慎吾ちゃん ブレイクダンスの衝撃
2000年代初めごろ、私はストリートダンスの催事運営に関わりました。エンタメ系の事業ではありませんでしたが、その時、やはり慎吾ちゃんのことを思い出しました。ストリートダンス(⇒ブレイクダンス)と言えば風見慎吾しか連想しない。それだけ『涙のtake a chance』1984 は昭和キッズには衝撃的でした。
何に一番驚いたかと言うと、自身の体を自分の意思で動かしているのではなく、外部からの力、つまりリモコンか操り糸かベルトコンベアかで「動かされている」ように見えたこと。それが不思議で新しかったのです。身体に魂がないかのように、あるいは何かに乗っ取られているかのように見えて衝撃的でした。バックダンサーたちがターンするときふわっと浮いたり慣性の法則で手先が揺れたりして、一瞬本物のロボットかと思ったものです。体に波が伝わるような動きは、体に何か異生物が入って来て体内を移動しているように見えました。
そういう驚きが多くの人の心を掴んだのではないかと思います。文字通り「型破り」な踊りで。慎吾ちゃん達のパフォーマンスによって、カーテンがぱさっと落ちたように視聴者が全く新しいものを目の当たりしたと。
リアルタイムを知らない世代のダンサー/振付家のTAKAHIRO(上野隆博)さんも、ストリート系ダンスが既に浸透した2000年目前の18歳の時に慎吾ちゃんの過去映像を見てこう思ったそうです。
キーワードは「不思議」
なので、バックスピンやウインドミル等の床運動よりも、ポッピンとかウェーブとかいう動きの方が不思議感という意味でインパクトが強く、視聴者の視線を捉えたと思います。アイドル時代のSAMもバックスピンを取りれていたようですが、それだけでは人々をあっと言わせるには弱かったはず。
トシちゃんのムーンウォークも、最初に披露したとき視聴者にとって衝撃的ではなかったのです。「どうなってんの?」という不思議感がなかった。
慎吾ちゃんは鑑賞側視点で、見る人の心の掴み方を知っていました。
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