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水彩画歴1年と少し、個展をやってみた話【駆け込み編】

水彩画歴1年7ヶ月、初心者が個展をやってみました。前回の記事では、個展を企画(妄想)する話でした。

▼前回の記事

そして個展のフライヤーが無事に完成し小さな手ごたえをつかんだ私は、開催の2週間前まで準備を塩漬けにしたのでした。今回は、当日までの追い込みをご紹介します。


美術の殿堂「世界堂」。そこは駆け込み寺だった

『今日は12月12日の月曜日。あれ、ちょっと待てよ。個展は12月26日(月)~28(水)の3日間。ということは・・・14日前やん!!!!!』

10月から仕事がずーっと忙しく、毎日が自転車操業だった私は、個展準備を完全に後回しにしていた。できているのはフライヤーと妄想を綴ったパワポのイメージボード。それだけ。展示する絵も決めておらず、もちろん絵の額装もしていなかった。さすがにやばい。え、やばい。本当にやばい。

少なくとも、絵の額装だけでも急がないと個展までに間に合わない。(※画材屋さんに額装を依頼すると、最低でも1週間かかる)焦った私は、翌日すぐに有給をとり、展示する絵をその日の朝に選んだ。

すべての絵を額装するとなると高額になるため、これぞ!と厳選した7枚をもって、世界堂に駆け込んだ。ところが希望の額縁の在庫がない…!やばい。やばい。やばい。焦る気持ちが顔に出ていたのか、事情を察した額装担当のお兄さんがメーカーに問い合わせ、個展の前々日に額装が完成するよう、やりくりしてくれた。1日でも遅かったら、個展まで間に合っていなかった。有給を取ってよかった。。。ありがとう、額装担当のお兄さん。”堂”という名の通り、私にとっては駆け込み寺だったよ。

額装しない絵は、ボードに貼って、その周りを「制作中の心の声」のポップで飾ることにしていた。そこで、額装ついでにスチレンボード(※発砲板と呼ばれ、ピンなどをさせるもの)や専用のノリ、針ピンなどを購入した。よし!準備完了!あとはポップを作るのみ♪ もちろん、この見立ては甘かった。

材料はそろったけど、道具がない。

絵のボードを作って、それぞれの絵に飾るポップを作って、と。世界堂で購入した材料をもって意気揚々と帰宅し、いざポップづくりをし始めようと思ったところ、あることに気づいた。あれ、カッターがない。カッターボードもない。作れへんやん。

仕事中は自称”段取りの鬼”の私だが、今回ばかりはポンコツとしか言いようがなかった。デカいボードを持ち帰り、気力も体力を使い果たしていたため、その日はとりあえずパソコンで出来ることから始めることにした。まずは、作るもの&準備するものリストに取り掛かった。そこであることに気づいた。

想像以上に準備しないといけないことがあった

<作るもの>
・額装しない絵を貼るボード
 (※A2サイズをF4サイズに切らなければいけなかった)
・タイトルカード
 (※制作日、作品の説明を2-3行書いたもの)
・「水彩画をはじめて○日目」という吹き出し風ポップ
・「制作中の心の声」の吹き出し風ポップ
・個展のコンセプトなどを紹介するメッセージボード
・自己紹介ボード
・制作過程の写真を紹介する冊子
 (※蛇腹冊子にしたいけど、どう作ればいいか分からない)
・個展のポスター

<手配するもの>
・運搬用の移動手段の手配
・準備と片付けをお手伝いいただける方探し
・絵を飾るミニイーゼル(合計15個)
・消毒用セット
・ごみ袋
・BGM用スピーカー
・記帳用のペン

え・・思ったより作るもの多いぞ。今回23枚の絵を飾るから、タイトルカードが23枚。内容を23枚分考えて、それを印刷して、ボードに貼って、切る。

「水彩画をはじめて○日目」の吹き出しポップも、23枚分。そもそも描いた日付を思い出して、何日目かを計算して、その吹き出しを作って、ボードに貼って、切る。

「制作中の心の声」ポップも23枚分。絵1枚につき大体3枚の吹き出しはほしいから・・69枚・・・か。

絶対終わらないーーーー!!!!!想像以上の準備に絶望した私は、お得意の「ひとまず現実逃避」をすることにした。(その日はそのまま、有給という貴重な準備時間を消費してしまった。)

夜のテンションでタイトルカードづくり

仕事の都合上、次の土日まで世界堂に行く時間をとれなかったため、まずはタイトルカードの内容を考えることに勤しんだ。仕事を終えてからの作業だったので、当然、夜の時間だ。

読者の皆さんもご経験があるかもしれないが、”夜のテンション”には注意が必要だ。夜の執筆は、妙に感傷的でドラマチックな内容になってしまいがちだ。朝になって読み返すと「なんて恥ずかしいことを書いたんだー!」と後悔するのがオチ。本来ならば、執筆後に数日おいてから推敲したかったものの、もう時間がない。ここまで来たら恥を捨てて、”夜の文章”で行くしかない。腹をくくるしかなかった。

開催5日前、飾り付けの路線変更

タイトルカードと並行して、絵の周りを飾る「制作中の心の声」ポップの試作品を作ってみた。試作品がコチラ。

「制作中の心の声」ポップを配置してみた試作品

なんだ、このクソダサい飾りつけは・・・!
いくら試作品とはいえ、配置も配色も何もかも微妙だった。そもそも、残り5日で69枚の吹き出しを考えて作るのか。うん、心の声ポップはやめよう。そうして、「制作中の心の声」ポップは、潔くやめた。

当日前夜まで、夜な夜な「切る」作業

当日までの数日間は、ひたすらスチレンボードとの格闘だった。F4サイズの絵をA2サイズのスチレンボードに貼り、カッターでひたすら切り続ける。さらに、タイトルカード23枚、「水彩画を始めて○日目」の吹き出しポップも23枚、ボードに貼ってはひたすら切り続けた。

気づけば定規を支える手に力を入れすぎて、手のひらの健を痛めていた。『テニス肘ならぬ、カッターハンドやな、はは(笑)。ほんで、いま、ランナーズハイならぬ、カッターズハイやわ、自分。ふふ(笑)』いい歳して、完全に妙なテンションになっていた。

カッターズハイの末に得た不思議な感覚

個展の2日前の夜だっただろうか。相変わらず、スチレンボードと格闘していた。スチレンボードや紙の切れ端、糊付け中の絵、ハサミ、ノリ。色んなものが散乱している部屋で、テンションの高い音楽を聴きながら作業をしていた時だった。

『なんか、部室で文化祭の準備しているみたい♪ 一人文化祭だけど(笑)』そう思った瞬間、不思議な感覚になった。まるで、自分が作業している様子を天井から見守っているようだった。自分の背中を見てこんなことを思った。

『あ、私いま、夢中で個展の準備をしている。個展なんか絶対無理です、ってくまさんに嘆いてなかったっけ。そんな自分が、不安そっちのけで必死に準備してる。』

ただそれだけだった。けれど、すごく感慨深かった。やりたいことに夢中になっている自分がいる。余計な不安もなく、当日に向けたまっしぐらに突き進んでいる自分がいる。そうそう、こんな自分、昔いたな。まだ、いたんだ。よかった。

長い間、見失っていた”自分”と再会できたような、そんな夜だった。


いよいよ次回は個展当日の様子です!お楽しみに。


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