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宿災備忘録-発

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信じる。信じない。教えてくれるものは、いない 生まれながらに災厄を宿した存在、宿災/しゅくさい その運命に生まれたものと、ともに生きるものたちの記録 自らの中に真実を求める、…
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宿災備忘録-発:第1章1話

■ あらすじ 山護美影は、山懐の町、湖野(コヤ)の御神体・九十九山に仕える祖母の元で育…

Luno企画
1か月前
4

宿災備忘録-発:第1章3話

ここは一体、どんな場所か。 美影は廊下に出て、周囲に視線を走らせた。 一度姿を消した中…

Luno企画
1か月前
5

宿災備忘録-発:第1章4話

喫茶店。外の景色が見える、窓際の席。テーブルには2つのタンブラーと、冷えたおしぼり。店の…

Luno企画
1か月前
2

宿災備忘録-発:第1章5話

中森の言葉通り、戻った部屋に久遠の姿はなかった。代わって美影を出迎えたのは、見知らぬ少女…

Luno企画
1か月前
2

宿災備忘録-発:第1章6話

赤毛を濡らしたまま、美影は廊下に出た。その気配に反応したのは中森。これ使って、と渡された…

Luno企画
1か月前
1

宿災備忘録-発:第1章7話①

「おお、カモンカモン!」 灯馬とともに訪れた部屋にいたのは、陽気な気配を纏った老人。 …

Luno企画
1か月前
3

宿災備忘録-発:第1章7話②

誰が言い出したわけでもないのに、皆一様に口を閉じる。マーカーがホワイトボードを走る音。そんな小さな音が美影の緊張を煽る。 ペンの走る音が止まり、久遠は体をホワイトボードの横に移した。 其の身に災い封ずる生業の者有り 荒ぶる天地川海に向かうほどに 幾多の災厄宿り 宿りし災厄 身に纏いし結界に封ずるが 人智の及ばざる力なりて あやしき者と疎まれり 人目憚り陰に住まい 災厄と共に生きるほどにあやしき力を以て 蠢く汚れを滅する事覚ゆる 力衰えし地に赴き 蔓延りし汚れを祓い

宿災備忘録-発:第2章1話

宿災の始まりは、ある娘の末裔だと言われています。天の荒ぶりは神の怒りとされていた頃、ある…

Luno企画
1か月前
1

宿災備忘録-発:第2章2話

山護は、九十九山を守る人の呼び名です。 その由来となった民話を紹介しましょう。 *** …

Luno企画
1か月前

宿災備忘録-発:第2章3話

「僕、この匂い結構好き。おばあちゃんの箪笥ってイメージ」 「みんな言うわよね。不思議な匂…

Luno企画
1か月前
1

宿災備忘録-発:第2章4話

太陽が西に傾く前に、美影は家に戻るつもりだった。しかし未だ山中にて、久遠の背中を追ってい…

Luno企画
1か月前
1

宿災備忘録-発:第2章7話

ビレッジツクモは、山岳信仰団体ツクモが運営する簡易宿泊施設。建設費の出資者は石寄。湖野の…

Luno企画
4週間前
1

宿災備忘録-発:第3章5話②

「私、あそこを開けて、あの中に」 言葉の途中で、美影は駆けだした。確かめなければならな…

Luno企画
3週間前
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宿災備忘録-発:第3章5話③

「ひとつ目は、石」 「え?」 「ふたつ目は、祠」 久遠の視線につられ、美影も祠に顔を向ける。 「みっつ目は、九十九山」 ぐるりと周囲を見渡す。 「最後が、湖野」 久遠の視線は美影へ。美影は黙ったまま、言葉の続きを待った。 「石を隠され、石のことを忘れた。石のことを忘れて、祠のことを忘れた。祠のことを忘れたことで、結界がひとつ、閉じた」 「結界が閉じた?」 思わず口にした美影。久遠は僅かに頷き、言葉を繋げた。 「山護美代が亡くなったのは、お前が高