【軌跡】15年で世界を変えたグーグルの”異常な”創業秘話。収益化無視の無料ビジネスはなぜ成功した?:『グーグル秘録』
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世界を一変させた「グーグル」とはどんな企業なのか?「無邪気さ」と「偶然」によってたどり着いた現在地
スマホやインターネットを使っている人間で、グーグルの恩恵を受けていない人はそういないだろう。「Gmail」「Google Chrome」「Google Map」などは誰もが日常的に使っているだろうし、YouTubeもグーグルが買収したサービスだ。もし今この瞬間に、「グーグルという会社と、グーグルが生み出したすべての技術」が消えるとしたら、社会は大混乱に陥るのではないだろうか。
それぐらい、私たちの生活にグーグルが深く関係している。
そんな「世界を一変させた企業」について、あなたはどのぐらい知っているだろうか? その問いに答えるのが本書である。著者のケン・オーレッタは、
と評されるほど、その分野に精通したジャーナリストだ。本書はグーグルについての本ではあるが、同時に、グーグルが登場したことで破壊されてしまった世界についても描いている。グーグルという一企業を中心に据えた、「世界のメディア産業の激変」を描く作品というわけだ。
ちなみに本書は、日本での単行本の発売が2010年、アメリカで発売されたのはそれ以前である。つまり、最新の情報に触れられている作品ではない。ただ本書は、どちらかと言えば「歴史書」に近いと言っていいだろう。グーグルがどのように創業され、いかにして今のような地点にたどり着くことになったのかが描かれる作品なので、最新の情報が含まれていないことは、本書の欠点にはならない。その点を理解して手に取ってほしいと思う。
創業当初は、売上を見込める予測がまったく存在しなかった
グーグルは、メディア産業のあり方を一変させた。
生まれながらにしてインターネットが存在する世代にとっては、「自分の元に情報が届くこと」が当たり前だろう。しかしそれまでは、新聞なりテレビなり映画なり何でもいいが、「そのコンテンツがある場所にユーザーを連れて行く」必要があった。そんな、伝統メディアにとって常識的だった考え方を、グーグルは創業からたった10数年で打ち破ってしまったのである。
また、グーグルがもたらした新たな価値観として、「ネットは無料であるべき」という考えも挙げられるだろう。
グーグルの革命的だった点は、「すべてが無料」という点だ。一般的なユーザーが、グーグルに対して何か支払いを行うことはないだろう。少なくとも私は、グーグルに対して何か料金を支払ったことはないと思う。そしてそんな、何もかもを無料で打ち出すグーグルが、最終的にとんでもない額の広告収入を得ているのだ。2008年の広告収入は、5大テレビ・ネットワーク(CBS・NBC・ABC・FOX・CW)の合計に拮抗するそうだ。恐らく2022年現在は、2008年時点よりも遥かに増えているだろう。
しかし、創業者2人を始めとして、グーグルがこのように収益を生み出せるようになるなどとは、誰も考えていなかった。そこに、グーグルという企業の凄まじさがあると感じる。
グーグルがCPCという画期的な広告手法を発明し、「アドワーズ」と名付けて稼働させたのが2002年のこと。既に創業から4年が経っていた。つまり、この4年間、グーグルには「収入」が存在しなかったというわけだ。また「アドワーズ」にしても、起死回生の一手として生み出されたなんてことはない。これが収益の柱になるとは誰も考えていなかったというから驚きだ。
そもそも創業者の2人、ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンは、「収益化」にはほとんど関心を示さなかったという。ただ、この表現は正確ではない。正しくは、「『検索の質を高めれば、自ずと収益化の方法が見つかるはず』という信念を疑うことなく持ち続けていた」である。
本書には、「創業者2人が収益化にいかに無関心だったか」を示す凄まじいエピソードが記されている。
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