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イタリア人について

 
10年以上イタリアで、
イタリア人たちと接してきて思ったんだけど
イタリア人は、総じて聡明な人が多いと感じた。
 
表面的なものにあまり左右されないで 
本質を見抜くというか
察しの良さや観察眼の鋭さ、
それに勘の良さみたいなものを
彼らからはよく感じた。
 
そのなかでも特に「人間」ていう生き物に対する理解が深いように思えた。
 
人間のだめな部分も、尊い部分も、
全てわかったうえで受け入れている底の深いやさしさが、 
イタリア人の心にはあるように見える。
 
別に褒めまくるつもりはないんだけど、
地球人としての原型というか、プロトタイプみたいに見えるな、
とも思ったことがある。
 
生命を宿し、産み育む女性、母親を尊重する。
子どもはめちゃくちゃ可愛がる(子ども全般への接し方として)。

自分の仕事を愛して、楽しんで働く。
でも仕事に自分の人生を奪われるのはごめんで、
自分自身のための時間、リラックスできる時間、家族や仲間、
愛する人との生活のほうがもっと大切だと思っている。

美味しいものを美味しく食べたい、楽しく食べたい。
人とのおしゃべりは楽しい。
陽気に笑い合う。
知らない人でも笑顔で気さくに話す。
人が話していることに耳を傾ける。
自分が思ったことを堂々と話す。

「可哀想じゃないか」という気持ちをよく人に向ける傾向があり、
他人であっても味方してあげたりする。

生活の中で人や自然を含め、美しく感じたものを賞賛する気持ちを持っていて、その気持ちの表現としての芸術を産み出す…
 
私が幸運だっただけかもしれないけど、
何人かのイヤなやつらを除いては、
私が接したイタリア人たちは
みんな人間くさくて、魅力的な人たちばかりだった。
 
表面的には、日本の人たちのほうが落ち着いていて
思慮深く思えて
ずっと大人に見えるのだけど、
 
実のところ、それは表面上のことだけで、
物事の本当の意味や、
人間の本質といった
一段下の、より深い部分での理解力では
イタリアの人たちに雲泥の差をつけられているような印象。
 
でもそのかわり日本人は、
人間という、個体の生き物に関しては造詣が深くないかも知れないけど、
その人間たちが寄り集まって作り出す、
世界…というよりも、規模の小さな「社会」
共生する場所としての有機体というのかな、
それに関しては、効率よくスムーズに動かせる扱い方を、
イタリア人より良く知っているように見える。
 
だからこそ日本人は規則とか決まり、ルールに
うるさくこだわったりもするんだろうけど…
 
イタリア人は社会全体の安定に協力するよりも、
自分自身の心の平和や、安定のほうが大切だから、
時に「社会」に対して、非協力的になることもある。
 
その代わりというか、
だからこそ
自分だけじゃなく、他人も含め、
人間の過ちや、弱さに関しては寛大。
 
人には、心や感情や、どうしようもなくなる気持ちの動きがある、
ということを
あたりまえのことだと分かっていて、
人とはそういうものだと受け止めているから。
 
私には、イタリアの人たちの持っている生き生きとした魅力は、
そこから来ているように思えた。
 
人間をまるごと肯定して、受け入れている。
 
だからだと思う、彼らのことを口ではばかにしていても、
彼らに惹きつけられている人は 世界中に多い。
 
 
日本で話す機会のあった人達の中には、
イタリア人を勝手に誤解している人たちが、時々いた。
 
曰く、
イタリア人て なんか頭が悪そうで、
いつも女の人を口説いてばかりいる だとか
仕事をさぼって真面目に働かない とか。
 
でも、聞くと、イタリアに行ったこともなければ、イタリア人と話したこともないという。
 
「違うと思いますけど」と言っても、
こちらの方を否定してきたり
あまりに聞き捨てならない時は
(ワタクシもはやイタリア人は身内のように感じていますので)
彼らの名誉のために、わざと言わずもがなのことを言ってみたりした。
 
フェラーリっていう車、知ってます?
世界で一番速くて、しかも一番美しい車。
今のところそれを超える車って世界中どこにも無いらしいんですけど
 
その自動車のコンセプトから、デザインや設計、
理想の車を実現させるための部品の一つ一つまで含めて、
どこの国の人が作ったと思いますか?
真面目に働かないと作れないものだと思うけど。
あ、ドイツ人じゃないですよ、ちなみに。
とか
 
レオナルド・ダ・ヴィンチって、聞いたことありますか?
万能の天才と言われる人で、何百年経ってもまだ、匹敵するような人が一人も現れない。
つまり今のところ、全世界の歴史の中でたった一人の万能の天才って、
イタリア人なんですよね。
イタリア人て、よく働くし、頭いい人たちですよ。
とか
 
わかりやすくて、誰でも知っている名前を引き合いに出しただけなのに
たぶんその人たちの中では初めて
「イタリア人」を
別の視点で見る機会だったんだと思う。
はっとしたように黙ったもの。
 
実際のところ、イタリア人て偉大な民族だと思う。
あらゆる意味で。
 
そもそも、古代ローマ人というイタリア(半島)人がキリスト教を国教として受け入れなければ、今日こんにちまで続く、キリスト教をベースとしたヨーロッパ文化は生まれていなかった。
(ローマ帝国そのものも、それを築き上げ、維持したシステム、文明ともに凄いけど)
 
