見出し画像

番外編:「the making」作品ラインアップ

水彩画歴1年7ヶ月、初心者が個展をやってみました。番外編として個展「the making」で展示した作品とタイトルカード(※正式にはキャプションというらしい)をご紹介します。

タイトルカードの実物はこんな感じです。

実際に展示したタイトルカード

タイトルカードには「作品名」「制作日」に加え、制作中の気持ちや気づきなどを夜のテンションで綴っています。よろしければお楽しみください。

1. 横浜クイーンズの街並み 《2021.5》

水彩画をはじめて1日目
体験レッスンで初めて描いた絵。水彩画塾の先生が描く様子を観察し、見よう見まねで必死に描いた一枚。中央の人物は足が明後日の方向に伸び、右端には謎の老婆が佇む結果に。みなとみらいの異国情緒溢れる雰囲気を表現がしたかったが、何をどうすれば“いい感じの絵”が描けるのかどうか、全く分からなかった。自分の技量のなさにクラクラしつつも、上手くなってやるー!と決意し、その場で入塾を決めた。

2. 横浜の夕暮れ 《2021.5》

水彩画をはじめて13日目
入塾して初めて描いた絵。「夕暮れ」というタイトルだが、意図的に絵作りしたわけではなく、絵具の濃さをどうコントロールしたらよいのか分からず、気づいたころには赤一色に。最後はお手上げ状態となり、先生に全体の色味や明暗を整えてもらい、人間を描き込んでもらった。「初心者としてはなかなかな出来だね!」と言われるが、実際は先生の実力である。

3. 紫陽花の咲く坂道 《2021.6》

水彩画をはじめて33日目
横浜のイギリス館の紫陽花を主役に、日傘の貴婦人を脇役に描いた1枚。貴婦人は実在しないが、人物を添えることで絵に物語が生まれるという。絵作りの楽しいところだ。本来はお上品なムードにするはずだったが、相変わらず色の濃さをコントロールできず、ハワイのレインボーアイスのようなポップな絵に。色むらの多い紫陽花は、制作者の焦りと無駄な抵抗を分かりやすく示している。

4. 明月院、紫陽花ブルー 《2021.6》

水彩画をはじめて48日目
人生2枚目の紫陽花の絵。明月院といえば青い紫陽花で有名な寺だ。この美しいブルーの紫陽花を描くはずが…何をどう間違えたのか、門の方をブルーにしてしまう。しかも、廃墟のような怪しさが漂う。極めつけは、奥の不審な人影。明月院さん、こんな風に描いてしまって本当に申し訳ございません。描きたい理想のイメージに反して、制作者の技術が全く追い付かず、反省とモヤモヤばかり感じていた頃だった。

5. 湘南をゆく、サイクリング日和 《2021.7》

水彩画を始めて76日目、2ヶ月とちょっとという頃の絵だが、今すぐに抹殺したい1枚。コンクリートグレーが悪目立ちし、電柱の背後には、「横浜クイーンズの街並み」「明月院、紫陽花ブルー」にも登場した怪しげな人影が再登場。なぜかコイツだけ再現性高く描ける。唯一の救いはキラキラした海だ。この日は全く手ごたえが得られず、凹みながら帰宅した。

6. 水面の映る横浜の街、万国橋より 《2021.9》

水彩画をはじめて124日目
初めて「水面」に挑戦した1枚。まずは建物の映り込みの色を描き、その間にブルーを加えていく。予想もしなかった順番で塗り進めていく先生の様子を見ながら「こうやって描くのかぁ」と妙に感心した。しかし、言うは易し行うは難し。絵具がどんどん広がり、キャンバスで色が混ざってしまう。結果、ぐちゃぐちゃな水面に。「水」を相手にするには、経験と技術が必要だということを思い知らされた。

7. 庭園散歩、木陰でちょっと一息 《2021.10》

水彩画をはじめて152日目
前面の大きな木陰がこの絵のポイント。最後にこの陰を描き込んだのだが、それまでいい感じに出来上がっていた絵に、濃い紫を荒々しく描き込むのはとても勇気がいる。先生がお手本として陰を大胆に重ねた瞬間、生徒は「きゃー!こんな濃い色入れちゃうの!」と息の飲む。「絵が…絵が…」と言わんばかりの緊迫感が漂うが、最後はしっかりまとまるのだから不思議なものだ。

