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『井賀論。』 vol.5 “自分は何者であるか常に考えろ”

ROUND5 漠然とシャッターを切るな

20代の半ば、4年間ほど上池袋4町目に住んでいた。ちょうど写真を始めた頃の話だ。どこへ行くにもカメラをぶら下げて、暇を見つけては、豊島区、北区、荒川区あたりの路地裏に入って、面白いと思うものがあれば被写体を問わずなんでも撮っていた。撮るという行為が楽しくてしょうがなかった頃だ。

1995年1月17日の朝、いつもと同じように7時過ぎに起き出し、普段の習慣として何気なくテレビをつけた。チャンネルは覚えていない。いきなりヘリの空撮による燃える街の映像が目に飛び込んできた。「えっ!? これなに?」そこには朝の爽やかな雰囲気とはおよそ似つかわしくない光景が映し出されていた。しばらく理解できなかった。阪神淡路大震災によって神戸の街が焼け野原になってしまったことが。

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