアイドルは皆十代デビュー。アイドル活動をしながら理系コース、つまり数Ⅲ、つまり微分積分をこなすことはまず不可能。ではなぜ、慎吾ちゃんは理系なのにアイドルだったのか。それは、元々アイドルになるつもりなんてなかったから。その上、十代でもなかったのです。顔が可愛かったばっかりにアイドルになってしまいましたが、レコードデビュー時には既に成人した大学生でした。
“歳ひとつサバ読んでたけどね” ロッテ 1984
理系の課題に向き合うには、文系の暗記科目と違い、数式を立て計算処理をするという能動性が要求されます。教えてもらうよりも解説を読むよりも、独りで考え独りで解きたい。自分でやりたい。理系脳を持つ人はそういう傾向にあります。
能動性。教えてもらおうとしない。レッスンも受けてない。自分からやる。自分でやる。それはブレイクダンスの真髄。
慎吾ちゃんが在籍していたのは、難関で多忙な工学部。工学の究極の目標、それは「ものづくり」。
専攻は機械工学。物理を駆使する学問です。物理、つまり力学。動きにどういう力が働いているのか。原理はどうなっているのか。そういった視点が、きっとブレイクダンスの技の習得に活きていたでしょう。
物理のベースになるのは数学。数学の真髄は論理的緻密さと抽象化。慎吾ちゃんのアクロバットの際立って美しい姿勢、合理的で几帳面な技の動き。それは緻密さの追求から来ているのかも。
そして抽象化。歌詞を具体的に表現する「振り」で表すのではなく、歌詞の内容を抽象化した動きを紡ぐダンス。「take a chance」を抽象化した踊り。
挑むという概念を自分はどう踊るか それがブレイクダンス
挑むという概念をキミはどう踊るか それがブレイクダンス
2023/3/3