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水彩画歴1年と少し、個展をやってみた話【決心編】

突然ですが、昨年の12月に個展をやってみました。「水彩画歴が浅いですが個展をやりました」と聞くと、多くの方は「さぞかし上手なんだろう」「隠れた才能が開花したのだろうか」と想像するかもしれません。

そんなことはなく、いわゆる水彩画を趣味で習っているただの会社員。普段は人材開発の仕事をしており、アートとはあまりご縁がありませんでした。2021年の春、いま通っている水彩画塾の定期展覧会を見に行った際に、塾長の画風に魅了されたことがアートとの出会いでした。

個展を開催したのは、昨年の12月末。水彩画を習いはじめて1年7ヶ月目ごろのことです。もちろん習い始めた期間で上達はしているものの、誰もが驚くような目まぐるしい成長を遂げたわけでもありません。

そんな私がなぜ個展をやろうと思ったのか。どんな個展を開催したのか。そして、思い切った末にどんな景色を見たのかについて綴っていきます。

きっかけは、くまさんの提案

くまさんとは、私のメンターのことだ。新卒として働き始めたときからお世話になっている方で、今は毎月メンタリングでおしゃべりしている相手だ。“熊”には全くに似ていないが、語呂がいいのでnoteでは便宜上”くまさん”と呼ぶことにする。

メンタリング始めたキッカケは、くまさんからのお誘いだった。自己肯定感が極端に低く、自分に自信を持てずにいた私を見かねて、声をかけてくれたのだった。

ちなみに、どれくらい自己肯定感が低いかというと、高校の友人と10年ぶりに感動の再会を果たしたときの一言目が『相変わらず自信なさそうな姿勢やなぁ笑 高校の時と全然変わってへんやん!』と言われるくらいだ。もはや立ち居振る舞いから滲み出るレベルの自信の無さなのだ。

そんなこんなで、メンタリングでは「自分を好きになり、幸せに生きる」ことをテーマに、好きなことを思い出したり、気分が良くなることを実践したり、自分ができたことを褒めたりするなど、自己肯定感を上げるためのリハビリ(?)に取り組んでいた。

リハビリといっても「美味しい珈琲を味わう」「好きな髪型にしてみる」といった程度だ。ところが、いざ実践しようとすると『美味しい珈琲を飲んでいる暇があったら仕事をすべきだ』とか、『仕事上、髪型で遊びすぎてはいけない』とか、自分にブレーキをかけてしまうのだった。自由にやりたいことをやることを自分自身が許さなかった。

水彩画も同じだった。水彩画を習ってみたい気持ちがあるのに、一歩を踏み出すことを許していなかった。その当時のくまさんとのやり取りがコチラ。

わたし:
絵を習ったことないし、絵具なんか触ったことないし。笑われないかなぁ…
くまさん:
え、水彩画教室って習うところなんじゃないの?やったことないから行くところなのに、なんでそんなこと考えるの?
わたし:
いやぁ…まぁそうですけど。でもでも、続くか分からないですし!私、三日坊主なんです!(ドヤっ)
くまさん:
いや、三日坊主を自慢してどうするの。飽きたらやめればいいじゃん。それに、1日でも2日目でもやってみた自分を褒めればいいんじゃない?そもそも、習い始めてもないのに、続くかどうかに悩むなんて、不毛だね(笑)せめて始めてから悩んだら?
わたし:ですよね・・ははは・・

こんな感じで、重い腰をあげて水彩画塾の体験レッスンに行った。そこからはあっという間だった。うまく描けないけど、なんだか面白い!月2回のレッスンが楽しみで仕方がなかった。

水彩画塾に通い始めて1年が経った頃、くまさんから個展の提案があった。

くまさん:
もう1年かぁ、早いね。描いた絵を発表しないの?
わたし:
え、発表ってなんですか?!そんなそんな、私、全然上手じゃないし。
くまさん:
個展って絵が上手じゃないと、やっちゃダメなの?
わたし:
まぁ、ダメではないですけど。下手な絵を見に来たい人なんかいませんよ。
くまさん:
それは来た人が決めることだから。そもそも興味ない人は最初から来ないから、心配する必要ないよ、フッ(笑)
わたし:
まぁ、そうですけど・・いやでも、もっと上達してからにします、個展は。
くまさん:
あのねぇ、あなたのその性格だと、上達したところで次のレベルが見えてしまって、一生「上手くなってからやる」って言ってるよ。
わたし:
でもでも、個展で何したいか、イメージとかないですし。
くまさん:
大丈夫、始めたらイメージが自然と浮かんでくるよ。
わたし:
そんなもんですか。
くまさん:
そんなもんだよ。そうだ、「下手な絵の展覧会」とか「普通な絵の展覧会」とかやればいいんじゃん(笑)
わたし:
あー、それだったらアリかも。私、自虐ネタは得意なので。
くまさん:
自虐しなくても、絵をどんな想いで描いていたり、どんなふうに描いているのか、私は興味あるよ。それでも十分いい個展になると思うけど。
少しでもやりたいと思うことは、片っ端からやった方がいいよ。「”やらない”ことを続ける人生」も、もちろん選択の一つだけどね。でもその選択を取る前に、一回やってみればいいんだよ。そのあと、「もう一回やりたいか?」と自分に問いかけてみて、違うなって思えば辞めればいいんだよ。