以来、ローマ法王と教皇庁の影響力は2000年近く、
今も欧米では強力である一方、
キリスト教の教義のせいで文明の発展が遅れたという指摘についても、
イタリア人はちゃんと責任をとっている。
 
すなわち
ルネサンスというパラダイムシフトを起こし、
それによってキリスト教教義中心の世界観から脱却し、
精神を解放したというか、哲学や物理に対する視点・姿勢を、
近代へと繋がる方向にベクトルを変え、
人々は神学ではなく科学で世界を理解し始めた。
 
ヨーロッパで最初(一説には世界で最初)の大学を作り、
自然のあるがままを観察し、考察し、現実的な結論を導くことで
イタリアの大学で勉強した者たち(コペルニクスやガリレイ)は、
当時、教会権力下の社会としても、時代的な技術力の限界としても、天動説が当たり前の「真実」とされていた環境の中で、
動いているのは地球の方だという「事実」に到達出来たり、
人間の身体を実際に解剖して中身を見、構造を学ぶことが出来た。
 
解剖学は医学を発展させただけでなく、絵画の人物描写に写実性をもたらし、写実性の追求と、数学的、幾何学的知識は、一人のイタリア人建築家(フィリッポ・ブルネッレスキ)に、遠近法を確立させた。

数学と言えば、そういえばヴィンチ出身のレオナルドさんの他に、ピサ出身のレオナルドさん、レオナルド・ダ・ピサという数学者もいた。
彼はフィボナッチという名前で、世界的に有名。
 
学術的なことばかりじゃない。
ピアノフォルテ(ピアノのこと)や、ヴィオリーノ(ヴァイオリン)という楽器を産み出し、
神を讃えるためではなく自分の心情を歌うための音楽、
人間の身体を楽器そのものにする歌唱法ベルカントを産み出し、
音楽好きな私としては、イタリアの人たちを、
音楽を神から人間の手に渡してくれた
「音楽のプロメテウス」のようにも感じてる。
 
オペラもバレエも、世界で最初に誕生し、上演されたのはフィレンツェで、
華やかな衣服ファッション(男性用も女性用も)
宝飾品(今もフィレンツェには世界中から多くの人が宝飾の職人修行にやってくる)、
香水(紀元前から香水はあったそうだけど、現在に続く香水の文化としては、イタリアでは修道院や教会が草木で生薬を研究する中で、リキュール酒も香水も発展していったらしい。ちなみにサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局では今も、メディチ家のお姫様がフランス王家に嫁ぐ時に持って行った香水を入手できます)
など、芸術の分野でも、イタリア人が産み出したものは多い。
 
ついでに、ナイフとフォークで食事をすることも、そのメディチ家のお姫様、カテリーナ・ディ・メディチがフランスに持ち込んだ文化の一つで、だからそれらを「カトラリー」と呼ぶようになった…という説もあると聞く。
 
食事といえば、世界中がもはやFast Food に疑いを持つこともなく、日常的にそれを摂ることを習慣化した現代に於いて、
全く真逆のSlow Foodという概念を世界に提示し、自らそれを実践し、人間が本来摂るべき食事としてそれを促進しているのも、イタリアの人たちだ。
 
暗黒の中世と言われた時代をルネサンスの光で目覚めさせた後、いわゆる大航海時代の幕を開けたのも、スペイン王家をスポンサーとしたイタリア人、クリストフォロ・コロンボ(クリストファー・コロンブス)だし、
合衆国の国名の由来となったアメリゴ・ヴェスプッチもフィレンツェ生まれのイタリア人。
大西洋とは反対側の東の方へも、その何世紀も前にマルコ・ポーロの一行(彼ら以外にもシルクロードを渡ったヴェネツィア商人がいたのではと思うけれど)がヴェネツィアから旅立っている。
 
あと、イタリア人はマンマに甘えたがって意気地がない、男から見てもダメ男で戦力にならないから、次はイタリア抜きでやろうぜ、とドイツ人と日本人で言い合ったりするという話(ホントにそんな人いるのかな?)には、

戦争の天才と言われたナポレオンは、実はナポレオーネ・ブオナパルテというイタリア人なんですけどね、
と言いつつ、ついでに、
ジュリオ・チェーザレ(ジュリアス・シーザー)も戦争が上手だったみたいだよね、と追い打ちをかけておいちゃう。
 
というわけで
 
説得力のある話ならまだしも
(そういう話なら喜んで拝聴します)
私の前で無意味にイタリア人の悪口言うと、
面倒くさいことになるからね?
 
あの人たち、あんなだけど(💦)、
何気に、けっこう、凄い人たちだと思うよ。


お茶目だし。



私がイタリアに住んでた時は、彼らの時代♪ ↓

ショートコントみたいなやつです。
「アレッサ、テストどうだった?」
「ぜんぜんだめ、白紙で出しちゃった」
「僕もだよ。コピー(カンニング)したと思われちゃうね」
って内容。


*追記
大切な内容を書き忘れていました。
疫病が自国内に入ってくるのを防ぐため「検疫」というものを考え出し、
40日間という、安全の判断がつく期間を見極め、
それを世界で最初に始めたのも、ヴェネツィア共和国当時のイタリア人。
やっぱり彼ら、頭良くないですか…?
(しつこくてゴメンナサイ)


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