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【天才】読書猿のおすすめ本。「いかにアイデアを生むか」の発想法を人文書に昇華させた斬新な1冊:『アイデア大全』

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「アイデアをいかに生み出すか」というHow Toを「人文書」として読ませる「読書猿」の凄技

『独学大全』という本がある。読書猿氏の本だ。

私は、買ったはいいがまだ読めていない。750ページを超える大著であり、さらに、考えながら立ち止まりながら読まなければならないことが分かっているので、きちんとまとまった時間が取れるタイミングを待って読もうと思っている。

本書を含め、寡作ではあるが話題作を次々と発表する「博覧強記の読書家」である読書猿氏のデビュー作が本書『アイデア大全』である。

パッと目を惹く表紙と、「読書猿」という謎の著者名が気になって手にとった。つまり本書を読む時点で私は、「読書猿」についてまったく知らなかったのである。

それもあって、一層驚かされた。内容が、物凄く面白かったからだ。

「アイデアを生み出せる人になりたい」という動機から本書を読むのももちろん良い。しかしそれだけではなく、「読むことで自分の頭を鍛える」という意味でも役立つだろう。「知の深さ」を実感できるだけではなく、「知に対してここまで掘り下げることができるのか」という驚きを感じることができる1冊だと思うからだ。

「やり方」だけを学んでも意味がない理由

著者はまえがきでこんな風に書いている。

本書は、<新しい考え>を生み出す方法を集めた道具箱であり、発想法と呼ばれるテクニックが知的営為の中でどんな位置を占めるかを示した案内書である。
このために、本書は実用書であると同時に人文書であることを目指している。

このような趣旨で書かれた本にこれまで触れたことがなかったので、まずその”発想”に驚かされた。本書は、「『発想法』を網羅した実用書」でありながら、「『発想法』はいかに生まれ、どのように発展していったのかを示す人文書」でもある、というわけなのだ。

「発想法」の背景を知ることは、「発想すること」にも影響を与える。

「発想法」や「アイデアの生み出し方」といった内容の本は、世の中に数多く存在するし、私も書店員時代にそのような本をたくさん見てきた。

しかし、「やり方」だけ知っていればそれを使いこなせるだろうか? そんなはずはないだろうと思う。

その話をするために、人工知能に関する「中国語の部屋」という有名な話を取り上げよう。これは、「人工知能には意識があるのか」について考えることの難しさを示すものとして知られている。

中国語を理解しない被験者をある部屋に閉じ込め、物凄く分厚いマニュアルを渡す。そのマニュアルには、「こういう中国語の文字列に対しては、この日本語の文字列を書いて渡せ」というような指示が山ほど書かれているとする。この部屋の外にいる中国人が、この部屋に「中国語を書いた紙」を入れると、部屋の中から「その中国語が日本語に翻訳された紙」が出てくるという仕組みだ。

このやり取りを何度も繰り返すことで、部屋の外にいる中国人は、「この部屋には中国語を理解する人がいる」と考えるだろう。しかし被験者は中国語を理解していないのだから、その受け取り方は間違いである。

これは、「仮に人工知能とコミュニケーションが取れたとしても、人工知能に意識があるという証拠にはならない」ということを示す思考実験なのだが、このような考え方はもっと広く応用できるはずだ。

例えばアイデアの場合、「アイデアの生み出し方」だけ真似しても、そのやり方でアイデアを生み出している人と同じレベルに達するのは難しいだろう。「やり方」だけ理解して真似するのは、「中国語の部屋」の中にいる被験者のようなものでしかないからだ。

料理を作る場合、「さ・し・す・せ・その順番で調味料を入れる」と覚えるのではなく、「砂糖の分子は大きくて染み込むのに時間が掛かるので、分子が小さい塩などよりも先に入れる」と理解しておく方が応用が利くはずだ。

「やり方」だけではなく、その背景にまで踏み込むことの重要性について、著者はこんな風に書いている。

これまでにない新しい考え(アイデア)を必要としている人は、できるのはわずかであったとしても現状を、大げさに言えば世界を変える必要に迫られている。そのために世界に対する自身のアプローチを変える必要にも直面している。
この場合、必要なのは、ただ<どのようにすべきか>についての手順だけでなく、そのやり方が<どこに位置づけられ、何に向かっているのか>を教える案内図であろう。それゆえに本書は、発想法(アイデアを生む方法)のノウハウだけでなく、その底にある心理プロセスや、方法が生まれてきた歴史あるいは思想的背景にまで踏み込んでいる

これ以降は、ブログ「ルシルナ」でご覧いただけます

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