8. 拝啓、向こう岸の君へ。元気にやってますか。 《2021.10》

水彩画をはじめて167日目
タイトル、ちょっとだけ気取ってみた。作品名一つで絵に物語が生まれるのも、作品づくりの醍醐味だ。橋の白い部分や建物はあえて色を塗らず、周りを暗くすることで浮かび上がらせている。これを「ネガティブペインティング」というらしい。「あえて描かない」とは、なんてオシャレなんだ!橋を白い絵の具で描くだろう、と想像していた自分の足し算思考が恥ずかしい。

9. 静かな散歩道、鎌倉妙本寺 《2022.1》

水彩画をはじめて257日目
雪景色は白い絵の具をほとんど使わず、キャンバスの白を活かす。雪の陰を丁寧に重ねていき、少しずつ雪の白さを浮き立たせるのだ。複雑な混色を行わないため、実は紫陽花や紅葉よりも初心者に優しいモチーフなのだ。絵作りの締めくくりとして、白い絵の具をたっぷり含んだ筆を勢いよく振りながら、ぼたん雪を散らしていく。この技法をスパッタリングというが、これがなかなか難しい。大体は自分がスパッタリングされる結果になる。

10. 暖かなオンダリビアの港 《2022.2》

水彩画をはじめて293日目
スペインのバスク地方、オンダリビアの港がモチーフ。水面は手数が多いが、船の影や白いハイライトがいい味を出している。意気揚々と画塾の作品展に出品したところ、全く同じモチーフの作品が複数飾られていた。他に作品を見ると、1枚で異なる青を使い分けていたり、水面が美しく輝いていたりしている。同じモチーフなのに、自分よりももっと素敵に描いている、と一気に現実に引き戻された。自分は修業が足りない!と初心に戻る機会となった。

11. パンプローナの街角 Part1 《2022.3》

水彩画をはじめて306日目
絵の前方に大きな影があるのがポイント。完成形を見ると特に違和感ないが、この陰を描き込む瞬間は(大げさかもしれないが)一世一代の思いっきりが必要だ。陰を入れる前の状態に手ごたえを感じていればいるほど、大胆な描き込みをさけてしまいがちだ。最終的にはなんとかなる、そう信じて、歯を食いしばって「いざ!」と筆を入れていくのだ。

12. 春の雨、若宮大路にて 《2022.3》

水彩画をはじめて321日目
待ちに待った「桜」!「オペラ」という、かわいい名前の絵の具を使う。紅葉と同様、水を塗ったキャンバスに濃い色をのせていき、後から暗い陰を入れていく。ピンクの靄が少しずつ桜っぽくなるのがなんとも楽しい。雨で濡れた道路には、桜が反射している。ここの工程は、実は水面を描く時と同じ。「あの技法を使うのか!」とこれまで学んできたことが少しずつ統合される感覚を覚えた。

13. 春の新緑、伊豆 《2022.4》

水彩画をはじめて356日目
正直なところ、この絵は突然変異としか言いようがない。これまでの絵の中で最も満足のいく1枚だが、なぜ描けたのか全く説明ができないのだ。記憶に残っていることと言えば、妙に集中力が高かったことだろう。そして濡れているうちに濃い絵の具を重ねること、影の部分はとにかく暗くすること、この2点を強く意識していた。フロー状態だったのだろうか。あの頃の自分がまた降りてこないか、待ちわびている今日この頃。

14. 鎌倉文学館のバラ園 《2022.5》

水彩画をはじめて369日目
この作品はバラ以上に、背景の山の制作過程がとても印象に残っている。通常はパレットで色を作るのだが、この作品ではキャンバス上でダイレクトに色を作ったのだ。まず山のシルエットを水で濡らす。その後、黄色い絵の具を塗る。そして絵具が濡れているうちに青い絵の具を重ねていく。その瞬間、キャンバス上で緑が浮かび上がってくるのだ。魔法のような現象に感激しながら描いた記憶が今でも鮮明に残っている。

15. 真夏の円覚寺の竹林 《2022.5》

水彩画をはじめて377日目
水彩画を始めてちょうど1年過ぎた頃に描いた絵。習い始めは「未経験者だし失敗を恐れずに大胆に描こう!」と、のびのび描いていたが、経験を重ねるうちに “上手に描こう”“失敗したらダメだ”という気持ちが強くなっていた。この時も「これまでも陰を描いたはずなのにうまくいかない」とイライラしていた。まるで、自我が芽生え、イヤイヤ期を迎えた子どものようだ。

