絵本出版の振り返り『せかせかペンギンとゆっくりタクシー』誕生の裏側
2022年は突如として創作活動に目覚めた年でした。
3月にイラストを描き始め、8月に初の絵本『ののちゃんはそばかすがきらい』を出版。
そして1作目から約2か月後、2作目『せかせかペンギンとゆっくりタクシー』が誕生しました。
わからないことだらけだった1作目と違い、2作目は絵本作りを楽しむ余裕を持って出版できたように思います。
今回は、絵本『せかせかペンギンとゆっくりタクシー』が生まれた背景のお話です。
『せかせかペンギンとゆっくりタクシー』あらすじ
幼少期にあたためた「ゆっくりタクシー」のアイデア
今作の主役はせかせかペンギンのノエルですが、ゆっくりタクシーのリーピーも私にとって原点とも言える大きな存在です。
5歳頃のこと。私は絵本が大好きな子どもで、読むだけでは飽き足らず画用紙に物語を描くようになりました。
そして初めて描いた絵本が『ゆっくりタクシーのリーピー』だったのです。
リーピーの名前の由来は、当時好きな音の響きだったのでしょう。文字通りゆっくり走るタクシーが主人公で、ストーリー展開もなんてことはありませんでした。
ただ子どもながらに抱いていた「ゆっくりした気持ち中でしか味わえないもの」の大切さを感じていたように思います。
せっかく生まれたキャラクターでしたが、小学生の頃には絵本作りをやめてしまったので、リーピーとはもうそれっきりかと思われました。
(絵本作りをやめてしまい、大人になって再開するまでの話は過去記事に)
疲れると色が変わる「せかせかペンギン」
大人になった私はと~っても長い紆余曲折を経て、イラストを描くことを楽しむようになりました。
描き始めたばかりの頃は身近な人を動物キャラ化するのが好きで、今思うと絵本のキャラクター作りに役立っているのかもしれません。
せかせかペンギンのノエルも、友人をモデルにした動物キャラから着想を得ています。
仕事を頑張るカワウソのキャラクターで、ユニークな緑色にしようと思っていたのですが、塗ってみると……
なんだか具合が悪そうに見えるじゃありませんか^^;
まるでお仕事を頑張りすぎて、疲れてしまったかのように……。
こうして「疲れると色が変わってしまう」設定が生まれ、ノエルへと受け継がれたのです。
頑張る社会人がモデルのキャラクター
せかせかペンギン ノエルは、私がSNSで発信している絵物語で生まれました。
モデルは強いて言えば、忙しい現代社会を生き抜く会社員たち。日々一生懸命働き、ときには頑張りすぎてしまって自分を見失ってしまうことも……。
私自身、会社員で苦手な事務をしていたときは、緑ノエルのようにすり減っていました。でも心身ともに余裕をなくしているときって客観視ができません。はたから見たら、疲れて色が変わっていて休んだ方が良いのは明らかなのに、自分では気づけないのです(恐ろしい……)。
自分だけではなく、そんな人たちにたくさん出会ってきました。みんな生きることを頑張っています。
真面目で不器用で一生懸命、そんな愛すべき等身大な姿を重ねたのがノエルです。
ノエルとリーピーが共演するきっかけとなった母の一言
1作目の『ののちゃんはそばかすがきらい』を出版直後の私は、2作目をどのような内容にするか悩んでいました。
アイデアが降りてきたきっかけは、母の一言です。
「小さい頃に最初に描いた、ゆっくりタクシーのリーピーを改めて絵本にしてみてほしい」
自身が最初に生み出したキャラクターである、ゆっくりタクシーのリーピー。すっかり遠い思い出として置き去りにしてしまっていました。
母の言葉で、私もリーピーを絵本出版で昇華させたいと思うようになったのです。
とはいっても、ゆっくりタクシーの題材をどのように扱ったら良いのか。5歳の頃に描いたお話は、ただリーピーが田舎道をゆっくり走る物語で(うろ覚え)、ストーリーとして弱いでしょう。
そもそも幼い私はどうして、急ぐことを求められがちなタクシーをゆっくり走らせようと思ったのか……。
「ゆっくりした気持ち中でしか味わえないもの」の大切さを感じていたからです。
せわしない現代社会で、つい見過ごしてしまう小さな幸せ。
友人とゆっくり語り合ったり、美味しいものを味わったり、景色の移り変わりを感じたり……。
そんなゆったりした心の余裕を持つ大切さを描きたい。
そして次に思ったのが「いつもせかせかしているノエルを、ゆっくりタクシーに乗せたい」でした。
ノエルがリーピーに乗ったらどんな反応をするのか。きっと「急いでくれ」と急かすのだろうな……想像は膨らみます。
こうしてノエルとリーピーの共演が決まりました。
せかせかしたペンギンと、ゆっくり走るタクシー。対照的なふたりの化学反応で物語は動き出し、完成したのです。
まとめ
こうして振り返ってみると、多くの出来事がきっかけとなって完成した絵本です。長い目で見れば、人生で起きることに無駄なんかなくて、どこかで繋がり昇華されるのでしょう。
私には一貫して作品にも反映させている、人生の大きなテーマがあります。
「多様な価値観の中で、自分らしく生きる」です。
私もまだ修業中ですが……自分らしく生きるというのは、あるがままの自分を受け入れるということ。
そのままの自分を受け入れられると生きるのが楽になり、世界も自分にとって居心地の良いものになると感じています。
また自分を受け入れられるようになると、相手のことも尊重して受け入れられるようになると思うのです。
そしてなにより自分を受け入れた先に、見栄や世間体ではない「自分にとって本当に大切なもの」が見えてきます。
『せかせかペンギンとゆっくりタクシー』では自分を見失うほど働いていたペンギンが、自分の人生にとって本当に大切なものはなにかを知るお話です。
絵本を通してノエルとリーピーが、あなたにとっての幸せを見つけるお手伝いができれば嬉しいです。
はなもと みちか
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