こうして、くまさんの提案がキッカケとなり、私は個展を開催することとなったのである。

“やるやる詐欺”を数ヶ月間過ごす

最初の一歩は会場探しだった。「とりえず、レンタルギャラリーに遊びに行ってみて、ピンとくるものを見つけてみな」というくまさんのアドバイスのもと、ネットで会場を検索した。

思いのほか素敵なギャラリーがいくつも見つかった。が、そこで展示しているアーティストのプロフィールを見てみると、美大出身だったり、アートコンテストで賞をとっていたり、作品で食っていったりしている、”ガチなプロ”だった。ちょっとうろたえた。

それでも、気になったギャラリーには勇気を出して行ってみた。緑が生い茂った小道の先にある、小さな洋館のようなギャラリーを見つけた。こんな素敵な空間で個展できたらなぁ、と心が動いた。ギャラリーのオーナーはかつて銀座の画廊で働いていたようで、若い芸術家を応援するために、実家のレストランを改装したのだという。芸術一本で人生を切り拓こうとしている若きアーティストたち、そしてそれを応援するオーナーの姿を見ていると、趣味で個展をやろうとしている自分が恥ずかしく、なんだか惨めだった。

「初心者が個展をやるなんてやっぱりハードルが高いな・・」と勝手に凹んだ私は、そこからしばらく会場探しを封印した。「上手/下手ではなくて、開催者の想いとかエネルギーに人は動かされるんだよ。」というくまさんに励ましにも、耳を貸せなかった。

最後の一押しは、意外にもEminemだった

”やるやる詐欺”状態を続いてから数ヶ月が経過した。忙しいことを理由に会場探しを先延ばしにしている私に、くまさんから厳しい一言が放たれた。

くまさん:
「やるべきこと」で自分の時間を埋め続けていたら、一生「やりたいこと」には行きつかないよ。いつまで「やるべきこと」で自分の人生を埋めてるの?

正直へこんだ。自分にブレーキをかけているのは、他でもない自分だということを分かっていたから。でもそれを認められず、メンタリング後ふてくされた私は現実逃避すべく、意味もなくHuluで何か見ることにした。

たまたま観たのがHiphopのドキュメンタリーだった。レジェンドとして崇められているラッパーたち(と呼ぶのかしら?)が、Hiphopがメインストリームになるまでの苦難の歴史を語っていた(と思う)。Hiphopを聞かない私は当然内容についていけず、早送りしながら見ていた。だったら見るな、とツッコみたいところだが、現実逃避できればなんでもよかった。

すると見覚えのある顔が画面に登場した。Eminemだった。確か中高生のころ「8mile」を聞いた覚えがある。「へー、8mileってめちゃくちゃ売れたんだー知らなかったー」と暢気に映像を眺めていた。

すると、Eminemが初めてステージに立ってラップしたときのことを語った。

初めてクラブの観客の前でマイクを握った時、ブーイングを受けた。トラウマだよ。(中略)ひどく落ち込んで家に帰って“もうやめよう”と思った。だが2-3日後…いや1週間か1時間かな、とにかく”ダメだ、続けなきゃいけない”と思った。

映画『アート・オブ・ラップ』

あのEminemでさえ最初はこうだったのか。でも続けた結果、ここまで来たんだなぁ。ステージの真ん中で罵詈雑言を浴びるより、個展を開いて誰も来ない方がずっとマシかも。それくらいだったら私もできるかも。こうなったら、やるしかないか。

まさかEminemに背中を押される日が来るとは思わなかったが、彼の最初のトライ経験が刺さりまくった。その後は早かった。前から気になっていた会場をその場で予約した。そして、くまさんに「会場決めました!」と鼻息荒くメールした。

日付と場所さえ決まれば、一気に動き出す

会場を予約したとたん、不思議とイメージが湧いてきた。Eminem効果(?)でハイになっていたのか、コンセプトが浮かび、個展のイメージが見えてきて、個展の紹介文がスラスラと出てきた。ようやくスタートを切ったのだった。


次回は「個展初心者、準備に奔走する編」です。よかったらご覧ください。


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