16. 稲村ケ崎の紫陽花 《2022.6》

水彩画をはじめて404日目
1年ぶりに描く紫陽花。去年は色むらが多く、悔いの残る絵となったため「今度こそリベンジするぞー!」と鼻息荒く意気込んだ1枚。花の色は最初の塗りで決まるため、いつも以上に濃い色で描き始めた。またキャンバスを水で予め濡らしておくことで美しい滲みやグラデーションが生まれる。キャンバスの水が乾く前に、慎重に、だけど素早く紫陽花の紫やブルーをのせるという“意図的な絵作り”ができるようになった。

17. パンプローナの街角 Part3 《2022.6》

水彩画をはじめて412日目
水彩画の魅力の一つは、陰を描き込むことで主役が「出現」する過程を楽しめる点だ。描き始めはただの平面だったのに、暗さを入れることで奥行きや空間が生まれる。こうした水彩画の醍醐味を体験できた象徴的な1枚だった。個人的なこだわりポイントは人物。今度こそは「怪しい人影」にならないよう、濃い絵の具をダイレクトに描いたところ、賑やかさを表現することができた。人物で初めて手ごたえを得た経験だった。

18. ゴンドラに乗って、水路探検 《2022.9》

水彩画をはじめて487日目
青や緑、黄色など複数の絵具を塗り重ねながら、美しいグラデーションを描けるようになってきた一方で、今度は陰がどうしても自在に描けない。「筆で描きましたぁ!!!」という主張が聞こえてくるような、くっきりとした陰ばかりだ。一歩前進したかと言えば、また新たな壁が立ちはだかる。今まで気づかなかったことに気づけるようになった“成長の印”として受け止め、前進するしかない。

19. 朝靄のかかるサンタンジェロ橋 《2022.9》

水彩画をはじめて495日目
絵を描いている瞬間は至近距離で1カ所に集中しているため、「あぁ、この部分の色味が変になっちゃった」「うーん、色むらができちゃった」と一喜一憂しがちだ。しかし後日、ふと遠目から絵を眺めると「あれ、思ったよりいい出来かもしれない」と思うことがある。これもそんな1枚だ。細かい部分にこだわりすぎず、全体のバランスを見ることも忘れてはいけない。

20. 朝日がさす方へ 《2022.9》

水彩画をはじめて510日目
明け方の海は、光の反射で真っ白になる瞬間がある。そしてゆっくりとピンク色へと移ろう。あまりの美しさにゴンドラの漕ぎ手も棒立ちしてしまっているようだ。(・・と言いたいところだが、実際は制作者が棒立ちしている人間しか描けないのだ)「紫陽花の咲く坂道」のレインボーアイスのような背景と比べると、だいぶ自然でソフトなグラデーションも表現できるようになったものだ。と、自分の小さな成長をほめたい。

21. 秋の妙本寺 《2022.11》

水彩画をはじめて565日目
紅葉はとにかく難しい。自然な濃淡を出したり、葉の陰をちょうどいい塩梅に描き入れるのは、初心者にとって至難の業。これまでたびたび紅葉を描いてきたが、ほとんどがお蔵入りしている。この1枚は“3メートル離れたら許容範囲”の作品として思い切って展示したもの。お気に入りポイントを挙げるならば、左端にある灯篭だろう。あえてピントを外しシルエットのみだが、絶妙な光の加減を表現できるようになった。

22. 本堂が見守る、秋雨の撮影会 《2022.12》

水彩画をはじめて579日目
ただでさえ紅葉は難しいのに、雨の紅葉がモチーフということもあり、「き、きょうは、こ、こうようかぁ…」とビビりながら描いた1枚。やや誇張しすぎているが、呼吸を忘れてしまうほどの緊張感の中で描いた。幸い、浄智寺の本堂と手前の木の暗さが銀杏の鮮やさを引き出し、最終的にはバランスの取れた絵に。紅葉というモチーフに対して、初めて小さな成功体験を味わえた1枚となった。

23. ベネチアの裏路地散歩 《2022.12》

水彩画をはじめて586日目
「木陰スランプ」の真っ只中に描いた作品。1年前弱に描いた「庭園散歩、木陰でちょっと一息」の陰を超える出来がなかなか出せず、モヤモヤする期間が今現在も続いている。どうしても粗い線になり、陰というよりは「線」として悪目立ちしてしまう。「どうしたら木漏れ日のような陰が描けるのだろうか?」が目下の探究テーマである。

以上、23作品でした!

▼これまでの記事


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?