マガジンのカバー画像

宿災備忘録-発

38
信じる。信じない。教えてくれるものは、いない 生まれながらに災厄を宿した存在、宿災/しゅくさい その運命に生まれたものと、ともに生きるものたちの記録 自らの中に真実を求める、…
運営しているクリエイター

#異世界ファンタジー

宿災備忘録-発:第1章1話

■ あらすじ 山護美影は、山懐の町、湖野(コヤ)の御神体・九十九山に仕える祖母の元で育…

Luno企画
1か月前
4

宿災備忘録-発:第1章2話②

テーブルに伏せられた報告書に、久遠は手を伸ばした。 5歳 山騒祭の初日、九十九山にて行方…

Luno企画
1か月前
2

宿災備忘録-発:第1章3話

ここは一体、どんな場所か。 美影は廊下に出て、周囲に視線を走らせた。 一度姿を消した中…

Luno企画
1か月前
5

宿災備忘録-発:第1章4話

喫茶店。外の景色が見える、窓際の席。テーブルには2つのタンブラーと、冷えたおしぼり。店の…

Luno企画
1か月前
2

宿災備忘録-発:第1章5話

中森の言葉通り、戻った部屋に久遠の姿はなかった。代わって美影を出迎えたのは、見知らぬ少女…

Luno企画
1か月前
2

宿災備忘録-発:第1章6話

赤毛を濡らしたまま、美影は廊下に出た。その気配に反応したのは中森。これ使って、と渡された…

Luno企画
1か月前
1

宿災備忘録-発:第1章7話①

「おお、カモンカモン!」 灯馬とともに訪れた部屋にいたのは、陽気な気配を纏った老人。 3人がけのソファーに座り、木目のテーブルに向かっていた老人は、美影を見るなり、おいでおいで、と大げさなジェスチャーを見せた。   赤いニット帽からはみ出た白髪は、深い皺が刻まれた顔を覆う髭と繋がっている。まるで、やせ細ったサンタクロース。 「遠慮しないで入っておいで。灯馬、西日がキツイな」 「はい」 灯馬がそばを離れ、美影は不安に襲われる。 大きく開かれていたカーテンは閉

宿災備忘録-発:第1章7話②

誰が言い出したわけでもないのに、皆一様に口を閉じる。マーカーがホワイトボードを走る音。そ…

Luno企画
1か月前
1

宿災備忘録-発:第2章1話

宿災の始まりは、ある娘の末裔だと言われています。天の荒ぶりは神の怒りとされていた頃、ある…

Luno企画
1か月前
1

宿災備忘録-発:第2章2話

山護は、九十九山を守る人の呼び名です。 その由来となった民話を紹介しましょう。 *** …

Luno企画
1か月前

宿災備忘録-発:第2章3話

「僕、この匂い結構好き。おばあちゃんの箪笥ってイメージ」 「みんな言うわよね。不思議な匂…

Luno企画
1か月前
1

宿災備忘録-発:第2章5話

湖野の中心地から少し離れた場所。バイパス沿いの食事処。美影は久遠とともに鷹丸が運転する車…

Luno企画
1か月前
2

宿災備忘録-発:第2章6話①

山騒祭(さんそうさい)は、湖野で古くから行われている伝統行事です。毎年8月の盆の期間に行…

Luno企画
1か月前
1

宿災備忘録-発:第2章6話②

境内を離れ、鳥居をくぐり、石段を下りる。満車状態の駐車場。鷹丸はその隅へと歩を進め、準備されていたかのような2人がけのベンチに腰を下ろし、脚を組んだ。 美影は鷹丸から少し離れて歩いていた。外灯もない場所に座る鷹丸の姿が、月明かりのおかげでよく見える。ベンチの手前で足を止め、結露をまとったジュースを握り締めた。 鷹丸は缶ビールを飲み干し、タバコに火をつけた。吐き出された煙は、夜が染み渡った空間に広がる。それはカタチを記憶する間も与えずに消え去り、鼻を刺激する匂いだけが残