素朴な疑問に向き合う

なんとなく気になって、買い物ついでに大学によって植物の様子をみてきました。本当は少し実験をしても良かったんだけど、作らないといけない書類が詰まってるので週明けまでお預けです。

さて、今週はなんだか激動な1週間でありました。
贔屓の退団が発表されて心がザワザワしている中、解析のやり直しが必要になったり、1日にセミナーやミーティングが3件もある日があったり、インターンの学生が来たり。。。

ドイツ語のレッスンにも遅刻して行ったり、宿題が満足にできなかったり。
睡眠は削りたくない、というか家にいると自動的に同じ時間に眠くなるので、結局論文執筆や学会要旨作成もなかなかはかどらず...

noteの投稿も呟きばっかりになっていました。
でも、これ何年か後とかに見直した時に、忙しさ度合いとか余裕の無さとか、そこから生まれる言葉がわかっていいかもしれませんね。

なんでこんなに余裕をなくしていたかというと、インターンで来ている高校生さんの対応をほとんど一手に担っていたからなのです。

インターン

スイスの公立高校はKantonsschule (カントンシューレ)と呼ばれます。
Kantonは州。チューリッヒ州はKanton Zurichになるわけです。
Schuleが学校ですね。

Kantonsschuleにはインターンの制度があり、生徒は職業体験を3週間することができます。
その職業体験に「大学生」とか「研究者」の枠があるらしく、私がお世話になっているラボにも毎年やってくるんだそうです。
聞けば、チューリッヒ大学(UZH)は、いわば公立大学の位置付けになるらしく、公立高校からくる学生を受け入れる義務があるんだとか。

3週間しかない
バイオインフォマティクスは理解しないうちに終わってしまう。
新しくテーマを立てたところで、完結できる見込みはない。
なので、今あるテーマのお手伝いをしてもらうことになります。
ちょうど区切りのいい一連の作業を経験する感じ。

基本的にポスドクさんやラボマネージャーと言われる人たちが対応をしてくれると聞いていました。

風邪大流行

なんか風邪がはやってしまった。
当初、対応をするはずだったラボマネージャーが今週1週間お休み

学生はほとんどがバイオインフォマティシャンなので、実験室の使い方を知っているのは3人だけ。
その中でラボマネージャーの実験を少なからず手伝っていて、もともと彼女にやってもらおうとしていたテーマを把握しているのが私だけ、という謎状況。

初日の月曜日は、ハリケーンのおかげでひん曲がってしまったビニールハウスの補修作業を総出でやってたので、彼女にもお手伝いしてもらいました。雨の中...

そうしたら、風邪をひく人続出

日を追うごとに実験を教えられる人が減っていく

火曜日はAさんと実験をやる予定だったけど、Aさんがお休みだから、私と一緒にこれをやりましょう。

水曜日はドラフトが壊れていてDNA抽出ができないので、昨日の残りを一緒にやって、木曜日にする実験の準備を一緒にしましょう。

木曜日はセミナーが立て込んでいるから、私じゃなくてBさんに指示をあおいでください。

あぁ、Bさんが風邪でお休み...そしたらCさんと一緒にこれをやってみて。
セミナーとか聞きたかったら聞きに来ちゃえ!

などなどなど。ひたすらアレンジをしながら対応。

インターンの学生さんは、とても知的好奇心の旺盛な子で、一つ一つの実験や作業することで、何を調べたいのかを質問してくれる。
とっても素晴らしいことではあるのだけれど、大学生、大学院生ほどの知識はもちろんないわけです。高校生だもん。

なるべく簡単な単語を使って実験概要を説明する。
実験のメカニズムも、実験をしながらでもわかるように手短に説明する。
厳密に言えば簡単にしすぎて間違っているところもあるけど、この際仕方がない。
後日じっくり説明する機会を設けるってマネージャーが言ってたからそこはお任せしよう!私単なるお客さん(guest student)だし!

ていうか英語でわかりやすく説明するのってめっちゃ難しいなぁ!

そんな傍で、自分の研究テーマの解析も進めないとあかん。
来週のミーティングで前回の疑問点を解決するためのデータを整えないとたたき台にもならないから。

英語プレッシャーもあって、ちょっとキャパオーバーしかけました。
あまりにばたついていたので、彼女が研究嫌いにならないといいんだけど...

得るものは大きい

ここまで愚痴とか大変さとかしか書いてないですけど、言いたいのはそういうことじゃないんです。

この1週間、忙しかったけど得たものは大きかった、ということなんです。

神戸大学には附属高校があるので、神戸にいた頃から高校生と戯れながらの実験は何度かやってきていました。
M1の頃から、毎年やってくる高校生の実験アレンジとその説明。
自分のテーマをちょっと手伝ってもらったり、検証したい実験があるから一緒にやったり(トリプルチェック)。

こういうことの対応を嫌がる人も確かにいます。
でも、高校生からの質問、学部生、修士生からの質問に対応するのは、私にとって全く苦ではないんです

・これまで当たり前と思っていた前提条件が一般的には当たり前ではないことに気づくことができる
・意外なことから自分の実験の穴が見つかる
・自分の知識の穴も正確に見つけられてしまう
・素朴な疑問の中に意外と真実があったりする
・新しいアイデアが浮かぶきっかけになったりもする
・自分の研究テーマに普段以上の責任感が生じる

例をあげればキリがないけれど、私としてはメリットの方が圧倒的に多い

確かに時間は取られる。
実際、先週消化したかったタスクは消化しきれなかった。
それでも、自分がちょこっとだけ手伝っていたマネージャーの研究内容を案外しっかり理解できていたことに気づけたし、間違った認識をしていた箇所にも気づくことができた。

こういうメリットがあるのは、日本語だろうと英語だろうと変わらないんだと実感した1週間でした。

素朴な疑問に向き合うこと

専門家じゃないのに、まだ勉強してないのに、そんなこともわからないのか、時間の無駄だ!なんて言って突き放して関わらないことは簡単

でも、活発に質問や議論ができないラボでは、学生の成長も学びもない
自分自身も成長できないし学べない
間違った認識のまま間違った手法で進めることほど時間の無駄なことはない。

十数年前の自分は、インターンにきている高校生と同じ状態だったはず。

自分が少し知識や技術を手に入れたからと言って、それにあぐらをかいて踏ん反り返るようでは、得られるものも得られない。
目が曇ってしまって、見つけられるものも見つからない。

何度も高校生や下級生と関わることで気づけたことたちです

下級生にとって、「先輩に質問する」「博士の先輩に質問する」って結構なハードルだっていうことにも気づいた。

なので、質問には快く答えるし、議論にも積極的に参加して、なるべく話しかけやすい雰囲気を作ることは、神戸にいた頃からずっと心がけていた。
(できてたかどうかは知らんけど。少なくとも去年の9月10月はできてなかったやろうけど)

最近、こっちのラボの学生間で「コムギに関しては私に聞く」という雰囲気が出来上がりつつあります。
この、ある意味「信頼」を裏切らないように、しっかり論文読んで勉強して、研究も進めないと、と思った1週間でした。

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